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2024.09.19
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ブラジル中銀は利下げ局面一周で再び利上げ決定、レアル相場は?
~金融政策を巡る政府と中銀の対立は激化の懸念、レアル相場の不透明要因となる可能性~
西濵 徹
- 要旨
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- ブラジル中銀は18日の定例会合で2年ぶりの利上げを決定した。ここ数年のブラジルではインフレ昂進を受けて中銀は累計1175bpもの利上げに動く一方、その後のインフレ鈍化を受けて昨年からは一転して累計325bpの利下げに動いた。しかし、一段の利下げを求めるルラ大統領と、年明け以降のレアル安により慎重姿勢に転じた中銀の間で金融政策を巡る対立が激化してレアル安圧力が強まった。他方、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+5.92%と底入れする一方、供給懸念による食料インフレが懸念されるなどインフレ再燃に繋がる動きがみられる。こうした状況が中銀の利上げを後押ししたとみられ、先行きの政策運営の明確な方向こそ示さないが、タカ派姿勢を強めている様子がうかがえる。中銀は断続利上げに動く可能性が高い一方、政府との対立がレアル相場を巡る不透明要因となることに留意する必要は高まっている。
ブラジル中銀は、18日に開催した定例の金融政策委員会で政策金利(Selic)を25bp引き上げて10.75%とする決定を行った。同行による利上げ実施は2年ぶりである上、コロナ禍後の利下げ局面が一周するとともに再利上げ局面に転じたことになる。ここ数年のブラジルでは、異常気象に加えて商品高や米ドル高による通貨レアル安、コロナ禍一巡による経済活動の正常化の動きも重なる形でインフレが昂進した。よって、中銀は物価と為替の安定を目的に2021年3月から累計1175bpの利上げを実施したほか、商品高の動きが一巡したことで一時は18年ぶりの水準に昂進したインフレは一昨年半ば以降頭打ちに転じた。昨年にはインフレが中銀目標の域内に回帰するとともに、中南米の周辺国の間ではインフレ鈍化を理由に利下げドミノとも呼べる動きが広がったこともあり、中銀は昨年8月から一転して累計325bpもの利下げに動いた。なお、中銀が一転して積極的な利下げに動いた背景には、物価高と金利高の共存状態が長期化したことを受けて、経済成長のけん引役となってきた家計消費をはじめとする内需が勢いを欠く推移をみせたことも影響している。また、中銀による断続利下げにも拘らず、インフレ鈍化を受けて実質金利(政策金利-インフレ)は大幅プラスで推移するなど投資妙味の高さを追い風にレアル相場は堅調な推移をみせたことも利下げを後押ししたと捉えられる。しかし、昨年発足したルラ政権は拡張財政に舵を切るとともに、そうした動きを反映して頭打ちしたインフレは底打ちに転じたものの、ルラ大統領は景気下支えを目的に中銀に一段の利下げを要求して圧力を強める動きをみせた。結果、底堅い推移をみせてきたレアル相場は年明け以降一転して頭打ちに転じるとともに、足下の国際金融市場においては米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げ実施を織り込んだ米ドル安にも拘らずレアル相場は上値の重い展開が続くなど、輸入インフレの再燃が懸念された。よって、中銀は6月の定例会合で利下げ局面を停止させたほか、7月の定例会合でも政策金利を据え置くとともにインフレ期待の上振れを警戒してスタンスをタカ派傾向にシフトさせた(注1)。上述のようにルラ大統領は中銀に度々利下げを要求する姿勢をみせるなかで金融政策を巡って政府と中銀の対立が先鋭化したため、今年末に任期満了を迎えるカンポス=ネト中銀総裁の処遇が注目された。ルラ政権は先月末にカンポス=ネト総裁の後任として金融政策の担当理事を務めるガリポロ氏を指名する方針を明らかにしており、足下においてガリポロ氏がカンポス=ネト氏同様にタカ派姿勢を強めていることに鑑みれば、次期総裁の下でも政策スタンスは変更なしが見込まれる(注2)。さらに、今月初めに公表された4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+5.92%と需要の堅調さを追い風にした景気底入れが確認される一方、4月末以降の同国南部で発生した大洪水に伴い農林漁業関連の生産が下振れしており、供給懸念による食料インフレの再燃が警戒される状況にある(注3)。こうしたなか、8月のインフレ率は前年比+4.2%と中銀目標(3±1.5%)の域内に回帰する一方、コアインフレ率も同+3.6%と緩やかに底入れするなど緩やかにインフレ圧力が強まる動きがみられる。こうしたことも中銀の利上げ決定を後押ししたとみられるなか、会合後に公表した声明文では今回の決定が全会一致であったことに加え、先行きの政策運営について「金利調節のペースと利上げ局面の水準はインフレ動向次第であり、インフレ目標実現に向けた強い意欲に基づく」として明確な方向性を示していない。しかし、再来年初までのインフレ見通しを上方修正するとともに、政策スタンスを巡って「底堅い景気と労働市場を巡る状況、正の需給ギャップ、インフレ見通しの上方修正、不安定な期待を反映したシナリオはより緊縮的な政策を要する」とするなど、タカ派姿勢を強めている様子がうかがえる。よって、中銀は当面漸進的な利上げに動く可能性は高まる一方、政府との対立は一段と激化することは避けられず、そうした動きがレアル相場を巡る不透明要因となることに留意する必要がある。


注1 8月1日付レポート「ブラジル中銀は2会合連続の金利据え置き、独立性の行方は」
注2 8月29日付レポート「ブラジル・ルラ大統領、次期中銀総裁にガリポロ理事を指名」
注3 9月4日付レポート「ブラジルの景気底入れ確認、利上げ観測の一方で政府と中銀の対立は?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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