日本の幸福度の将来見通しには大きな課題

~国民のファイナンシャル・ウェルビーイング向上が改善のカギ~

村上 隆晃

目次

1. 日本の幸福度の将来見通し(5年後)は120位と低迷

村上(2025)では、今年3月に公表された「世界幸福度報告」において、日本の幸福度が近年上昇傾向であり、過去最高水準にあることを報告した。

このこと自体は評価すべきことと考えるが、世界幸福度報告に使われているGallup社の他のデータをみた際に気になる側面があり、本レポートで取り上げる。

資料1は、宮田ら(2024)と同様の手法で、日本の主観的なウェルビーイングの指標である幸福度について現在および5年後の評価の推移と、客観的なウェルビーイングの水準を示す指標の一つである健康寿命に関するランキングの推移をみたものである。

健康寿命の場合、2009年までは1位で推移しており、2010年にシンガポールに1位の座を譲った後も、直近公表されている2021年まで2位を保っている。一方、現在のウェルビーイングの順位は、世界幸福度報告でもよく知られているように50位前後で推移している。ただ、2008年のリーマン・ショック以前は27位と現在よりも高い順位にあったことはあまり知られていない事実であると思われる。今回、注目したいのは、将来の幸福度の見通しを示す5年後の評価の順位である。こちらの順位は2006年の70位を皮切りに現在の幸福度以上に下落を続け、直近2024年には147か国中120位にまで下落している。

日本の幸福度(現在)の低さは、毎年3月の公表時にマス・メディアでも取り上げられることから、比較的認知度が高い。しかし、日本の幸福度の将来見通しがそれ以上に低いことは、あまり知られていないと思われる。

図表1
図表1

2. 世界の幸福度の将来見通しの水準が日本よりも高いことが要因

資料1をみると、日本の将来の幸福度の見通しが現在よりもはるかに低い水準にあり、将来を悲観する感覚が強いように受け止められるかもしれない。

そこで、日本と世界平均の幸福度評価の水準を直近の数字で比較してみた(資料2)。

その結果を見ると、意外にも日本の5年後の幸福度は6.1点と、現在の幸福度5.9点をわずかながら上回っていることがわかった。一方、世界平均の同じ数値をみると、現在が5.6点と日本の数値を下回っているのに対し、5年後の数値は7.0点と日本を大きく上回っている。

つまり、世界の将来の幸福度の水準が、現在のそれよりもはるかに高まるため、日本では両者の水準があまり変わらないにもかかわらず国際的なランキングが非常に低くなってしまう訳である。

図表2
図表2

3. 国民のファイナンシャル・ウェルビーイング向上で将来の幸福度見通しの改善を

近年賃上げが続いているものの、長らく賃金の伸び悩みが続いてきた日本において、将来に対する見通しを改善していくことは簡単ではないだろう。まして、トランプ関税に代表されるように不確実性が高まっている現下の状況では、将来の幸福度の見通しを向上させようという主張は非現実的に響くかもしれない。

とはいえ、資料2でみたように現在よりも将来の幸福度の方が高くなるのが世界的には平均的な姿であるが、日本は異なる。村上(2021)でも指摘しているが、欧米と東アジアでは幸福感の基準に異なる面もあり、国際比較には必ずしも大きな意味はないと考えるが、日本の幸福度(5年後)は120位前後と世界でも最低水準に近く、あまりに低い。その向上は現在の幸福度以上に優先度が高いと考える。

そのための方策であるが、第一生命経済研究所では、個々人のウェルビーイングの向上にとって、健康・お金・つながりの3つの人生資産の充実が重要と提唱している。国レベルでは前掲資料1でみたように日本の客観的な健康水準は世界で1、2位を争う。日本の将来の幸福度見通しを改善するための政策の優先順位として、残るはお金かつながりかということになるが、村上(2024)(2025)でも示したように、お金面での取り組み、すなわち国民のファイナンシャル・ウェルビーイング向上が効果的と考える。ファイナンシャル・ウェルビーイングとは、「現在から将来にかけての家計収支に満足し、経済的な安心感を持ち、人生を楽しむための選択ができる状態」を指す。これは、ウェルビーイングの実現にとって重要とされる適切な選択肢から自己決定ができる状態と考えられる。したがってファイナンシャル・ウェルビーイングを高めることは、将来の「自分の夢や目標に向けたライフデザインを考え、実行に移すこと」につながる。その結果「ライフデザインを通じて、目標達成への道筋が明確になり、実際の資産増加を待たずにウェルビーイング実感を高められる」のである。

国民のファイナンシャル・ウェルビーイング向上を図り、将来の幸福度見通しの改善を目指す政策の実行が期待される。

以 上

【参考文献】

村上 隆晃


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

村上 隆晃

むらかみ たかあき

資産運用調査部 フェロー
専⾨分野: Financial Well-being、資産形成・運用、金融経済教育

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