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2026.06.26
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メキシコ中銀、利下げサイクル終了で当面は金利据え置きを示唆
~ペソ相場は米ドル高、USMCAを巡る動きが重しとなる可能性に引き続き注意~
西濵 徹
- 要旨
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- メキシコ中銀は、6月25日の定例理事会で政策金利を6.50%に据え置くことを決定した。同行は2024年3月以降、累計475bpの利下げを進めてきたが、5月の前回会合で利下げサイクル終了を示唆しており、今回の据え置きはその方針に沿うものとなった。
- インフレ率は最低賃金引き上げやエネルギー価格上昇から一時加速したものの、燃料補助金や食料価格の下落を背景に5月には前年比+3.94%と目標レンジ(3±1%)へ戻った。一方、エルニーニョや肥料価格上昇による食料インフレ再燃のリスクは残っている。
- メキシコ経済は原油や天然ガスへの依存度が高く、原油高が景気の重しとなる懸念があったが、米国とイランの停戦合意を受けた原油価格の落ち着きにより、そのリスクはやや後退している。中銀は、景気には下振れリスクが残るものの持ち直しを見込んでおり、現行の金融政策を維持することが適切との姿勢を示した。当面は政策金利を据え置く可能性が高い。
- 外部環境では、FRBの利上げ観測によるドル高圧力や、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の見直しを巡る不透明感がメキシコ経済のリスク要因となっている。短期的な急変は想定されないものの、中長期的には投資流入の鈍化やペソ安圧力が続く可能性がある。
メキシコ銀行(中銀)は、6月25日に開催した定例理事会で、政策金利を6.50%に据え置くことを決定した。同行は、2024年3月にコロナ禍一巡後初の利下げに踏み切り、その後も一時休止を挟みつつ断続的な利下げを実施してきた。2026年5月まで2年以上にわたって累計475bpの利下げを実施し、政策金利も2022年5月以来の低水準となるなど、金融緩和を段階的に進めてきた。一方、5月の定例会合では、短期的なインフレ上振れ懸念が高まっていることを受けて、利下げサイクルの終了を示唆した(注1)。今回の決定はそうした見方に沿ったものと捉えられる。
同国は2025年の産油量が日量172万バレルと世界13位の産油国ではあるものの、油田の老朽化や生産設備の不備を理由に、産油量はピークから半減している。さらに、国内の石油精製施設も不足しており、近年は原油を輸出する一方でガソリンや軽油など石油製品を輸入している。一次エネルギーに占める原油比率は45%、天然ガス比率は41%と化石燃料への依存が極めて高く、原油や石油製品、天然ガスの収支はGDP比▲0.5%の赤字と試算される。このため、中東情勢の緊迫化以降の原油高はマクロ面で景気の重しとなることが懸念された。しかし、足元では米国とイランの停戦合意を受けて原油高は一服しており、原油高による下押し圧力の緩和が期待される。
同国政府は1月から最低賃金を13%と大幅に引き上げたほか、原油高によるエネルギー価格の上昇がインフレを招くことが懸念された。インフレ率は2025年末を境に再加速し、2月以降は中銀が定める目標(3±1%)のレンジを上回る伸びとなるなどインフレ懸念が高まった。しかし、夏季の燃料補助金実施によるエネルギー価格の上昇一服に加え、生鮮品をはじめとする食料品価格も下落するなど、生活必需品を中心にインフレ圧力が後退しており、5月のインフレ率は前年同月比+3.94%と4ヵ月ぶりに目標レンジに回帰している(図1)。6月前半も生鮮食料品の価格下落を受けてインフレ率の鈍化が確認されており、短期的にインフレが一段と加速する懸念は後退している。一方、足元ではエルニーニョ現象の発生が確認されており、夏場にかけて雨量減少による農作物の生育不良が生じる可能性がある。化学肥料の価格上昇も重なり、先行きは供給減に伴う食料インフレが懸念される。

会合後に公表した声明文では、5人の理事が全会一致で据え置きを決定したことを明らかにしており、3月会合と5月会合では票が割れて僅差で利下げ実施を決定した状況は変化している。世界経済について「中東情勢を巡る不確実性は残るが、足元では協議が進展しており解決に向けた動きを示唆している」との見方を示した。一方、同国経済について「2026年初めに経済活動が弱含んだものの、その後は持ち直しが見込まれる」としつつ、「需給ギャップはマイナスで推移し、経済活動への下振れリスクは残る」との見通しを示した。先行きの政策運営について「今後は現行水準を維持することが適切と判断している」、「現行のスタンスはマクロ経済環境の課題に対応するうえで十分」との見方を示しており、当面は現行水準での据え置きを継続する姿勢を示した。足元のインフレ鈍化を反映して、インフレ見通しは5月会合時点から若干下方修正した(図2)。

金融市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ実施が意識される形で米ドル高圧力が強まる動きがみられる。メキシコが加わるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)を巡っては、7月1日までに現行協定を2042年まで延長・更新に同意するか、同意しない場合は最長10年間協議を継続することができる。しかし、トランプ米大統領はUSMCAについて、メキシコ、カナダ両国に対する貿易赤字を理由に、延長を見送る可能性を示唆している。一方で、7月には米国との第3回協議の開催が予定されており、米国とメキシコの協議は進展している様子がうかがえる。したがって、短期的にメキシコ経済を取り巻く環境が激変する事態は想定されないものの、中長期的に投資の流入が先細りするリスクは残る。こうした事情を反映して、メキシコ・ペソの対ドル相場は調整しており、日本円に対しても上値が抑えられている(図3)。先行きも米ドル高が意識されやすい展開が見込まれるとともに、トランプ米大統領の政策運営にも左右される展開が続くと見込まれる。

注1 5月8日付レポート「メキシコ中銀、利下げ局面の終了を宣言、ペソ相場はどうなる?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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