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2026.07.02
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南アフリカで反不法移民デモ拡大、その背景と今後の影響は
~統一地方選を前にした政治運動が影響を増幅、金融市場への影響はどうなる~
西濵 徹
- 要旨
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- 南アフリカでは6月30日、反移民を掲げるデモが全土で実施された。一部で警察の介入や900人超の逮捕につながった。反移民団体は今後も毎週デモを続ける方針を示しており、外国人の退避や住居・店舗の破壊が相次ぐなか、国際的な批判も高まっている。
- 同国では過去にも外国人を標的とする暴力事件が発生しており、その背景には高失業率や格差への不満が外国人嫌悪と結びついていることがある。今回は、反移民団体「マーチ・アンド・マーチ」が主導し、SNSを通じて動員された政治運動の性格が強い点が特徴である。
- さらに、11月の統一地方選挙を控え、反移民を掲げる政党がこうした動きを政治的に利用している可能性がある。SNS上では、移民を犯罪や失業と結びつける言説が拡散されており、30%超の高失業率や若年層の深刻な雇用不安が反移民感情を強める土壌となっている。
- 南ア経済は、食料インフレ、中国経済の減速、米国の関税政策、中東情勢に伴う原油高など複合的な逆風に直面している。1-3月期の成長率は前期比年率+2.20%に加速したものの、内需の弱さによる輸入減が押し上げ要因となっており、景気実感との乖離は大きい。インフレ加速を受けた中銀の利上げも、先行きの景気をさらに圧迫する可能性がある。
- 金融市場では、金価格上昇を背景にランド相場や株価が堅調に推移してきたが、中東情勢や米利上げ観測に伴う米ドル高により環境は変化している。今後、反移民を掲げるポピュリズム政党が統一地方選挙で勢力を伸ばせば、南アフリカに対する金融市場の見方が変化する可能性があり、今回のデモが政治的影響を強めるかが注目される。
【南アで全土規模の「反移民」デモが発生】
南アフリカでは6月30日、「反移民」を主張するデモ(ナショナル・シャットダウン)が全土で実施された。警察は、全土で計120件実施されたデモ行進のうち108件は平和的に行われた一方、12件で警察の介入が必要になったと明らかにした。具体的には、移民関連法の違反や暴力、不法滞在者の隠匿、強盗などの発生を理由に、900人超を逮捕したことを発表した。なお、デモを主催した反移民団体は、デモの実施前に不法移民に国外退去を求めたため、すでに数千人のアフリカ系外国人が国外に退避したとされる。一方で、ここ数ヵ月にわたり数千人の外国人が住居を追われたほか、店舗や資産が破壊される事態が相次いでおり、国際的な批判が高まっている。しかし、反移民団体は、目的が達成されるまで毎週デモを続ける方針を明らかにしており、事態が早期に収束するかは見通しにくい状況にある。
南アフリカでは、過去にも2008年、2015年、2019年に外国人を標的とする暴力事件が発生した。背景には、同国の失業率が高水準で推移するとともに、社会経済格差の大きさに対する不満が外国人嫌悪(ゼノフォビア)と結びつき、主に近隣のアフリカ諸国からの移民への反発が高まったとの見方がある。一方で、暴力事件が発生するタイミングが選挙の時期に連動しており、一部の政治家や政党が反移民感情を扇動する動きも指摘されている。なお、過去に発生した暴力事件は散発的に起きつつも、大規模な暴力や略奪に発展するなど急激に発展する傾向が強かったとされる。しかし、今回は2025年に発足した反移民団体「マーチ・アンド・マーチ」が主導する政治運動の色合いが強く、SNSを通じて動員されたとされる。
今年は11月に統一地方選挙が予定されており、反移民や不法移民の排斥を主要な公約やイデオロギーとして掲げる政党がこうした動きを扇動している模様である。2024年に実施された総選挙(議会下院(国民議会)選挙)においても、一部の政党が移民政策の厳格化を公約に掲げるとともに、議席を獲得した経緯がある。また、SNSなどでは、移民を犯罪や誘拐、暴力と結びつける動きがみられ、こうした話題が広く拡散されることにより、実際の犯罪統計と関係なく「移民=危険」という印象を植え付けることにつながっている。足元の失業率は30%を上回るうえ(図1)、若年層に限れば50%を上回るとされ、SNSなどで移民が職を奪うといったナラティブ(物語)が繰り返し流れていることも、反移民感情を煽ることにつながっている。

【デモの背景にある経済事情、金融市場への影響はどうなる】
ここ数年の南ア経済の苦境は、ウクライナ戦争以降の食料インフレのほか、近年経済関係の深化を図ってきた中国経済の変調、トランプ米政権による関税政策、中東情勢の緊迫化を受けた原油高、など複合的な要因が影響している。1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+2.20%と緩やかに加速したものの(図2)、内需の弱さを受けた輸入減少による成長率寄与度が+1.63ptになったと試算される。このため、景気実感は数字との乖離が大きくなっていると考えられる。さらに、足元のインフレ加速を受けて、中銀(SARB)は5月に3年ぶりの利上げに踏み切っており(注1)、先行きの景気は一段と厳しさを増すことも予想される。11月に予定される統一地方選挙に向けては、政治的な駆け引きが一段と強まることも考えられる。

2025年以降の金融市場においては、金の国際価格の上昇を追い風に通貨ランド相場は上昇基調を強めるとともに、主要株価指数(南アフリカトップ40指数)も時価総額の大きい金鉱株を中心に上昇した。しかし、中東情勢の緊迫化による金価格の変調に加え、足元ではFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げ観測を反映した米ドル高の動きも重なり、状況は大きく変化している(図3)。仮に統一地方選挙において、反移民を主張するなどポピュリズム色の強い政党が勢力を増す動きが顕在化すれば、金融市場における同国に対する見方が大きく変化することも予想される。その意味では、今回のデモの動きがどのように展開されるか、政治的な影響を強めるか否かを注目する必要性が高い。

注1 5月29日付レポート「南ア中銀、インフレ顕在化で3年ぶりの利上げに舵」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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