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2026.04.07
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育成就労制度の開始まであと1年
~投資判断の上では「人数と分野」「送出し国との覚書」「周辺コスト」に注目~
重原 正明
- 要旨
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- 現在の技能実習制度にかわる新しい外国人の就労制度「育成就労制度」が2027年4月から始まる予定で、2026年4月から本格的な準備手続きが始まろうとしている。
- 出入国在留管理庁では育成就労ビザの受入れ人数見込枠を発表した。対象業種・職種の拡大を求める声は多いが、実際に従前の技能実習の対象業種より拡大された業種はわずかである。
- 外国人労働者の受け入れ・支援窓口となる監理支援機関の基準も発表され、2026年4月から認定審査が開始される。基準は監理支援機関の中立性、事業遂行能力の確保などの観点から項目が追加され、より厳しいものとなっている。また育成就労外国人を受け入れるためには、送出し国との覚書が締結され、送出し国の認定を受けた送出機関から就労者を受け入れることが必要となった。2026年3月31日時点で覚書が結ばれたことが公開された国はないが、技能実習に関する覚書が結ばれている17か国や、育成就労に続く在留資格である特定技能に関する二国間覚書を結んでいる17か国の中から先行する国が現れると思われる。
- 育成就労制度では育成就労外国人を、3年の期間内に特定技能1号のレベルの人材に育成することが、育成就労実施者に求められる。日本語教育などを含む育成コストその他の周辺コストについても注目されるところである。
- 育成就労制度は技能実習制度と意義づけは異なるが、内容に大きな変化があるものではない。順調に導入されれば経済への影響は大きくないものと思われる。各企業の業績への影響を考える上では、育成就労の対象となる産業や枠の人数、送出し国との覚書交渉の進展、および周辺コストが注目点となる。人手不足が日本経済のボトルネックとなりつつある中、制度が順調かつ適切に導入されることを願いたい。
- 目次
1. はじめに
就労のための外国人在留資格としては、一定の技術・能力を持った人のための在留資格として高度専門職、技術・人文知識・国際業務、技能、特定技能などがあるが、特別な技能を持っていない外国人の就労のための資格として、国際貢献のためOJTで技術を学び、母国に帰ってその技術を活かすことを想定した技能実習という資格がある。これがより就労の性格を強くした育成就労という資格・制度に2027年4月から置き換えられる予定であり、2026年4月から監理支援機関の事前申請が開始されるなど、導入の準備が本格化する(注1)。
本レポートでは育成就労制度の導入準備の進捗状況を見ながら、各企業の業績や投資判断に与える影響を考える上で、注目すべきポイントについて考察する。
2. 育成就労の職種別受け入れ枠発表
技能実習生の受入に関しては、基本的に実習期間(原則3年)が終わった後帰国する仕組みとされていたことから、日本全体としての受け入れ枠は設けられなかった。一方、育成就労外国人は終了後に特定技能の資格を取り日本で引き続き働くことを想定していることもあり、特定技能と同様に職種ごとの受け入れ枠が決められている(注2)。現時点における2028年度までの受け入れ枠想定値(注3)を、出入国在留管理庁がすでに発表している(資料1)。

人手不足に悩む業界を中心に、現在技能実習の対象でない業種・職種へも育成就労・特定技能の対象を拡大することを求める動きがあるようだが、範囲拡大はわずかしか認められていない。特定技能の対象となる特定産業分野、育成就労産業分野およびその細目である業務区分の一覧表を、資料2に示す(注4)。
範囲拡大がなかなか進まない背景には、過去に外国人労働者に対してあった社会保険加入漏れ、給与支払い遅延などの不法行為や、それを原因とする実習生の集団脱走などの事例に鑑み、不法行為や人権侵害の防止にどう取り組むかが問われている可能性もある。また業種によっては、現在留学生などを目的外就労の枠で大量に雇用していることが問題とされていることも関係しているかもしれない(注5)。
技能実習から育成就労への制度改定は、来日目的の中に就労が含まれることを明確化するとともに、来日する外国人の人権を保護するという意図もあると考えられるため、範囲拡大を望む業界などには、人権保護・違法行為防止の姿勢を明確に示すことが求められよう。

3. 送出し国との覚書は原則必須
前章でも述べた通り、技能実習から育成就労への制度改定は、来日する外国人の人権を保護することも意図されている。外国人の人権に関する問題は、日本での技能実習生の斡旋を行う監理団体(育成就労制度では監理支援機関)(注6)とともに、日本で働きたいという外国人を日本の企業、あるいは管理団体に紹介する外国人母国の送出機関も原因となっていた(注7)。このため、技能実習制度では監理支援機関、送出機関の双方に対して、人権保護の観点からより厳しい条件が課されている。
まず国内の監理支援機関については、その満たすべき要件がすでに決められ、2026年4月1日から事前申請の受付が開始されている。主な要件は資料3の通りであり、技能実習の監理団体より厳しい条件が課せられている。

また、送出機関は原則として日本と覚書を交わした送出し国(資料4)の機関に限られる。

具体的には、日本での就労のため監理支援団体などから提出される育成就労計画に、原則として覚書を取り交わした送出し国により認定された送出機関名を記載することになっている(注8)。
現時点で覚書が結ばれたことが公開された国はないが、技能実習に関する覚書や、育成就労に続く在留資格である特定技能に関する二国間覚書を結んでいる国が、覚書の締結や認定送出団体のリスト公表に関しては先行するものと見られる。中国、韓国、南米諸国などは育成就労などの覚書が締結されておらず、他の国も含めて今後の交渉の動向が注目される。
覚書は育成就労外国人が不当な取り扱いを受ける原因を作るような送出機関を排除することが一つの目的と考えられる。一例を挙げると、育成就労法施行規則(注9)で、送出機関が育成就労外国人および管理支援機関から徴収する金額を公開することが求められている。また育成就労法第9条第1項第2号および法務省令の規定により、育成就労外国人から送出機関が徴収できる金額は、育成就労外国人の賃金の2か月分以下とされている(注10)。育成就労外国人が就労のための手数料を払うことで借金を負い不当な環境で働かざるを得なくなることを防ぐ規定であるが、これらの要件を満たす送出機関に対して送出し国が認定を与えることが、覚書に盛り込まれるものと考えられる。
4. 育成コストも見込む必要がある
育成就労制度は、育成就労外国人に3年間で特定技能1号のレベルの人材を育てる制度である。従って育成就労実施者は、育成就労外国人にそのための教育機会を与えなければならない。
特定技能1号の資格のためには、技能試験のほかに、日本語能力の試験にもパスしなければならない。従ってOJTなどによる技能訓練のほかに、日本語教育も必要となる。それらのコスト、またそのための教育担当者の育成コストは、結局は給与とは別の労務コストとして育成就労実施者の負担となることが多いと考えられる。試験の受験料も育成就労実施者の負担となる。
さらに育成就労実施者は、実施する育成就労の産業分野を所管する行政機関の長が組織する分野別協議会に参加することが、原則として求められる。分野別協議会で定められる追加的な規定が新たなコストを生む可能性もある。
これらは人材育成やトラブル防止のコストとも考えられるもので、必要なものとも考えられるが、育成就労実施に当たっては、これらの周辺コストがかかることを意識する必要がある。
5. 企業業績への影響~「人数と分野」「送出し国との覚書」「育成コスト」に注目~
育成就労制度は、従前の技能実習制度とは、制度の目的には違いがあるものの、実際の就労の仕組みとしては大きな違いはない。従って制度移行が順調に進めば、日本経済、あるいは個々の企業の業績に与える影響は少ないものと考えられる。
経済面での影響として注目される点としては、これまでに挙げた次の3点が注目点となろう。
- 受入れ人数枠の設定、業種・職種の追加改変がどのように行われていくか
- 送出し国との覚書締結がどのように進んで行くか
- 育成就労外国人に関する、育成コストなどの周辺コストがどのような水準になるか
なお、国内では監理支援機関について、複数受入先取扱義務、常勤職員要件、監査義務といった要件強化により、統合・集約化か進むことが想定される。地域として統合などを進めなければいけない地域もあるかもしれない。
日本に在留する外国人が増えて来るにつれて、いろいろなトラブルや不法行為(外国人自体ではなく雇用主の問題である場合もある)のニュースを聞く機会も多くなった。しかし多くの大型建設プロジェクトが人手不足と資材高騰で停滞する、多くのバス路線が運転手不足で減便・廃止されるなど、労働力不足は日本経済のボトルネックとなりつつある。そのような中で育成数老制度の動向は、関係業種を中心とした企業の業績に対して重要な要素となり得るものである。
日本経済全体としても、また各業種の単位でも、地域社会との共生の観点も踏まえつつ、育成就労制度が順調かつ適切に導入されることを願いたい。
【注釈】
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制度移行時の技能実習生については、移行措置として、制度移行後も引き続き技能実習生として在留・就労することができる。
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受入れ枠は、対象となる各産業分野の必要就業者数から就業者数を除いた人手不足数に対し、国内人材確保および生産性向上による減少分を調節した人数として算出される。
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育成就労外国人の受入れ見込数には、従前の技能実習生が、移行措置で技能実習生として期間満了まで就労している人数(1号および2号技能実習生に限る)も含まれることに留意されたい。
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自動車運送業と航空の2分野は逆に技能実習では認められていたが育成就労は対象外とされている。これは日本国内で技能訓練を行う必要が薄い(外国でも訓練できる)と判断されたためと考えられる。
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日本政府の「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が2026年1月23日に決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」では、業種の言及はないが、留学生が目的外活動として認められる週28時間を超えるアルバイトを行うなどの違反が見られることが記され、対策としてマイナンバーカードによる留学生所得情報の活用など、より厳格な審査を行う方針が示されている。
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技能実習制度および育成就労制度については、監理団体(育成就労では監理支援機関)を通して実習生などを受け入れる「監理団体型(管理支援型)」のほか、単独企業が自力で技能実習計画などを作成し実習生を受け入れる「企業単独型」がある。技能実習ではほとんどが「監理団体型」であるので、本レポートでは「監理団体型(管理支援型)」を中心に記載する。
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技能実習では、技能実習希望者から高額な手数料を取るブローカーを通じて人を集める送出機関があり、それで実習生が借金を負い、加重な労働にも異議申し立てができない状態となったりした。また日本での生活や実習の内容について十分な情報を提供しない送出団体もあり、実習生と実習先とのトラブルの原因となることもあった。
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技能実習や特定技能については、覚書を締結していない国からも、個別の申請を行って受け入れることはできる。
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育成就労法の正式な名称は「外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律」。
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ILOの1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号)では、その第7条で次のように規定しており、民間職業仲介事業所の労働者からの手数料徴収を原則禁止している。
(ILOサイト上の訳(https://www.ilo.org/ja/resource/1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号)-0)による。)
このような条約などに対応し、送出機関が育成就労外国人から受け取れる金額が、給与2か月分から今後引き下げられることも考えられる。
- 特定技能(育成就労終了後に進むべき在留資格)の例であるが、特定技能の「外食業」の在留者が受入れ見込み数(枠上限)に達しそうになったため、2026年4月13日から特定技能1号の新規受け入れが停止された。この結果、当面外食産業は日本人の労働者を集めることと、合理化などによる効率向上で人手不足に対応せざるを得なくなった。
【参考文献】
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厚生労働省・出入国在留管理庁(2026)「育成就労制度運用要領のポイント」
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厚生労働省・出入国在留管理庁(2026a)「分野別運用方針の主要な記載事項」
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重原正明(2024)「技能実習から育成就労へ~外国人の研修型就労制度はどう変わるか~」
重原 正明
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。