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アルゼンチン中銀、ペソ防衛で緊急大幅利上げ、政策金利は91%に

~ペソ相場防衛が目的も政局混乱懸念が上値を抑える上、デフォルト状態に陥るリスクはくすぶる~

西濵 徹

要旨
  • アルゼンチンでは今年10月に大統領選と総選挙が予定されるなど政治の季節は佳境を迎えている。ただし、実体経済は物価高と金利高の共存で厳しい状況が続いており、中銀はインフレ率が100%を突破したことを受けて再利上げを余儀なくされた。先月にも追加利上げに動く一方、フェルナンデス大統領が次期大統領選への不出馬の意向を表明し、政局混乱が懸念されてペソ相場が闇レートを中心に調整の動きを強めたため、中銀は先月27日に緊急で政策金利を10%引き上げて91.0%とする決定を行った。緊急大幅利上げはペソ防衛が目的と思われるが、政局の混乱が予想されるなかで一段の調整は避けられない。さらに、大統領選に向けた歳出拡大圧力も予想され、結果的に再びデフォルト状態に陥ることも懸念される。

アルゼンチンでは、今年10月の次期大統領選挙と国民議会上下院総選挙の実施まで残すところ半年を切るなど『政治の季節』は佳境を迎えている。こうした状況ながら、足下の同国経済は歴史的大干ばつと商品高に加え、昨年来の国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ペソ安による輸入インフレも重なりインフレ率は大きく昂進している。さらに、中銀は物価と為替の安定を目的に断続的、且つ大幅な利上げを余儀なくされた結果、物価高と金利高が共存する状況が続いている上、IMF(国際通貨基金)からの支援受け入れに向けて緊縮的な財政運営を堅持せざるを得ないなか、経済を取り巻く状況は厳しい展開が続いている。なお、中銀は昨年末にかけてインフレに頭打ちの兆候が出たことを受けて利上げ局面を休止する動きをみせたものの、年明け以降は再び加速の度合いを強めるとともに、インフレ率が100%を上回る事態となったことを受けて3月の定例会合で利上げを再開する事態に追い込まれた(注1)。さらに、その後も国際金融市場においてはペソ安基調が続くとともに、インフレ率も一段と上振れしたことから、中銀は先月の定例会合において2会合連続の利上げ実施を決定するなど一段の金融引き締めを迫られている(注2)。このように経済面では苦境が続く展開をみせるなか、先月21日にフェルナンデス大統領が次期大統領選に出馬しない意向を表明した(注3)。政権を支える与党である正義党(ペロン党)内においてはフェルナンデス副大統領(元大統領)の影響力が極めて高く、閣僚の選定に際してもフェルナンデス副大統領の承認が必要とされてきたこともあり同氏の去就に注目が集まっている。なお、フェルナンデス副大統領自身は昨年末に大統領在任中の汚職疑惑により有罪判決を受けるも、その後も副大統領に留まるとともに職務を継続している一方(注4)、次期大統領選には出馬しない意向を示している。しかし、上述のように与党内においてはフェルナンデス副大統領が依然として強い影響力を有するなか、党内における次期大統領選の候補者選定を巡っては様々な形で影響力を行使するなど『圧力』を強めることも予想される。直近の世論調査においては、フェルナンデス大統領への支持率は低下の一途を辿る一方、フェルナンデス副大統領の大統領への返り咲きを求める『待望論』の根強さを示唆する動きもみられ、その存在感が一段と強まることは避けられそうにない。他方、政局を巡る不透明感の高まりを嫌気して通貨ペソ相場が闇レートを中心に一段と調整の動きを強める事態となったことを受けて、中銀は先月27日に突如政策金利を1000bp引き上げて91.00%とする緊急利上げの実施を決定している。中銀は声明文において、今回の利上げ実施の目的について「ペソ建の貯蓄を促進すべく、実質的なリターン向上を図るため」としており、その適用対象は3000万ペソを上限とする定期預金としているものの、実質的にはペソ相場の急落を受けた防衛の観点が強いと考えられる。しかし、金利引き上げによる金利負担増大に加え、高インフレの常態化も重なり実体経済を取り巻く状況は極めて厳しい展開が続くと見込まれる上、次期大統領選に向けて歳出拡大圧力が強まることも予想されるなか、先行きのペソ相場は一段と調整の動きを強める可能性に注意が必要であり、結果的に再びデフォルト(債務不履行)状態に陥る事態も考えられる。

図表1
図表1

図表2
図表2

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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