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予測市場とは何か?(6)

~日本市場の実現性~

前田 和馬

本シリーズ「予測市場とは何か?」では、主に米国で急速に存在感を増す予測市場に関して、その功罪と今後の展開に焦点を充てる。

日本において予測市場が導入される場合、大きく3つのメリットが考えられる。なお、ここでの取引対象は政治、経済、天候などを想定しており、スポーツは既存の公営ギャンブル等と一部重複するとみられるため除外する。

まず、予測市場が示す情報インフラとしての機能は投資家にとって有益だろう。例えば政治イベントのリスクは定量化することが難しく、特に外国人投資家にとっては日本の政治状況を理解するハードルは高い。日本に予測市場があれば、国内外の投資家は選挙結果等の確率分布を踏まえたうえで投資戦略を立てることができる。

次に、企業や日本社会にとってのメリットだ。企業は予測市場によって先行きのイベントリスクを定量的に把握でき、これによる収益リスクを予測取引によって多少軽減できるかもしれない。また、政治の知識によって金銭的な利益が得られるのであれば、これは国民の政治的な関心を高めるツールとなりうる。ただ、こうした「儲け」を得るために政治への関心が強まることが「社会的に適切なのか」という議論は生じうるだろう。例えば、「投票行動が自身の金銭的利益に強く左右されないか」、「一部の取引参加者が過度な世論誘導を試みないか」、或いは「政治思想が過激化しないか」などの懸念がある。

最後に、仮に予測市場の運営を公的な機関が行う場合、その収益の一部は政府の新たな財源となる。特に予測市場が政治や芸能等を対象とするのであれば、利用者層は既存ギャンブルとは異なり、他の公営ギャンブル等への収益的な影響は限定されるかもしれない。

一方、日本における予測市場の本格的な実現には課題が多い。最も大きな論点はその法的な立て付けだ。米国(連邦政府)が予測市場を「先物取引(金融商品)」と位置付ける一方、米国以外の国々はこれをギャンブルとみなしており、日本の金融庁も「賭博に該当する可能性が高く、慎重な対応が必要」との見解を示している(2026年4月21日の参議院財政金融委員会;注1)。仮にギャンブルとして予測市場を設立する場合、公的な機関の運営(或いは政府監督下の運営)となるものの、こうした運営組織には政治的な中立性が求められる。このため、例えば「総選挙での勝利政党」のように国民の関心が強いイベントがあっても、それを柔軟に賭けの対象にできるかは不透明だ。加えて、インサイダー取引など不正取引への対応、賭け対象の選定に関する倫理基準の制定、或いはギャンブル依存症への対策など、実現に向けた懸念点は多く残る。

【注釈】

  1. 賭博罪を含む関係法令との整合性を踏まえつつ、国内における予測市場の導入と普及を模索する民間企業もある。

※ 本資料は情報提供を目的に作成されたものです。日本国内から予測市場で金銭を伴う取引を行うことは、賭博罪に抵触するおそれがありますのでご注意ください。


【シリーズレポート「予測市場とは何か」】

(1)急拡大の背景

(2)取引の実体

(3)先物取引orギャンブル

(4)不正取引と倫理面の懸念

(5)各国の規制/法人利用

(6)日本市場の実現性(本レポート)

以 上

前田 和馬


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。