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2024.07.02
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ラマポーザ政権が閣僚名簿発表、「同床異夢」で南アランドはどうなる?
~市場はDAが加わる政権樹立を好感も、経済・外交での対立が混乱要因となる可能性は要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- 南アフリカでは今年5月の総選挙で民主化以降一貫して単独で政権与党の座を維持してきたANCの獲得議席数が半数を下回り、他党との連立協議を余儀なくされた。最大野党DAなどと連立で合意してラマポーザ政権は3期目入りし、その後も連立入りの動きが相次ぎ最終的に11党による与党連立が形成された。その後は閣僚協議が難航したものの、先月末に閣僚名簿が公表されてラマポーザ政権は船出を迎えた。ただし、連立を組む党数が増えたために閣僚数が増える一方、政党間で意見の隔たりがある経済・外交政策を担う閣僚はANCが堅持した。金融市場ではDAが加わる形での政権樹立を受けてランド相場は底打ちするが、政策の隔たりが大きいなかで対立が露見して調整圧力が強まる可能性には要注意である。
南アフリカでは、今年5月末に実施された議会下院(国民議会)総選挙において、1994年の民主化から一貫して単独での政権与党の座を死守してきたANC(アフリカ民族会議)の獲得議席数が初めて半数を下回るなど惨敗を喫した(注1)。ANCは第1党の座を守るもラマポーザ政権の維持には他党との連立が必要となったため、如何なる政党と連立を組むかに注目が集まるとともに、その思惑を巡って同国の通貨ランド相場が混乱する動きがみられた。しかし、最終的には国際金融市場が最も期待した親欧米色が強い最大野党のDA(民主同盟)のほか、黒人のズールー族が主体の保守系民族政党のIFP(インカタ自由党)、カラード(混血)系国民の支持を集める保守政党のPA(愛国同盟)が加わる形で連立を組むことで合意するとともに、ラマポーザ政権は無事に3期目入りした(注2)。その後は連立与党に新たな政党が加わることで合意して計11政党による連立政権が構築される一方、閣僚人事を巡っては各党の思惑が交錯するとともに、とりわけANCとDAの間で意見の相違が表面化するなど不透明感が高まる動きがみられた。各党間の協議を経てラマポーザ大統領は先月30日に閣僚名簿を公表し、事前の現地報道などではDAから5名の閣僚が選出されるとみられていたものの、DAからはスティーンへイゼン党首(農相)をはじめ計6人、IFPからはフラビサ党首(協調統治・伝統業務相)など計2人、PAからはマッケンジー党首(スポーツ・娯楽・芸術・文化相)、社会民主主義・環境政党のGOODからはド・リール党首(観光相)、右派政党の自由戦線プラス(FF+)からはグローネヴァルト党首(矯正サービス相)、左派民族主義政党のPAC(汎アフリカ会議アザニア派)からはニホンツォ党首(土地改革・地方開発相)が加わることとなった。なお、ANC単独によるラマポーザ政権発足に際しては、ズマ前政権で膨張した閣僚数(36)を28に削減するなど公的部門のスリム化が図られたものの、今回は他党との連立を受けてポストが必要になっていることを受けて閣僚数は32に増やされた格好である。他方、ANCとDAの間には経済政策や外交政策などを巡って隔たりがあるなか、両党の間でこれらを司る財務相や国際関係・協力相(いわゆる外相)ポストが如何なる形で配分されるかに注目が集まった。最終的には両ポストともにANCが堅持するとともに、財務相にはゴドングワナ氏が留任する一方、国際関係・協力相には前法務・矯正サービス相のラモラ氏が横滑りで就任するなど、政権の骨格維持に向けて安定を重視する姿勢が図られたと捉えられる。ラマポーザ大統領は閣僚名簿の発表に際して、テレビ演説で今回の閣僚名簿について「わが国の多様性を反映している」とした上で、「連携と協力の精神の下で新政権はともに手を携えて職務に当たる」、「各党は党利党略を超えて国民のために協力すべき」と述べるなど政党間の協調関係の維持に腐心した様子がうかがえる。上述のように連立与党入りした各党の間には経済政策や外交政策などを巡って意見の相違が少なくないなか、今後も具体的な政策運営に当たっては今回の組閣協議と同様に各政党間での意見調整に手間取る可能性は十分に考えられる。また、ここ数年の同国では慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなる展開が続いているが、これまで担当してきた鉱物資源相(元鉱物資源・エネルギー相)にはマンタシェ氏(ANC)が留任する一方、エネルギー部門については昨年の内閣改造に際して新設した電力担当相(注3)を電力・エネルギー相に改編した上でラモコパ氏(ANC)を留任させており、この点でもラマポーザ政権は安定を重視しているものと捉えられる。ここ数年のランド相場は慢性的な電力不足による景気低迷が続くなか、政治的な混乱を警戒して調整する動きをみせてきたものの、足下では底打ちに転じるなど金融市場が期待したDAが加わる形でのラマポーザ政権が維持されていることを好感している様子がうかがえる。しかし、上述したように先行きも与党連立内では経済政策や外交政策などで隔たりが大きいなかで政策運営が混乱する可能性がくすぶることを勘案すれば、そうした動きが顕在化する度に調整圧力に直面する可能性には引き続き注意する必要があろう。

注1 5月31日付レポート「南ア総選挙、与党ANCが初の半数割れへ、ランド相場は混乱必至か」
注2 6月17日付レポート「南ア・ラマポーザ政権が3期目へ、ランド相場は落ち着きを取り戻したが」
注3 2023年3月7日付レポート「南ア・ラマポーザ政権、内閣改造で電力担当相新設により事態打開は進むか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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