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2024.11.12
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ブラジル・レアル、中銀のタカ派傾斜も相場の重石となる材料は山積
~ルラ政権の歳出減方針の動向、商品市況の低迷に加え、金融政策を巡る対立の懸念も影響を与える~
西濵 徹
- 要旨
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- ブラジル中銀は今月5~6日の定例会合で政策金利を50bp引き上げて11.25%をする決定を行った。中銀は9月の前回会合でコロナ禍後初の利上げに動いており、2会合連続に加え、利上げ幅を拡大させるなどタカ派姿勢を強めている。足下の景気はインフレ鈍化や利下げを受けて底入れする一方、供給懸念によるインフレ再燃が懸念された。さらに、ルラ政権の財政運営が債務増大を招くことを懸念して年明け以降は通貨レアル安が進んできた。よって、10月のインフレ率は生活必需品の物価上昇などを受けて前年比+4.76%に加速している。ルラ政権はレアル安阻止に向けて歳出減に動く方針を示し、米大統領選の結果も重なり喫緊の課題となるも閣内の意見対立に伴い法案は一進一退の動きをみせる。また、商品市況の低迷もレアル相場の重石となるなか、金融政策を巡る政府と中銀の意見対立も足かせとなる懸念もくすぶる。
ブラジル中銀は、今月5~6日の日程で開催した定例の金融政策委員会(COPOM)において政策金利(Selic)を50bp引き上げて11.25%とする決定を行った。同行は9月に開催した前回のCOPOMにおいてコロナ禍後初の利上げを決定するなどインフレ鈍化を受けた利下げ局面は一巡しており(注1)、2会合連続の利上げ決定に加えてそのペースを拡大させるなど『タカ派』姿勢を強めた格好である。ブラジルのインフレは一昨年半ばに一時18年ぶりの水準に昂進したものの、その後は中銀の金融引き締めに加え、インフレを招いた商品高の動きが一巡したことも重なり頭打ちの動きを強めてきた。また、昨年発足したルラ政権は財政拡張に舵を切るとともに、金融政策を巡ってルラ大統領を中心に中銀に利下げを要求するなど『圧力』を掛ける動きをみせてきた。中銀は当初こそ引き締め姿勢を堅持したものの、インフレが中銀目標の域内に収束するなど落ち着きを取り戻す動きをみせたため、一転して利下げに動くなど景気に配慮する対応をみせてきた。しかし、ルラ政権による財政拡張策が公的債務の増大など財政悪化を招くともに、インフレ圧力を増幅させることを警戒して年明け以降の国際金融市場では通貨レアル相場が調整の動きを強める事態に直面した。よって、中銀は2021年以降の利上げ局面で累計1175bpもの利上げに動く一方、昨年来の利下げ局面では累計325bpの利下げに留めるなど慎重姿勢を維持してきた。なお、足下の景気はインフレ鈍化や中銀の利下げも重なる形で底入れの動きが確認される一方、4月末以降に同国南部で発生した大洪水の影響で農林漁業関連の生産が下振れするなど、供給懸念を理由とするインフレ再燃が懸念されている(注2)。事実、直近10月のインフレ率は食料インフレの動きに加え、住宅用電力料金が大幅に上昇するなど生活必需品を中心とする物価上昇を反映して前年同月比+4.76%と中銀目標(3±1.5%)の上限を上回るなど、インフレ懸念が再燃する動きがみられる。こうしたことも中銀がタカ派姿勢を強める一因になっており、会合後に公表した声明文では物価動向について「リスクは上向きに傾いており、①インフレ期待の乖離がより長期化すること、②正の需給ギャップを反映したサービス物価の予想上の上振れ、③通貨安などインフレを左右する国内外の経済政策の動き、を強調すべき」との認識を示している。その上で、「財政政策を巡る動きが金融政策と金融資産の動向に与える影響を注視しており、財政状況に対する政府の認識は資産価格と期待、とりわけリスクプレミアムや為替を大きく左右している」とした上で、「構造的措置の提示と実現を通じた債務の持続可能性に留意した財政政策がインフレ期待の固定化とリスクプレミアムの低下に寄与し、結果的に金融政策に影響を与える」と政府に慎重な財政運営を促す考えを示している。先行きの政策運営について「金利調節のペースと利上げ局面の水準はインフレ動向次第であり、インフレ目標実現に向けた強い意欲に基づく」と前回会合同様に明確な姿勢を示していないものの、今回利上げ幅を拡大させたことを勘案すればタカ派姿勢を強めていることは間違いないと捉えられる。ルラ政権はレアル安を警戒して歳出削減に向けた取り組みを強化する方針を示し(注3)、米大統領選で共和党候補のトランプ前大統領が勝利して米ドル高が進むとの見方が強まるなかで喫緊の課題となっているものの、閣内における反対意見が根強いなかで紆余曲折が続いている。財政政策への懸念に加え、足下では中国経済を巡る不透明感を受けた商品市況の調整の動きも重なりレアル相場は調整の動きを強めており、当面は厳しい展開が続くことは避けられない。年明けに就任する中銀のガリポロ次期総裁もカンポス=ネト現総裁同様にタカ派姿勢を堅持しており(注4)、金融政策を巡る政府と中銀の対立が再び顕在化していくことも予想され、そのこともレアル相場の不透明要因となることに留意する必要がある。



注1 9月19日付レポート「ブラジル中銀は利下げ局面一周で再び利上げ決定、レアル相場は?」
注2 9月4日付レポート「ブラジルの景気底入れ確認、利上げ観測の一方で政府と中銀の対立は?」
注3 7月8日付レポート「ブラジル・ルラ政権の歳出削減策はレアル相場の流れを変えるか」
注4 10月10日付レポート「ブラジル議会は中銀次期総裁にガリポロ氏を承認、レアル相場は?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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