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南ア・ラマポーザ政権が3期目へ、ランド相場は落ち着きを取り戻したが

~市場が期待する白人系政党DAが連立入りも、内政・外交両面で今後も混乱の可能性はくすぶる~

西濵 徹

要旨
  • 南アフリカでは14日、先月の総選挙後初となる議会下院の本会議が召集され、与党ANCのラマポーザ大統領が再選出されて政権3期目入りすることとなった。総選挙でANCは民主化後初めて獲得議席数が単独で半数を下回り、政権樹立には他党との連立が不可欠となった。金融市場では市場重視で親欧米の白人政党DAとの連立を期待する向きの一方、急進派政党との連立も懸念されるなど不透明な動きがみられた。最終的にはDAと民族系保守政党など計4党の与党連立で合意し、ラマポーザ政権は3期目入りを果たすこととなった。短期的には金融市場にとり望ましい動きとなる一方、4党の間には内政・外交の両面で大きな隔たりがあるなか、足下では底入れに転じたランド相場を巡っては波乱含みの展開が続くであろう。

南アフリカでは14日、先月29日に実施された議会下院(国民議会)総選挙後初となる本会議が招集され、与党ANC(アフリカ民族会議)のラマポーザ大統領が再選出されて同政権3期目入りすることが決定した。総選挙においては、与党ANCの獲得議席数が1994年の民主化以降で初となる単独で半数を下回ることとなり、政権を維持するためには他党との連立を組むことが必要となった(注1)。この結果を受けて、直後の国際金融市場においてはANCがいずれの党と連立を組むかを巡って様々な思惑が交錯するとともに、通貨ランド相場が大幅に調整するなど混乱する動きがみられた。なお、金融市場においてはヨハネスブルク=プレトリアに次ぐ経済規模を有するケープタウンを擁する西ケープ州で与党を担い、経済政策面で実績を上げる市場重視姿勢が強いほか、親欧米色の強い最大野党のDA(民主同盟)との連立を期待する向きが強まった。ただし、国民の8割を黒人が占めるとともに、ANCは故マンデラ元大統領が率いてアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃を主導した歴史を有するなか、DAは白人が率いる政党であることでANC支持者のなかには白人が率いる政党への反発が根強いとされる。よって、仮にANCがDAと連立を組むことになれば、そのことがANC支持者の間で離反を生む懸念を孕むなどハードルが高いとみられた。一方、DAに次ぐ規模を有するANCの前議長で前大統領のズマ氏が率いる新党のMK(民族の槍)や、2019年の前回総選挙で躍進を果たした左派政党のEFF(経済的解放の闘士)はともに急進的な政策を掲げるとともに、反欧米色を掲げている。よって、仮にこれらの政党と連立を組めば同国経済が長期に亘って低迷するなか、政治的にも不安要因を抱えることとなるなど、外資系企業や海外投資家からの信認を失うことが懸念された。こうしたなか、議会召集前にANCは様々な党と積極的に連立協議を行い、黒人のズールー族が主体の保守系民族政党のIFP(インカタ自由党)、カラード(混血)系国民の支持を集める保守政党のPA(愛国同盟)に加え、DAも与党連立に加わる4党連合の結成で合意した。4党連合となった背景には、上述のようにANC内や支持者のなかには依然としてDAとの連立に消極的な見方が根強いなか、IFPやPAが連立入りすることにより政権内における白人色が薄まることで懸念の緩和を狙ったとみられる。4党連立の下で召集された本会議で実施された大統領選挙ではラマポーザ氏が283議席を獲得して4党併せた議席数(272議席)を9票上回るなど、連立与党には加わっていない少数政党からも一定の票を得たことが明らかになっている。一方、EFFのマレマ党首は44票獲得しており、同党の獲得議席数(39議席)を5票上回るなど、同様に少数政党から一定の票を得ているとみられる。なお、同時に選出された議長にはANCのディディサ氏(元ANC副議長)、副議長にはDAのロトリエ氏(DA連邦評議会副議長)が就任しており、連立の枠組に配慮された格好である。今後は19日の就任式でラマポーザ大統領が正式に就任するとともに、政権3期目の閣僚人事を決定するものの、現地報道などによれば少なくとも5人の閣僚がDAから選出されるとともに、IFPやPAからも閣僚が選出される見通しである。上述したように金融市場においてはDAが連立与党に加わることを好感する向きがみられたなか、一連の動きは金融市場が想定したなかで良い方向に進んでいると判断されると見込まれるなか、一旦は大きく調整したランド相場が底入れに転じる動きをみせている。短期的にみればランド相場に一段と追い風が吹く可能性はあるものの、政策協調を巡っては各党の間に依然として大きな隔たりがみられる分野があり、例えばラマポーザ政権がパレスチナ問題を理由にICJ(国際司法裁判所)に対してイスラエルを提訴したことをDAは反対しているほか、今後に改めて採決される今年度(2024-25年度)本予算についても政党間で対立が予想されるなど内政や外交を巡る対立点は山積しているのが実情である。その意味では、足下の国際金融市場が抱く楽観姿勢が一変する可能性を孕んでいることに留意する必要があろう。

図 1 議会下院(国民議会)における党派別議席数
図 1 議会下院(国民議会)における党派別議席数

図 2 ランド相場(対ドル)の推移
図 2 ランド相場(対ドル)の推移

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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