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2022.06.27
新興国経済
ロシア経済
国際的課題・国際問題
ウクライナ問題
ロシアが1世紀ぶりのデフォルト、今後はクロスデフォルトに発展へ
~具体的な影響は限定的だが、ロシアにとっては「ウクライナ後」が見通せない状況になろう~
西濵 徹
- 要旨
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- ロシアのウクライナ侵攻を受けた欧米などの経済制裁の強化により、ロシアはデフォルトに陥ることが懸念されてきた。ただし、ロシア政府は支払い意思を示すなど自らデフォルトを宣言することはなく、格付機関もロシア関連の格付を取り下げるなど認定の手段は限られた。先月にはドル建国債の利払いに対する超過利息の不払いがクレジットイベントと認定されたが、少額ゆえにクロスデフォルトは回避された。しかし、5月末に支払期限を迎えたドル建及びユーロ建の利払いが今月26日に猶予期限を迎えるも、投資家に資金が届かずデフォルトとなった。今回のデフォルトに伴う具体的な影響は限定的だが、今後はクロスデフォルトに発展することでロシアの国際金融市場からの退出となる。ウクライナ問題の行方は依然見通せない状況が続くが、ロシアにとっては「ウクライナ後」の景気回復の道筋が描きにくくなる厳しい状況を想定する必要があろう。
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、欧米などはロシアに対する経済制裁を強化するとともに、その後の事態の深刻化を受けて制裁対象は広がっており、世界経済及び国際金融市場からロシアを切り離す動きが進んできた。こうした動きを受けて、国際金融市場においてはロシアがデフォルト(債務不履行)に陥ることが懸念されたものの、ロシア政府は欧米などの経済制裁に対抗して、ルーブル建ですべての対外債務の支払いを行う旨の大統領令の発令に動くなど支払い意思をみせてきた。さらに、外貨の資金繰りが懸念されてきたものの、最終的にはドル建での元利払いを履行する動きをみせたことで問題は回避されてきた。ただし、米国は制裁強化後も5月25日までを対象に米国の個人及び法人によるロシア財務省、中銀、政府系ファンドが発行した債券及び株式に関連する利子、配当、償還金の受け取りなど金融取引を承認する特例措置に動いたものの、4月初旬に突如措置の撤廃に動く方針を明らかにした(注1)。そして、特例措置そのものが失効して米国国内におけるロシア国債の保有者への元利払いが困難になったことで、ロシアのデフォルトは秒読み段階に入っていた(注2)。なお、デフォルトの認定には、①債権国自身による返済不能宣言、②格付機関による認定、そして、③国際デリバティブ協会(ISDA)のクレジットデリバティブ委員会によるCDS(クレジット・デリバティブ・スワップ)の支払い義務が発生する信用事由(クレジットイベント)との判断、という3つの手段がある。しかし、上述のようにロシア政府はルーブル建ながら支払い意思を示しているほか、欧米などの制裁強化の一環で主要格付機関3社はいずれもロシア関連の格付を撤回しており、上述の①及び②は事実上封じられてきた。こうしたなか、4月初めに償還期限を迎えたドル建国債を巡って、ロシア政府は当初ルーブル建での支払い意思を示していたものの、投資家が受け取りを拒む動きをみせたことで最終的に猶予期間終了間際にドル建で支払いを行った。他方、投資家が超過利息(約190万ドル)を要求したことに対して、ロシア政府は支払い意思を示していたことを理由にこれを拒否したため、ISDAのクレジットデリバティブ委員会の判断に注目が集まったなか、6月1日にクレジットイベントに当たるとの判断が下されてロシアは事実上のデフォルト状態に陥った。なお、この際にはデフォルト対象額が極めて少額であったことを理由に(7,500万ドル以上が対象)、ロシアのすべての対外債務をデフォルトと見做す「クロスデフォルト」となる事態は免れていた。ただし、上述の通り5月末に米国政府による特例措置が失効したことで、それ以降は米系金融機関がコルレス銀行(中継銀行)として金融取引を行うことが不可能となった。こうしたなか、5月27日に支払い期限を迎えたドル建(約0.71億ドル)及びユーロ建(約0.27億ユーロ)の利払いについて、ロシア政府は連邦証券保管振替機関(NSD)に外貨建で資金を移管したとしているものの、猶予期限である今月26日までに国債保有者に資金は届かなかったことでデフォルトに陥った模様である。ロシアが対外債務のデフォルトに陥るのはロシア革命直後の1918年以来であり、約1世紀ぶりのこととなる。さらに、今回のデフォルトを受けてクロスデフォルトの認定基準を上回ることで、いよいよロシアのすべての対外債務がデフォルト状態となることは避けられそうにない。なお、欧米などによるロシアへの経済制裁の強化を受けて、すでに外国人投資家や企業はロシア関連資産及びロシア関連事業に対する会計処理を迫られており、デフォルトに陥ったことで追加的な処理が生じるなどの具体的な影響は限定的とみられる。他方、ロシア国債の保有者は支払いを求めて法廷闘争に訴えることが予想される一方、ロシア政府は原油や天然ガスをはじめとするエネルギー資源の輸出の堅調さを理由に返済能力及びその意思がある考えをみせており、問題解決には長期間を要する可能性が高いと見込まれる。さらに、今回のデフォルトを通じてロシアは国際金融市場から締め出されることとなり、ロシアは経常黒字を抱えるなどマクロ面では資金超過状態であるにも拘らず、銀行セクターなどの金融仲介機能が極めて脆弱であることが経済活動の足かせになってきたが、ウクライナ問題が一巡した後のロシア経済にとっては景気回復シナリオが描きにくい状態となることが懸念される(注3)。現時点においても依然としてウクライナ問題の先行きは見通せない状況が続いているが、ロシア経済にとっては『ウクライナ後』を巡って一段と厳しい状況に追い込まれる可能性に留意する必要がある。
注1 4月5日付レポート「米国がロシアのデフォルト回避に向けた動きの「壁」に」
注2 5月27日付レポート「ロシア、デフォルトへの外堀は埋まるも「籠城戦」の動きを強める」
注3 6月20日付レポート「ロシア経済の立て直しには「ペレストロイカ」だけで充分か?」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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