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2025.12.24
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介護職員数「2022年ピーク」に減少傾向:背景に「低賃金」も
〜介護報酬臨時改定が抜本的処遇改善の実行策となるか〜
須藤 智也
- 目次
1. 2024年の介護職員数は前年比+487人:2022年をピークに約2.8万人減少
2025年12月19日、厚生労働省は2024年10月1日時点の介護職員数を212.6万人と公表した(資料1、注1)。前年比+487人で、ほぼ「横ばい」となった。2022年10月1日時点から約2.8万人減っており、大きな増加には転じなかった。一方、高齢化の進展等に伴い要介護(要支援)認定者数は増加した。厚生労働省は2026年度に約240万人、2040年度に約272万人の介護職員が必要と見込むが(注2)、現状とのギャップは大きい。介護ニーズが増す中で介護人材不足の深刻さも増している。

2. 離職者数と新規就業者数の関係
介護職員数「横ばい」の状況は離職者と新規就業者が同数程度であることを意味する(注3)。資料2のとおり介護職員の離職率は経年では低下傾向だが依然10%台であり一定程度の離職が発生している。一方、介護サービス(注4)の新規求職者数は経年で減少傾向にある。つまり、離職率が低下する中でも結果的に2023年度・2024年度と2年度続けて新規就業者数が離職者数を大きく上回らなかったことになる。

3. 介護職員数「横ばい」の背景に「賃金の低さ」:「職場環境」「運営方針」の問題も
介護分野のおかれた状況を全産業と定量的に比較する場合、「賃金の低さ」は度々指摘される。資料3は「社会保険・社会福祉・介護事業」の賃金推移を「全産業」と比較したものだが、2024年は「全産業」より月額約5.8万円低いことが分かる。

介護職員に離職理由を聞いた調査でも「収入が少ない」は上位に挙がる(資料4)。一方、これを上回る割合の理由には「職場の人間関係」「運営のあり方への不満」等が挙がっている。こうした定性面の観点を「新規就業者が増えない」「離職者が減らない」背景として捉えようとする議論もある(注5)。

4. 2026年度の介護報酬臨時改定が抜本的処遇改善の実行策となるか
厚生労働省は介護人材不足を解消するため、これまで「総合的な介護人材確保対策」(以下「対策」)に取組んできた(資料5)。前章で示した「賃金の低さ」は資料5①が、「職場環境」「運営方針」の問題は③が対応箇所だろう。ただ、資料1のとおり人材不足の深刻さは年々増している。2025年の社会保障審議会介護保険部会ではこうした危機的状況を踏まえ、2040年を見据えた「対策」の議論も行われた(注6)。

政府は2025年11月21日に閣議決定した「総合経済対策」(注7)で介護分野の賃上げを支援する補助金交付を示した(詳細は拙稿「『医療・介護等支援パッケージ』が閣議決定:介護分野の内容は?」も参照)。この他、「総合経済対策」には賃上げを企図する2026年度中の介護報酬臨時改定も明記されている(注8)。2040年を見据えた「対策」の具体策として、まず賃金について措置を打ち出した格好だ。
介護職員や就職希望者等に処遇改善を実感してもらうには「賃金水準を全産業に近似させていくこと」が肝要となる。拙稿「介護分野の賃上げは介護報酬改定だけで進むのか?」でも指摘したとおり、2010年頃以降の介護分野の賃金は全産業を上回る程度で「上昇」はしているものの、介護職員が感じる経年の賃金満足度はほぼ改善していない。この理由は、介護分野の賃金の「水準」自体が全産業を大きく下回り、近年差は縮まってきたものの、十分に改善しているとまではいえないためだと考える。この点、「総合経済対策」に「『他職種と遜色のない処遇改善に向けて』、令和8年度介護報酬改定において、必要な対応を行う」と明記された点は評価できる。抜本的な処遇改善の実行策が措置されることへの注目が高まる。
【注釈】
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厚生労働省「介護職員数の推移」(2025)より。
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厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2024)より。
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より正確には、非介護分野から介護分野に移動(転職等)した就業者と介護分野内で別の事業所等へ移動(転職等)した就業者の合計数と、介護分野から非介護分野へ移動(転職等)した就業者と介護分野から離脱(退職後無職等)した就業者の合計数とが同数程度であったということになる。
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「厚生労働省編職業分類」の「36介護サービスの職業(介護サービス職業従事者)」を指す。「361介護職員(医療・福祉施設等)」「362訪問介護従事者」が含まれる。
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この他、例えば労働市場全体で働き手自体が不足傾向である点等も要因として考えられる。
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検討結果は厚生労働省「介護保険制度の見直しに関する意見(案)」(2025)にも明記された。
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首相官邸HP「『強い経済』を実現する総合経済対策〜日本と日本人の底力で不安を希望に変える〜」より(2025年12月23日閲覧)。
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2026年度中の介護報酬臨時改定については、2025年12月21日に自由民主党の鈴木幹事長が党会合で「介護報酬を2026年度に2.03%引き上げる見通し」である旨を明らかにした。ただし、本稿執筆時点(2025年12月23日時点)で具体的な内容までは明らかになっていない。
須藤 智也
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

