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2022.12.05
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南ア、ラマポーザ大統領に汚職疑惑噴出、政局混乱のリスクも
~米ドル高一服で底入れしたランド相場は政局混乱を理由に不安定な値動きをみせる可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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- 南ア経済を巡っては、世界経済がスタグフレーションに陥る懸念に加え、国内では慢性的な電力不足や生活必需品を中心とするインフレが続くなか、中銀は物価及び為替安定を目的に金融引き締めを迫られるなど、国内外に不透明要因が山積している。こうしたなか、政局を巡っても急激に雲行きが怪しくなっている。ラマポーザ大統領を巡っては、2020年の窃盗事件をきっかけに不正金銭疑惑が噴出しており、弾劾、ないし辞任に発展する懸念が出ている。今月には与党ANCの議長選が予定されており、ラマポーザ氏の再選が確実視されていたが、汚職疑惑の噴出で雲行きは一転怪しさを増している。米ドル高の一服を受けて底打ちしたランド相場は不安定な値動きをみせており、先行きは政局混乱を理由にランド相場が混乱する可能性はある
足下の南アフリカ経済を巡っては、世界経済がスタグフレーションに陥る懸念が高まるなど外需に対する不透明感が高まっていることに加え、慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなるなど内需を取り巻く環境も厳しい上、商品高による世界的なインフレは同国においても食料品やエネルギーなど生活必需品を中心とするインフレを招くなど、国内外で不透明要因が山積する状況が続いている。こうしたなか、世界的なインフレを受けた米FRB(連邦準備制度理事会)など主要国中銀のタカ派傾斜の動きは世界的なマネーフローに影響を与えており、経常赤字と財政赤字の『双子の赤字』に加え、外貨準備高も過小状態であるなど経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が脆弱な同国は資金流出に直面する展開が続いてきた。さらに、商品高による生活必需品を中心とするインフレの動きに加え、資金流出に伴う通貨ランド安は輸入物価を押し上げる形で一段のインフレ昂進を招くことが懸念されるなか、中銀は物価、及び為替の安定を目的に昨年11月以降断続的な利上げ実施に追い込まれるとともに、先月末の定例会合においても2会合連続で75bpの大幅利上げを実施しており、政策金利は5年半ぶりの水準となるなど物価高と金利高の共存が景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている(注1)。このように景気に対する不透明感が一段と強まる動きがみられるなか、同国政界を巡っても急激に雲行きが怪しくなる動きがみられる。というのも、議会の独立委員会が先月末に公表した報告書において、ラマポーザ大統領が憲法、及び反汚職法などに違反している可能性とともに、大統領の就任宣誓に反したとする予備的証拠があると指摘したことが影響している。なお、問題の発端は2020年にラマポーザ大統領が所有する牧場内にある別荘で発生した窃盗事件とされ、強盗が家具のなかに隠された多額の現金を持ち去ったとされるものの、当時は事件そのものが公表されなかったとされる。しかし、今年6月に政府の情報機関である国家安全保障局(SSA)のフレーザー元局長の告発により、上述の窃盗事件で400万ドルが盗まれたにも拘らずラマポーザ氏が不正入手した現金であったことを理由に事件が隠ぺいされたことが明らかにされた。フレーザー氏の告発を巡っては、同氏がラマポーザ大統領の『政敵』であるズマ前大統領の側近であることを理由に政争の一環として情報戦が仕掛けられているとの見方が根強く、早期に事態収拾が図られた経緯がある。他方、ラマポーザ氏は当初盗まれた現金を巡ってバッファローの売却益と説明していたものの、現在も売却したとされるバッファローが農場に居るなど説明に疑義が生じる事態となったことから、議会は元裁判官などで構成される独立調査委員会を設置して調査が実施された。結果、独立調査委員会は上述のようにラマポーザ大統領による偽証を示唆する判断を下しており、今後はラマポーザ大統領の弾劾、ないし辞任に発展する可能性が懸念されている。なお、ラマポーザ大統領自身は疑惑を否定する姿勢をみせるとともに、自身の去就を含む対応を巡って与党ANC(アフリカ民族会議)内の幹部会議に預ける考えを示している。他方、議会においては別途ラマポーザ大統領の弾劾手続きの可否を審議すると見込まれるものの、上院(全国州評議会)、及び下院(国民議会)双方においてANCが多数派を形成していることを勘案すれば、弾劾そのものに発展する可能性は高くないと見込まれる。他方、ANCは今月16~20日の日程で党大会の開催を予定しており、党大会において議長選が実施されラマポーザ氏の再選が確実視されていたものの、一転して雲行きが怪しさを増すとともに、党内抗争が再び激化する可能性も高まっている。ラマポーザ氏が議長に就任した2017年の前回議長選においては、ラマポーザ氏とズマ前大統領の元妻であるドラミニ=ズマ氏の一騎打ちによる苛烈な選挙戦が展開されるなど事実上の分裂戦が展開された(注2)。翌2018年にラマポーザ氏が大統領に就任した後は、ANC内のズマ派の排除を進めることで党内基盤の強化を図る一方、ANC内には両陣営による遺恨状態が続くなど火種が残ってきた。ズマ氏自身は汚職疑惑を調査する委員会への出廷に応じなかったことを理由に法廷侮辱罪による有罪判決を受け、昨年一旦は収監されたものの、健康診断を目的に仮釈放が認められるも、その後に再収監され、今年10月に刑期を終えたとして釈放されていた。しかし、その後は上述の仮釈放措置が違法であったことを理由に先月末に再収監されており、表立って政治活動が行うことが出来ない状況にあるものの、ラマポーザ氏を巡る問題勃発を受けて支持者などが活動を活発化させる可能性は考えられる。米ドル高の一服により底打ちしているランド相場は政局混乱の懸念を理由に不安定な値動きをみせており、今後の政局の行方如何では一段と混乱を余儀なくされる可能性に注意が必要になろう。

注1 11月25日付レポート「南ア中銀、7会合連続の利上げ、且つ75bpの大幅利上げも景気に不透明感」
注2 2017年12月19日付レポート「南ア、与党ANC議長にラマポーザ副大統領」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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