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南ア・与党ANC議長選は疑惑噴出も現職のラマポーザ大統領勝利

~対立候補の猛追を受けるも党内基盤は強化、とはいえ次期総選挙に向けては波乱含みの展開も~

西濵 徹

要旨
  • 南アフリカではラマポーザ大統領への汚職疑惑が噴出している。ラマポーザ氏はこれを否定するとともに、与党ANCは結束して議会に提出された弾劾手続きの回避に動いた。しかし、議長選を前にした疑惑噴出により当初はラマポーザ氏の再選確実とみられた状況への影響が懸念された。19日の議長選でラマポーザ氏は再選を果たすも、得票率は当初の想定を大きく下回るなど同氏への忌避感も顕在化した格好である。他方、党大会ではANCの最高幹部はラマポーザ氏の側近が多数派を占めるなど党内基盤は強化された。とはいえ、次期総選挙に向けては党内力学と世論の乖離が大きくなるなかで波乱含みの展開も予想される。

南アフリカでは、議会に設置された独立調査委員会が先月末にラマポーザ大統領による不正金銭の取得による汚職疑惑を巡る偽証を示唆する判断を下したことをきっかけに(注1)、政局が大きく混乱する可能性が懸念された。というのも、ラマポーザ氏が率いる与党ANC(アフリカ民族会議)は今月16~20日に党大会の開催を予定しており、党大会において実施される議長選では同氏の再選が確実視されていたものの、汚職疑惑の噴出に伴い不透明感が高まる可能性が出ていた。他方、ラマポーザ氏は調査委員会の報告に異議申し立てを行うとともに、憲法裁判所に対して報告結果に対する審査を求めたほか、与党ANCは議会において同氏に対する弾劾を求める動きが出た場合には一致して反対する方針を決定するなど、政局の安定化を目指す対応をみせた。その後、議会下院(国民議会)にラマポーザ氏に対する弾劾の是非を審議する委員会の設置案が上程され、反対多数で否決することにより同氏に対する弾劾手続きは回避された(注2)。ただし、議会下院においてANCは240議席と多数派を維持しているものの、反対票は214に留まるなど一部のANC所属議員が賛成票や棄権に回る動きがみられるなど、党内の結束の足並みに乱れが生じている模様である。こうしたなか、19日にANCの議長選が実施されてラマポーザ氏が勝利したことで議長として2期目に突入するとともに、2024年の次期総選挙を経た上での政権2期目入りに向けた一歩目を踏み出すことに成功した。なお、上述のように疑惑の噴出前の時点では、議長選はラマポーザ氏の圧倒的な優勢が伝えられ、対立候補であるムキゼ元保健相(ラマポーザ政権下で保健相に就くも、昨年通信会社からの不正利益供与疑惑を理由に辞任)に対して2倍以上の得票による圧勝を果たすとみられていた。しかし、実際にはラマポーザ氏の得票数は2,476(得票率56.6%)の一方、ムキゼ氏の得票数は1,897(43.4%)となるなど最終盤でムキゼ氏の猛追を受けた格好であり、総選挙においてANCの得票率は低下傾向が続いている上、昨年の統一地方選挙では初めてANCの得票率が50%を下回るなどANCを取り巻く環境が厳しさを増すなか(注3)、疑惑噴出により『脛に傷を持つ』トップを擁立することへの忌避感が影響した可能性はある。他方、党大会において選出されたANCの最高幹部人事を巡っては、2017年の前回党大会後にラマポーザ氏が政敵であるズマ前大統領の側近を排除する動きを強めてきたなか、今回もラマポーザ氏の側近が多数を占める格好となるなど党内基盤は一段と強化された格好である。金融市場においてはラマポーザ氏の議長再選を受けた政局の安定を好感する向きがみられるものの、党内力学と世論とのギャップが拡大する傾向が強まっていることを勘案すれば、2024年の次期総選挙に向けては左派政党の躍進のほか、与党ANCの分裂といった不確定要素が顕在化する可能性も考えられる。ラマポーザ氏としては当面の正念場を乗り切った格好であるが、本当の意味での山場は今後待ち受けているほか、与党ANCにとっても難しい状況に直面することは避けられないと予想される。

図表1
図表1

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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