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2024.09.17
新興国経済
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南ア・ランドは景気に関係なく強含むも、政局混乱の兆しに要注意
~教育関連法を巡ってANCとDAが対立、政局の行方は政権・ランド相場に影響を与える可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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- 南アフリカでは5月の総選挙で与党ANCが民主化以降初めて半数を下回る議席に留まる惨敗を喫した。しかし、その後の政党協議で白人政党のDAなどが加わる大連立が構築され、ラマポーザ政権は3期目入りを果たした。ANCとDAの間には様々な政策運営で隔たりがあり、政権の行方が懸念される展開が続く。他方、南アでは慢性的な電力不足が続くが、3月下旬以降は計画停電が回避されており、4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+1.78%と緩やかに底入れしている。足下のインフレは鈍化し、ランド相場は米ドル安や金価格の堅調さも追い風に底入れするなか、中銀は早晩利下げに動くとの観測が出ている。他方、足下では教育関連法案を理由にANCとDAの対立が先鋭化するなど政局混乱に繋がる懸念が高まっている。ランド相場は実体経済の動向に関係なく外部環境の改善を追い風に底入れするが、政局の行方はラマポーザ政権に加え、ランド相場にも影響を与えるため、その動向を注視する必要性は高まっている。
南アフリカでは、今年5月に実施された議会下院(国民議会)総選挙において、1994年の民主化から一貫して単独で政権与党の座を維持してきたANC(アフリカ民族会議)が初めて半数を下回る議席に留まるなど惨敗を喫した(注1)。ANCは第1党の座を守ったものの、ラマポーザ政権の維持には他党との連立が必要となるなか、如何なる政党と連立を組むのか注目が集まるとともに、その思惑を巡って国際金融市場では通貨ランド相場が混乱する動きもみられた。しかし、最終的には国際金融市場が期待していた親欧米色の強い最大野党DA(民主同盟)のほか、黒人のズールー族からの支持を集める保守系民族政党IFP(インカタ自由党)、カラード(混血)系の国民からの支持を集める保守政党PA(愛国同盟)が加わる大連立を形成し、ラマポーザ大統領は3期目入りを果たすことに成功した(注2)。その後に発足したラマポーザ政権においては、連立与党に加わった政党に閣僚ポストを配分する必要に迫られたことで閣僚数が増加したほか、政党間でポストを巡る協議が長引くなど紆余曲折が懸念される動きがみられたものの、最終的に財務相や国際関係・協力相(いわゆる外相)といった重要ポストはANCが維持することで決着が図られた。ただし、大連立を構成するANCとDAの間には経済政策や外交政策などで隔たりがあるなど、同床異夢感が極めて強いなかでどのような政策運営がなされるかが注目される(注3)。ここ数年の南アフリカでは慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなる展開が続いているが、今年については3月下旬から半年近く計画停電を実施しておらず、国営電力公社(ESKOM)も先月に向こう半年程度は計画停電を回避できる可能性に言及するなど最悪期を過ぎつつある様子がうかがえる。こうした状況を反映して4-6月の実質GDP成長率は前期比年率+1.78%と前期(同+0.12%)から伸びが加速するなど足下の景気は底打ちするとともに、計画停電が回避されていることを受けてサービス業や製造業などで生産拡大の動きが確認されている。ただし、電力問題は最悪期を過ぎつつあるものの、港湾や貨物鉄道といったインフラの停滞が経済活動の足かせとなる状況は続いている。さらに、外需を巡っては主要な輸出相手である欧州諸国の景気減速懸念の高まりに加え、近年経済的な結び付きを強める中国経済も勢いを欠く展開が続くなど不透明要因が山積している。こうした状況ながら、ここ数年の商品高や国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ランド安による輸入インフレに加え、電力不足やインフラの機能不全に起因する物価上昇も重なりインフレは昂進してきたが、昨年以降は中銀目標の域内で推移する展開が続いており、足下では前年に加速に転じた反動で下振れの動きを強めるなど落ち着きを取り戻している。さらに、このところのランド相場を巡っては米FRB(連邦準備制度理事会)による利下げを織り込んだ米ドル安の動きに加え、国際的な金価格が高値で推移していることも追い風に底入れの動きを強めており、輸入インフレ圧力の後退に繋がることが期待される。よって、金融市場においては中銀が早晩景気下支えに向けた利下げに動くとの観測が強まる一方、実体経済を巡っては電力不足問題がくすぶるほか、インフラ停滞も影響する形で力強さを欠く展開が続いているにも拘らず、上述したようにランド相場は外部環境に影響される形で強含みするなど景気と関係なく動いていると捉えられる。こうしたなか、13日にラマポーザ大統領が教育関連法案への署名を強行したことをきっかけに、政局に動揺が広がる懸念が高まっている。



南アフリカには10以上の公用語があるなか、大半の学校は英語を使用しているものの、現状においては各学校が自主的に使用する言語を決める制度となっている。こうしたなか、一部の学校ではいわゆる『白人の言語』とされるアフリカーンス語が採用されており、ANC内では一部の学校で言語を理由に黒人が排除されているとして行政が介入すべきと主張してきた。他方、DAは母語によって教育を受ける権利や学校の自主性を尊重すべきと主張するなど、この問題はANCとDAの間での政策を巡る対立の一端となってきた。こうしたなか、ANC主導により学校教育で使用する言語を行政権限によって定めるとした同法案を議会に上程し、ラマポーザ大統領が法案成立に向けて署名を強行したことで、DAのスティーンへイゼン党首(農相)は法廷闘争も辞さない考えを示すなど対立が先鋭化する事態に発展している。ラマポーザ大統領は同法の施行について3ヶ月の猶予期間を設けるとともに、その期間内にANCとDAの協議をまとめるよう要請しているが、DA内ではラマポーザ大統領のこうした姿勢に反発を強める動きもみられるなど、協議の行方は不透明な状況にある。仮に協議が物別れに終わるとともに、DAが政権与党から離脱する事態に発展すればラマポーザ政権を取り巻く状況は一変するとともに、ランド相場に対する見方も大きく変化する可能性に留意する必要がある。
注1 5月31日付レポート「南ア総選挙、与党ANCが初の半数割れへ、ランド相場は混乱必至か」
注2 6月17日付レポート「南ア・ラマポーザ政権が3期目へ、ランド相場は落ち着きを取り戻したが」
注3 7月2日付レポート「ラマポーザ政権が閣僚名簿発表、「同床異夢」で南アランドはどうなる?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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