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2023.04.21
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アルゼンチン中銀、インフレ収まらず追加利上げで政策金利は81%
~「政治の季節」を前に経済も視界不良、経済・政治の両面で一波乱の可能性に要注意~
西濵 徹
- 要旨
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- アルゼンチンでは、左派フェルナンデス政権の下で経済危機やコロナ禍で疲弊した経済の立て直しが進められているが、昨年末にかけては景気回復の動きに一服感が出ている。他方、中銀は昨年末以降に物価・為替の安定に向けた利上げ局面の休止に舵を切るも、インフレに歯止めが掛からず先月再利上げを余儀なくされた。さらに、足下ではインフレ圧力が一段と強まったため、中銀は20日の定例会合で2会合連続の利上げを決定して政策金利は81.0%となる。同国では今年10月に大統領選と総選挙が予定されるが、経済動向は選挙の行方にも影響を与える可能性も予想され、経済・政治両面で一波乱に要注意と言える。
アルゼンチン経済を巡っては、2018年の通貨ペソの暴落をきっかけとする経済危機に、2020年以降のコロナ禍も重なり、幅広く実体経済が下振れする事態に見舞われた。他方、2019年の大統領選を経て誕生した左派フェルナンデス政権は、経済危機対応を目的にマクリ前政権が受け入れを決定したIMF(国際通貨基金)からの支援に対する債務再編を前進させるなど、経済危機を経て失墜した国際金融市場からの信認回復に取り組んできた。さらに、コロナ禍対応を巡っても、感染一服を受けた経済活動の正常化に加え、欧米など主要国を中心とする世界経済の回復も追い風に景気は底入れの動きを強めてきた。なお、フェルナンデス政権は緊縮的な財政、及び金融政策を堅持するとともに、昨年にはパリクラブ(主要債権国会議)と債務再編で合意したほか、IMFによる拡大信用供与措置(EEF)に基づく資金受け入れも進むなど、経済の立て直しに向けた動きは着実に前進している。しかし、異常気象の頻発や商品高を受けた生活必需品を中心とするインフレに加え、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ペソ安による輸入インフレ、経済活動の正常化を受けたペントアップ・ディマンドの一巡も重なり、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率▲6.0%と6四半期ぶりのマイナス成長に転じるなど景気底入れの動きに一服感が出ている。なお、ロシアによるウクライナ侵攻を機に欧米などが対ロ制裁を強化するなか、同国はロシア国民がビザなしで渡航可能な上、同国で出生した子供は一定の時間を経て市民権が得られるため、ロシア人の妊婦が多数同国に渡航しており、こうした動きを反映して足下のサービス輸出は大きく上振れしている。このような動きにも拘らず、上述のように足下の景気は底入れの動きに一服感が出ており、実体経済を巡る状況は極めて深刻と捉えることが出来る。昨年末以降の国際金融市場では米ドル高の動きに一服感が出ているものの、同国通貨ペソ相場はその後も調整するなど資金流出の動きに歯止めが掛からない状況が続いており、実勢レートは公定レートを大きく下回る水準で推移するなど信認回復には依然ほど遠い状況にある。昨年来のインフレ率は大きく上振れしてきたため、中銀は昨年1月以降、物価・為替の安定を目的に断続的、且つ大幅利上げに動く一方、昨年10月にはインフレ収束の期待が高まったことを理由に利上げ局面の休止に動いたものの、先月にはインフレに歯止めが掛からない事態となっていることを受けて再利上げに舵を切る決定を行っている(注1)。ただし、3月のインフレ率は前年比+104.3%と一段と加速している上、前月比も+7.7%と過去20年で最も高い伸びとなるなどインフレ圧力が強まっていることを受けて、中銀は20日の定例会合において政策金利を2会合連続で300bp引き上げて81.0%とするなど一段の金融引き締めを迫られている。同国では今年10月に次期大統領選、及び国民議会上下院総選挙が予定されるなど『政治の季節』が近付く一方、フェルナンデス政権を支える与党・正義党(ペロン党)内では中道左派で穏健な政策運営を目指すフェルナンデス大統領が再選を目指す一方、急進左派でIMFなどとの対立も厭わない(クリスティーナ)フェルナンデス(デ・キルチネル)副大統領(元大統領)との対立がその行方に影響を与える可能性はくすぶる。フェルナンデス副大統領は昨年末に大統領在任中の汚職疑惑で有罪判決を受けたものの(注2)、その後も副大統領職に留まるなど職務を継続しており、次期大統領選や総選挙に向けた『かく乱要因』となる展開も予想される。当面の同国を巡っては、経済・政治両面で一波乱ある可能性に留意する必要があると考えられる。



注1 3月17日付レポート「アルゼンチン中銀、インフレ率100%突破で利上げ局面再開へ」
注2 2022年12月12日付レポート「アルゼンチン・フェルナンデス副大統領に有罪判決、政治が経済の足を引っ張る展開は続くか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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