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2023.04.24
新興国経済
新興国金融政策
アルゼンチン経済
アルゼンチン・フェルナンデス大統領が次期大統領選への不出馬表明
~与党候補者選定を巡りフェルナンデス副大統領が圧力を強める可能性、選挙の行方は混とんか~
西濵 徹
- 要旨
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- アルゼンチンでは今年10月に次期大統領選・総選挙が予定され、残り半年を切るなかで政治の季節は佳境を迎えている。他方、足下の同国経済は物価高と金利高の共存でコロナ禍からの景気回復の動きが一巡している上、外需に不透明感が強まるなど逆風が吹く事態に直面している。与党内では穏健志向のフェルナンデス大統領と急進志向のフェルナンデス副大統領の対立が政策運営に影響を与えてきたが、フェルナンデス大統領が次期大統領選に出馬しない方針を明らかにした。今後は与党の候補者選定に当たってフェルナンデス副大統領が圧力を強めることも考えられる。他方、野党候補者も不透明であり、与野党問わず大統領選の行方は混とんとすることも予想され、その行方は同国経済にも影響を与えるであろう。
アルゼンチンでは今年、10月に次期大統領選挙と国民議会上下院総選挙の実施が予定されており、残り半年を切るなかで『政治の季節』は佳境を迎えつつある。一方、足下の同国を巡っては、ラニーニャ現象を理由とする3年連続の歴史的な大干ばつが直撃しており、電源構成の約3割を水力発電に依存するなかでか直発電の再稼働を余儀なくされ、昨年来の原油や天然ガスなどの国際価格の上振れも重なりエネルギー価格の高止まりを招いている。さらに、商品高による食料品価格の上振れにより生活必需品を中心とするインフレが続いている上、国際金融市場における米ドル高や同国経済を巡る懸念も重なり通貨ペソ相場は調整局面が続くなど輸入インフレも重なる状況に直面している。中銀は物価・為替の安定を目的に昨年1月以降に断続的、且つ大幅利上げに動くも、昨年10月には国際金融市場での米ドル高一服に加え、インフレ収束期待が高まったことを理由に利上げ局面の休止に動いた。しかし、その後もインフレの昂進が続いて100%を上回る異常事態となったことを受けて今年3月に半年ぶりに利上げ再開に舵を切るとともに(注1)、その後もインフレが一段と昂進したことを受けて今月も2ヶ月連続での利上げ実施に追い込まれている(注2)さらに、昨年末にかけての同国経済は物価高と金利高の共存に加え、コロナ禍からのペントアップ・ディマンドの一巡も重なり景気底入れの動きに一服感が出ている上、年明け以降は商品市況の調整を追い風に外需は頭打ちの動きを強めるなど、景気に一段と下押し圧力が掛かる動きがみられる。このように経済は視界不良状態が続く一方、政治については与党・正義党(ペロン党)内では穏健志向の強いフェルナンデス大統領と、急進左派色が強くIMF(国際通貨基金)などとの対立も厭わない(クリスティーナ)フェルナンデス(デ・キルチネル)副大統領(元大統領)との対立が政策運営に様々な影響を与える動きがみられた。フェルナンデス政権は緊縮的な財政、金融政策を着実に進めることにより、IMF及びパリクラブ(主要債権国会議)との債務再編で合意するとともに、IMFからの支援受け入れも前進させるなど経済の立て直しを進めてきた。その一方、昨年末にかけては労働組合や与党内の急進左派による『突き上げ』を受ける形で最低賃金の段階的引き上げのほか、企業に対して年末特別ボーナスの支給を義務付けるなどの対応を迫られるなど、難しいかじ取りを余儀なくされてきた。こうしたなか、21日にフェルナンデス大統領は次期大統領選に出馬しない意向を明らかにしており、次期大統領選の行方に大きな影響を与える可能性が高まっている。なお、フェルナンデス副大統領は昨年末に大統領在任中の汚職疑惑で有罪判決を受けたものの、その後も副大統領職に留まり職務を継続する一方(注3)、次期大統領選には出馬しない意向を示している。与党・正義党内においては依然フェルナンデス副大統領がフェルナンデス大統領を上回る影響力を有しており、次期大統領選の候補者選定を巡ってフェルナンデス副大統領が『圧力』を強めることも予想される。世論調査においてはフェルナンデス大統領に対する支持が低下する一方、フェルナンデス副大統領への『待望論』の根強さを示唆する動きもみられるなか、今回のフェルナンデス大統領の決定は与党・正義党を後押しすることも考えられる。他方、先月には前回大統領選で敗れた中道右派政党・共和国提案のマクリ党首(前大統領)が次期大統領選に出馬しない意向を表明しており、次期大統領の行方は与野党問わず大きく動き出す可能性も予想される上、その行方は同国経済に影響を与えることは間違いない。


注1 3月17日付レポート「アルゼンチン中銀、インフレ率100%突破で利上げ局面再開へ」
注2 4月21日付レポート「アルゼンチン中銀、インフレ収まらず追加利上げで政策金利は81%」
注3 2022年12月12日付レポート「アルゼンチン・フェルナンデス副大統領に有罪判決、政治が経済の足を引っ張る展開は続くか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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