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2026.07.24
米国経済
貿易・国際収支
米国経済全般
トランプ政権
トランプ関税
トランプ政権が強制労働に基づく関税措置を発動
~日本製品には12.5%関税~
前田 和馬
7月23日、トランプ大統領は60か国・地域の強制労働対策が不十分とし、これらの国・地域からの輸入品に7月24日から10~12.5%の関税を課す大統領令に署名した。トランプ政権は2025年4月に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税を導入したものの、同関税は26年2月に連邦最高裁で違憲判決が下され、その後は7月24日までの時限措置として通商法122条に基づく全世界への10%関税を実施していた。新たな関税措置は期限切れとなる一律関税の代替手段となる。
適用される関税率は、各国による輸入品への強制労働対策によって異なる。禁輸措置を導入しているものの実施が不十分なEUやメキシコ等は10%、禁輸措置を実施していない日本や中国は12.5%の関税が課される。なお、インドは関税案の公表時(6月2日)には12.5%が課される予定であったものの、今回の最終決定では10%関税のグループに入った。また、これまでの貿易合意に基づき、EU、台湾、日本、韓国、スイスへの関税は既存税率への単純な上乗せではなく、関税率が一律で10%か12.5%になるよう軽減措置が設けられる(既存関税率がこれを超える場合には上乗せなし)。
対象は原則全ての輸入品となるものの、自動車や鉄鋼などの品目別関税(232条関税)の対象品目、一部の食料品やエネルギーなどは除外される。また、バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、マレーシアに対しては、一部の繊維製品や衣料品における関税割当制度(同関税を課さない輸入枠を米国のコットン輸出等に応じて割り当て)を3年間導入し、米国から繊維製品等の輸出を促す方針だ(2026年9月1日までに導入予定)。
新たな関税は不公正な貿易慣行に対処する通商法301条に基づいており、米通商代表部(USTR)は今回の発動に向けて事前調査や公聴会を実施してきた。同法は大統領に比較的柔軟に関税を課す権限を認めており、第一次トランプ政権における対中関税で同法が活用された際においても、その後の法廷闘争で有効性を保ってきた。このため、違憲判決が下されたIEEPA関税よりも法的根拠が強固とみられている。ただ、今回のように広範な国・地域に関税が課されたことはなく、今後は関税措置の妥当性等を巡り法廷闘争へ発展する可能性が高い。
今回の関税措置による米国経済への影響は限定的とみられる。輸入全体の6割程度を構成する19か国・地域に関しては、従来通り10%関税が適用されるなど関税率に大きな変化がない。残りの約4割を構成する41か国・地域、すなわち日本や中国からの輸入品に対する関税は2.5%pt程度の上昇となるものの(10%→12.5%)、米国における実効関税率への影響は0.5%pt程度に留まると概算される。
なお、トランプ政権は7月20日に対カナダへの50%追加関税を公表したほか(8月19日から実施予定;詳細は2026年7月21日付け「米国が対カナダ関税50%を発表」)、通商法301条に基づく16か国・地域に対する過剰生産能力への追加関税も検討しており、今後はその関税率や対象品目が注目される。ただ、11月の中間選挙で物価高が大きな争点となるなか、トランプ政権は大幅なインフレを招きうる関税策の導入に消極的とみられる。一方、選挙後にねじれ議会となり、トランプ大統領の内政に対する影響力が限られる場合、大統領権限を行使できる外交や関税策を積極的に活用する懸念が残る。
前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

