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2025.12.18
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2024~2025年の先進医療は不妊治療関係中心に増加
~主要周辺技術では子宮内膜刺激術が一番保険適用に近いか?~
重原 正明
- 目次
2025年6月末までの1年間の先進医療の実施実績が、2025年12月4日の先進医療会議(厚生労働省傘下の有識者会議)の資料として公表された。先進医療は保険適用されていない技術を含む治療について、その技術以外の部分に保険適用を認める、混合診療のしくみの一つである。新しい医療技術が保険適用となるかどうかの判定過程の一つとして位置づけられる。
特に2022年4月の不妊治療の保険適用以降、不妊治療の関連技術が数多く先進医療として認められており、先進医療全体の実施費用にも大きな影響を与えている。本レポートでは先進医療の実績について前年度との比較を行い、不妊治療関係の保険適用への検討状況も併せて見ることで、先進医療の動向を探る。
1. 2025年6月末までの1年間の実績は、技術数が減ったにも関わらず件数・金額は増加
2025年6月末までの1年間(以下「2025年度」)の先進医療の実績は、前年度(以下「2024年度」)の実績と比べて、全患者数(=実施件数)、総金額、先進医療及び旧高度先進医療の総額の3点とも増加した(資料1)。

2025年4月は定時の診療報酬改定の時期ではなかったが、先進医療のうち7種類が実施取り下げとなったことなどにより、先進医療の技術数は年度内に3種類減って、2024年度末の76種類から2025年度末には73種類となっている。一方、先進医療部分の実施の件数・金額でみると、それぞれ2024年度に比べて2025年度はわずかに増加することとなった。
2. 不妊治療の周辺技術の増加が主な要因
対象となる技術数が減っているにも関わらず、実施の件数・金額とも増加しているのはなぜか。先進医療の技術ごとの増減について、主なものを抜き出すと資料2の通りとなる。なお金額は以後特に断らない限り、先進医療部分の金額とする。

陽子線・重粒子線治療の保険適用範囲拡大により先進医療の金額・件数は減少した。また着床前胚異数性検査(PGT-A)のうち大阪大学を中心に実施したものについては、予定数を実施し先進医療の取り扱いを終えたため減少している(注1)。一方で、不妊治療の周辺技術(資料2の色付き部分)、特に子宮内膜刺激術、精子選択術、タイムラプス撮像法が伸びている。
これらの技術が今後保険適用されるかどうか、については次項で考察する。
3. 不妊治療周辺技術の多くが保険適用の検討へ。ただ当面は先進医療継続が多いか
先進医療は保険適用の前段階と位置付けられており、十分な数の先進医療を実施した後でその有効性・安全性などを評価し、保険適用とするかどうかを決めることになる。12月4日の先進医療会議では、多くの不妊治療周辺技術(胚染色体異数性検査は含まない)について、その判断基準となる専門家による意見も資料として提出された。
会議の判断は「十分な科学的根拠がある」「一定の科学的根拠がある」「科学的根拠なし」の3つで、「十分な」「一定の」の2つに入ったものについて、別の場(中央社会保険医療協議会 医療技術評価分科会)で検討の上、保険適用とするか先進医療として継続するかが決定される。
12月4日の会議での判断の結果は公開されていないが、元となる資料によると、審査対象となったすべての不妊治療周辺技術に対して「一定の科学的根拠がある」に対応する意見が出されていた。ただしこの中でも根拠の確からしさで4段階に分かれており、子宮内膜刺激術は一番確からしい段階、3種類の精子選択術は3番目、タイムラプス撮像法は4番目となっている。評価内容や審議の状況に拠るところではあるが、この中では、子宮内膜刺激術が一番保険適用に近いと思われる。
他の資料なども参考とすると、各技術を用いることで例えば妊娠率の向上が見られたが、それが統計的に有意(つまり偶然そうなったとは言えない程度)の差ではなかった、など、サンプル数の不足や効果の検証体制が整っていないことなどが、はっきりとした科学的根拠が認められない原因となっている例が多いようである。
不妊治療の保険適用に伴い、ある種緊急避難的に先進医療に組み入れられた(注2)不妊治療周辺技術が、先進医療のかなりの部分を占める事態は本来のものではなく、可能な範囲で早期に解消すべきことと筆者には思われる。2026年の診療報酬改定には間に合わないとしても、不妊治療周辺技術について(保険適用・自由診療の間の選定療養(注3)という道も含め)その最終的な取り扱いが早く決まることを望みたい。
【注釈】
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大阪大学とは別に、徳島大学を中心としたグループが別の装置等を用いた着床前胚異数性検査(PGT-A)を先進医療として行う予定だが、執筆時点ではまだ準備段階と思われる。
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保険診療と保険外診療を同時に行う混合診療を禁止する原則から、不妊治療本体が保険適用になった時点で、不妊治療に保険を適用した場合には周辺技術が受けられなくなる危険があった。それを防ぐため、周辺技術を先進医療に指定し、例外的に混合診療を受けられるようにする、という意図も周辺技術の先進医療指定にはあったように考えられる、
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選定療養とは例外的に認められている混合診療の一種で、患者の選択による保険外診療でありながら、保険診療と併用できる。金歯(保険適用となる場合もある)のほか、差額ベッド、大病院の初診料、水晶体再建に使用する多焦点眼内レンズなどが含まれる。
【参考文献】
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厚生労働省(2025)第149回先進医療会議資料 先-5-1、参考資料5―1~3、先―6-1および参考資料6-1~4(2025年12月4日)
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厚生労働省(2024)第138回先進医療会議資料 先-1-1および参考資料1~3(2024年12月5日)
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重原正明(2024)「先進医療実施状況と2024年の保険適用~不妊治療補助技術の追加で件数・金額とも大幅増~」
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重原正明(2023)「不妊治療の着床前検査は先進医療Bへ~保険適用に向けて検討が進められることに~」
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重原正明(2022)「体外受精への保険適用の内容~今後の焦点は着床前検査と患者サポート~」
重原 正明
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

