株高不況 株高不況

FRBが引き締める前に引き締まっている

藤代 宏一

要旨
  • 日経平均株価は先行き12ヶ月61,000円程度で推移するだろう

  • USD/JPYは先行き12ヶ月155円程度で推移するだろう

  • 日銀は利上げを続け、政策金利は26年6月に1.0%、27年7月に1.5%超となろう

  • FEDはFF金利を、年内は3.75%で据え置くだろう。

  • 筆者はFedが政策金利を年内据え置くと予想する。これまで9月に利下げがあるとの予想を維持してきたが、最近の消費、物価、雇用指標を見る限り、利下げが実施される可能性が低下したと判断した。トランプ大統領が過去数ヶ月の原油高を受けて「利下げを求めない」としたことも考慮した。むろん、6月FOMCが初陣となる見込みのウォーシュ新議長が示す見解によって変更はあり得るが、これまでのところ同氏は利下げに積極的な姿勢を示していない。

  • ウォーシュ氏は、Fedが事実上の政策目標にしている(コア)PCEデフレーターは関税影響などから歪みが生じているとして、刈込平均値のPCEデフレーターを重視すべきとの見解を4月の公聴会で示した。刈込平均(トリム)値でみた3月のPCEコアデフレーターは前年比+2.4%、6ヶ月前比年率では+2.2%と、通常のコアPCEデフレーターの前年比+3.2%に比べて落ち着いている。この点に言及したことは、利下げの布石を打ったようにも思えるが、原油高を受けてインフレの二次的波及が懸念されるなか、利下げの緊急性は乏しい。

図表
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  • FF金利先物は年初時点で2回の利下げを織り込む水準にあった。その後、イラン情勢の悪化に伴い原油価格が上昇したところに、雇用統計が2ヶ月連続で改善を示したことで、5月上旬までに年内利下げ観測は完全に消失した。米中首脳会談を経てもイラン情勢に進展が確認できず、原油価格が高止まりするなか、足もとでは利上げ観測が急速に高まっており、12月FOMCまでに77%の確率で利上げが織り込まれる事態となっている。

  • もっとも、利上げにはまだ距離があるだろう。原油高由来のインフレ圧力が高まっている一方、賃金上昇率は抑制されており、サービス価格が加速度的に上昇していく蓋然性は現時点で高くない。賃金は転職者を中心に加速の兆候がみられるとはいえ、全体としては落ち着いており、インフレの基調は必ずしも加速している訳ではない。雇用統計で示される平均時給は前年比+3.6%と緩やかに減速し、3ヶ月前比年率では+2.83%、3ヶ月前比年率・3ヶ月平均では+3.13%と下を向いている。また転職活動の活発度合いを示す自発的離職率も低水準にあり、賃金インフレの芽は育っていないと判断される。

図表
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  • 現在の米国経済は、景気の勢いと物価の基調がいずれもまだら模様であり、金融政策はどちらの方向にも傾けにくい。また逆説的ではあるが、現在観測されている長期金利の上昇が資産価格の上昇抑制、住宅市場の減速などを通じて、Fedの利上げを代替する可能性があることも重要であろう。長期金利上昇が数ヶ月続けば、利上げの必要性は低下していく。

図表
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藤代 宏一


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