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2026.05.27
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ニュージーランド中銀は僅差で金利据え置きも「タカ派」傾斜を確認
ニュージーランド中銀は僅差で金利据え置きも「タカ派」傾斜を確認
西濵 徹
- 要旨
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- ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は5月26〜27日の理事会で、政策金利を3会合連続で2.25%に据え置いた。RBNZは2024年8月から2025年11月にかけて累計325bpの利下げを実施した。しかし、2025年以降はインフレ率が再加速し、直近の1-3月は前年比+3.1%と目標レンジ(1〜3%)の上限を3四半期連続で上回っている。一方、中東情勢の緊迫化による原油高がエネルギー輸入国である同国景気を下押しするリスクも高まっている。
- 今回の据え置き決定は「3(据え置き)対3(25bpの利上げ)」の僅差となり、ブレマン総裁の一票が決め手となった。過去2回の全会一致から一転、理事の間で「タカ派」姿勢が強まっている。RBNZは声明で「2月会合時の想定より早く、かつ大幅な利上げの必要性が高まっている」と明示し、ブレマン総裁も会見で次回以降の利上げを示唆する考えをみせた。
- 食料自給率の高さや商品高による交易条件の改善が同国の国民所得を支えるなか、RBNZのタカ派傾斜を背景に、先行きのNZドルは底堅い展開が予想される。豪ドルとの関係ではRBAがタカ派姿勢を軟化させる可能性があり、対NZドルでの豪ドルの上昇ペースは鈍化すると見込まれる。日本円に対しては、日銀の政策見通しが不透明なこともあり、NZドルがさらに強含みやすい状況が続く可能性がある。
【中東情勢悪化による原油高でインフレ懸念が一段と高まっている】
ニュージーランド準備銀行(RBNZ)は、5月26~27日に開催した定例理事会において、政策金利であるオフィシャル・キャッシュ・レート(OCR)を3会合連続で2.25%に据え置くことを決定した。RBNZは2024年8月に約4年ぶりの利下げに動き、その後も一時休止を挟みつつ、2025年11月まで断続的に累計325bpもの利下げを実施してきた。
RBNZが断続的な利下げに動いた背景には、ここ数年高止まりしてきたインフレ率が2024年後半以降は目標(1~3%)のレンジ内で推移するなど落ち着きを取り戻したことがある。そのうえ、長期にわたる物価高と金利高の共存が内需を下押しするとともに、中国景気の低迷も重なり、2024年半ばにかけてテクニカル・リセッションに陥るなど景気が失速したことも利下げを後押しした。
しかし、2025年以降のインフレ率は加速に転じており、1-3月は前年比+3.1%と3四半期連続でレンジの上限を上回る伸びで推移している(図1)。その一方、コアインフレ率は前年比+2.6%とレンジ内で推移しているものの、前期(同+2.5%)から加速している。非貿易財を中心に財価格がけん引する形でインフレ圧力が強まっている(注1)。

一方、中東情勢の緊迫化を受けた原油高は同国経済に暗い影を落としている。同国は原油や石油製品、天然ガスなどエネルギー資源の貿易収支がGDP比で▲2.1%弱の赤字と試算され、原油高は景気の足を引っ張ることが懸念される。なお、同国は一次エネルギーに占める再生可能エネルギーの比率が45%と高く、20%を占める天然ガスも国内で調達可能なうえ、産油国でもある。しかし、国内の原油消費量の不足分は輸入に依存しているうえ、国内の石油精製能力は機能停止状態にあり、石油製品はほぼ全量をアジアや隣国オーストラリアからの輸入に依存している。政府は、国内における原油備蓄は2ヶ月程度にとどまるものの、海外備蓄を合わせれば3ヶ月分を確保していると説明している。とはいえ、国内の貯蔵能力の低さを勘案すれば、世界的なサプライチェーンの混乱の影響は避けられず、価格上昇の影響も免れない。
【RBNZは「タカ派」姿勢を鮮明に、次回会合での利上げにも言及】
RBNZを巡っては、2025年12月にブレマン総裁が就任している。ブレマン体制発足以降のRBNZは、2月、4月に続いて3会合連続の金利据え置きを決定するなど様子見姿勢を維持している。しかし、会合後に公表した声明文では、今回の採決は「3(据え置き)対3(25bpの利上げ)」と票が割れ、決定権を有するブレマン総裁が据え置き票を投じて決定したことが明らかにされた。過去2回の金利据え置きは全会一致で決定されたものの、今回は政策判断を巡って意見が分かれる結果となっており、理事の間で「タカ派」姿勢が強まっている。
物価見通しについて「7-9月に前年比+4.3%でピークを迎えた後、2027年中頃には2%の目標レンジの中央値に戻る」とともに、「コアインフレ率、賃金上昇率、中長期的なインフレ期待も2%への収束を見通している」との見方を示した。また、世界経済について「状況は依然不確実」としたうえで、「貿易相手国の景気鈍化と物価上昇が予想される」との見方を示している。一方、同国経済について「企業部門や家計部門のマインドが悪化している」としつつ、「経済状況は地域やセクターごとに異なり、商品市況の高止まりが全体として国民所得を下支えしている」との見方を示した。中期的なインフレ見通しについては「不透明」としたうえで、「仮に家計や企業がコストの上昇を予想して価格や賃金に反映されればインフレ期待は高止まりする」一方、「需要の低迷と雇用環境の悪化は中期的なインフレ圧力を和らげる」とした。
先行きの政策運営について「コスト上昇が中期的なインフレの上昇につながらないようにしつつ、不要な景気変動の回避に注力する」とし、「2月会合での想定より早く、かつ大幅な利上げを行う必要性が高まっている」との見方を示した。なお、利上げペースについては「持続的な賃金、物価の動向と景気が中期的なインフレ圧力に与える影響に左右される」とした(図2)。

会合後に記者会見に臨んだブレマン総裁は、政策金利の行方について「すべての理事が金利の方向性について合意する一方、タイミングについて意見の相違があった」と明らかにした。そのうえで「長期的なインフレ期待は安定している」としつつ、「インフレ見通しは不透明であり、様々な経路が想定される」としたうえで、「データ次第だが、今後は利上げ実施が見込まれる」との考えを示した。また、物価動向について「仮に中東情勢が直ちに安定化したとしても、先行きの物価への影響を注視する必要がある」としたうえで、「金利についてはいかなる可能性も完全に排除することはできない」との見方を示した。自身が据え置きに投じた理由について「自身のインフレ見通しに基づいて投票した」としつつ、足元の金利水準について「やや緩和的」との認識を示しており、利上げに動く可能性を示唆している。
【RBNZの「タカ派」傾斜を受け、NZドル相場はどうなるか】
前述したように、足元の原油高はマクロ面で景気の足を引っ張ることが懸念される。一方、同国は人口が530万人程度で食料自給率は100%を大きく上回り、食肉や魚介類、乳製品、果物などを輸出している。中東情勢の緊迫化による化学肥料の供給懸念を理由に、世界的に穀物価格が上昇するなど食料インフレへの懸念が高まっているものの、同国は食料自給率が高く、そうした事態への耐性は高いと判断される。ただし、穀物については、小麦は国内需要をおおむね賄えているものの、生産量は年ごとに変動することに注意が必要とされる。
こうしたことから、商品高による交易条件の改善が国民所得を押し上げるとの見方につながり、金融市場においてはRBNZがタカ派姿勢に傾くとの見方も重なり通貨NZドル相場は底堅く推移してきた(図3)。今回、RBNZはタカ派姿勢を一段と強め、断続的な利上げに動く可能性を示唆した。これを受けて、先行きのNZドル相場はこれまで以上に強含みしやすい地合いが見込まれる。また、オセアニア通貨を巡っては、RBA(オーストラリア準備銀行)がすでに断続的な利上げに動いていることを受けて、豪ドル高・NZドル安が急速に進む展開が続いてきたものの、先行きはRBNZがタカ派姿勢を強める一方、RBAがタカ派姿勢を軟化させる可能性が高まっており、そのペースは鈍化すると見込まれる。日本円については日銀の政策運営に対する見方が定まらないなか、NZドルは日本円に対して一段と強含みやすい展開が続く可能性がある。

注1 4月21日付レポート「インフレ高止まり、RBNZの利上げ観測がNZドルを支えるか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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