【1分解説】任意後見制度とは?

城石 和秀

  音声解説

成年後見制度は、大きく法定後見制度と任意後見制度に分けることができます。このうち任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、認知症になった場合等に備えて、予め任意後見人を決めておくものです。このため、本人が信頼できる人を任意後見人に選ぶことができ、これが大きな長所です。一方、法定後見制度では、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が後見人を選任します。法定後見制度の後見人は、必ずしも本人をよく知る人が選任されるとは限らず、司法書士等、親族以外が選任されるケースが約8割を占めます。

任意と言っても手続きは厳格で、予め公証役場で公正証書による任意後見契約を結んでおく必要があります。任意後見人に委任したい事項は、全てこの契約に盛り込んでおかねばなりません。任意後見を開始するには、本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所に任意後見監督人を選任してもらう手続きが必要です。任意後見監督人は司法書士等の第三者が選任されることが多く、親族が任意後見人である場合でも、任意後見監督人には一定の報酬を支払う必要があります。

任意後見契約の締結件数は2022年で15千件弱ですが、認知症高齢者の増加が予想される中、依然低水準と言わざるを得ません(資料)。制度を広く知らしめる等、普及に向けた対策が待たれます。

資料 任意後見契約の締結件数
資料 任意後見契約の締結件数

この解説は2023年9月時点の情報に基づいたものです。

城石 和秀


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