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2026.07.30
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ウォーシュFRBは金利据え置きも、異例の3人が即時利上げ支持 (26年7月28、29日開催FOMC)
~5会合連続で政策金利を据え置きも、委員会内のタカ派的意見対立が鮮明に~
桂畑 誠治
- 目次
1. 金融政策は5会合連続の据え置き(反対3票の異例の展開)
ウォーシュ氏がFRB議長に就任して2回目となるFOMCが2026年7月28、29日に開催された。FRBはFFレートの誘導目標レンジを3.50~3.75%で据え置くことを、賛成9対反対3(前回6月は賛成12対反対0)の賛成多数で決定した。据え置きは5会合連続であり、市場の事前予想通りの決定となった。
一方、バランスシート政策については、「銀行システム内に十分な準備預金を維持する方針を継続している」とし、現状の枠組み維持を確認した(前回6月会合の表現をほぼ踏襲)。声明文の文言も前回から実質的な変更はなく、極めて小幅な修正にとどまった。
今回の会合で最大の注目を集めたのは、反対票の多さとその方向性である。クリーブランド連銀のベス・ハマック総裁、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁、ダラス連銀のローリー・ローガン総裁の地区連銀総裁3名が、いずれも0.25%(25bp)の即時利上げを求めて据え置きに反対した。政策変更を巡り3人の当局者が同時に同じ(タカ派)方向で反対票を投じたのは、2016年9月20、21日開催のFOMC以来、約10年ぶりの異例な事態となる。当時の会合では、FOMCが政策金利の据え置きを決めたのに対し、エスター・ジョージ(カンザスシティ連銀総裁)、ロレッタ・メスター(クリーブランド連銀総裁)、エリック・ローゼングレン(ボストン連銀総裁)の3氏が「0.25%の利上げ」を求めて反対票を投じた。
2. ウォーシュ議長会見:「現在はデータを見極める状況」
ウォーシュ議長は、3名の地区連銀総裁が即時利上げを求めて反対票を投じたことについて問われた際、「利上げを焦るのではなく、収集したデータを慎重に吟味・検証するプロセスが必要である」と説明し、拙速な決定を避け政策効果を見極める時期であるとの認識を示した。また、タカ・ハト双方の視点が交わされたとみられる委員会内の激論を「良い家族喧嘩」と表現し、活発で建設的な議論が行われるように変化したと自画自賛した。
今回の据え置きが利上げサイクルの終了や単なる一時停止との見方を否定し、「経済状況の厳密な見直しプロセス」と説明して政策の方向性を限定しなかった。しかし、「インフレの高止まりや再燃が続くのであれば、金利(利上げ)が解決策の一部になり得る」とし、必要であればいつでも行動を躊躇しない姿勢を示した。あわせて「5年以上にわたりインフレが目標を超えているが、裏の目標などは存在せず、目標は明確に2%のみ」と語り、物価抑制に向けた強いコミットメントを強調した。
議長は、FRBが政策金利を動かしていないにもかかわらず市場利回りが上昇したことについて、「フォワードガイダンスの減少が一因かもしれないが、市場が生のデータをフィルタなしに反映している証拠であり、良い変化」と市場の自律機能の復活を肯定的に評価した。
さらに、多面的なインフレ要因として、中東情勢に伴う原油高などの供給ショック、トランプ政権による関税の影響、さらにはAIインフラ投資急増に伴う半導体や電力などの構造的需要増を挙げた。その上で、「こうした不確実性の高いショックに対しては、単に金利操作だけを独立して考えるのではなく、バランスシートの流動性管理なども含めた多角的な政策ツールで臨む必要がある」とバランスシートの縮小も含めた政策対応の必要性を強調した。

3. 経済の現状判断:堅調な景気・雇用を背景にインフレ警戒継続
FOMC声明文での景気・インフレ認識の表現は前回から維持された。引き続き景気・雇用の底堅さを背景に、インフレへの警戒感を強めていることが示されている。
景気判断は、「経済活動は、中東紛争に一部起因する高い不確実性があるにもかかわらず、堅調なペースで拡大している。生産性の伸びと設備投資は力強い」と言及。地政学リスクを織り込みつつも、米経済が高いレジリエンスを維持しているとの見方を示した。議長も「経済は目覚ましい回復力を示している。最近のショックがあっても、トレンドは好調で堅調な成長が見られる」と追認した。
雇用情勢について、「雇用の伸びは労働力に見合うペースを維持しており、失業率はほぼ変わっていない」と、労働市場が適度な需給バランスを保ちつつ安定しているとの現状認識が示された。
インフレについて前回と同様「インフレは委員会の2%目標に比べて高止まりしており、エネルギーを含む一部の分野で価格上昇を引き起こしている供給ショックを一部反映している」とした。6月CPIが下振れたものの、単月のデータに過少・過大評価を下さない姿勢を示しており、文言の変更は見送られた。
そのうえで、前回と同様「委員会は物価安定を実現させる」と明確なコミットメントを示した。
4. 記者会見の頻度見直しと対話スタンスの変化
議長は、FOMC後の記者会見を年内は毎会合で行うことを明言したものの、2027年以降に関してはコメントしなかった。ウォーシュ議長が過去に過度なフォワードガイダンスや過剰な市場との対話を批判してきた経緯を勘案すると、2027年以降は主要な政策決定時等に限定し、会見頻度を減少させる可能性がある。これは、過剰なフォワードガイダンスによって市場を誘導・拘束する姿勢を排し、真の「データ依存(データデペンデント)」へと原点回帰する狙いがあるとみられる。
5. 市場の反応:年内追加利上げ織り込みの減退とベア・スティープ化
FRBのタカ派姿勢や3名の即時利上げ支持声明にもかかわらず、今回の会合でのサプライズ利上げが見送られたこと、ならびに議長がデータを見極める姿勢を強調したことで、短期的な利上げ懸念が後退し市場はは安堵感が広がった。
FF金利先物市場における利上げ織り込みの推移は以下の通りである。
9月FOMCでの据え置きの可能性が約37%(前日約24%)に上昇し、25bp以上の利上げの可能性が約63%(同約76%)と低下した。
10月FOMCまでの据え置きの可能性が約27%(同約17%)に上昇し、25bp以上の利上げの可能性が約73%(同約83%)と低下した。
12月FOMCまでの据え置きの可能性が約16%(同約11%)に上昇し、25bp以上の利上げの可能性が約84%(同約89%)と低下した。
市場が織り込む年末のFF金利水準の中央値は3.94%となり、前日の4.01%から低下した。
短期的な利上げリスクが後退したことで米2年国債利回りは低下した。しかし、3名が示したタカ派姿勢や中長期的なインフレ圧力(原油高・関税・AI投資)が意識され、10年国債および30年国債利回りは上昇した。これによりイールドカーブはベア・スティープニング化(長短金利差の拡大)した。為替市場では主要通貨に対してドル売りが優勢となった。主要株価指数は当初安定に推移していたが、長期金利の上昇が嫌気され、軒並み水準を切り下げた。

【参考】6月のドットチャート:2026年は年1回の「利上げ」見通しへ大転換
7月会合では経済・金利見通し(SEP)の改定・公表はない。以下は前回6月時点の数値。6月の経済・金利見通し(SEP)では、2026年内の利下げ予想が一人だけとなった一方、利上げ予想が増加。FRBが明確にタカ派へシフトしたことが浮き彫りとなった。
・議長の予測不提出という異例の対応
ウォーシュ議長は、「不確実な未来の予測を中央銀行が公表することは、かえって市場を混乱させ、FRB自らの首を絞めるだけである」との持論から、自身は今回の経済・金利予測(SEP)の提出を見送った。このため、今回のドットチャートは議長を除く「18人」の参加者によって形成されている。
・インフレ見通しの大幅修正
声明文と同時に公表された26年6月のFOMC参加者の経済・金利予測中央値(10-12月期の予測)によると、26年の実質GDP成長率は前年同期比+2.2%(前回3月:同+2.4%)と下方シフト、27年同+2.3%(同+2.3%)、28年+2.2%(同+2.1%)、長期+2.0%(同+2.0%)と横ばいとなった。
対照的に、インフレに関しては26年PCEデフレーターが前年同期比+3.6%(前回3月:同+2.7%)、PCEコアデフレーターが前年同期比+3.3%(同+2.7%)と大幅に上方シフトした。27年はPCEデフレーターが+2.3%(同+2.2%)と小幅の上方シフトにとどまったが、PCEコアデフレーターは+2.5%(同+2.2%)と下げ渋り予測。2%目標への回帰は2028年末(目標付近に低下)までずれ込むシナリオに後退した。
26年の失業率(10-12月期平均)は、4.3%(3月4.4%)に下方シフトした。27年は4.3%、28年4.2%と横ばいとなり、低い水準で推移するとの見方が維持された。
予測期間を通じて、潜在成長率を上回る経済成長が続き、失業率は低い水準で安定するといった楽観的な見通しとなっている。そのような中で、インフレ率は28年末にFRBの2%目標付近に低下する予想となっている。これらの予測に関して、FOMC参加者は、成長率の下振れリスク、インフレ率や失業率の上昇リスクの他、これらの不確実性が高いとの見方を維持した。

・ドットチャート:利下げから「利上げ」への転換
上述のようなファンダメンタルズの予測のもと、ドットチャート(FFレート誘導目標レンジの中央値、年末)では、26年3.750%(前回3月:3.38%)、27年3.625%(同3.13%)、28年3.375%(同3.13%)と前回から上方シフトした。26年については、前回までの利下げ予想から利上げ予想に転じた。回数(25bp単位)に換算すると、26年の中央値では年内1回の利上げ(前回は1回の利下げ)となった。一方、27年は利下げ1回(1回)。28年は利下げ2回(ゼロ回)と予想された。ただし、FOMC参加者が中立金利と推測する長期(中央値)は、3.125%(同3.125%)と横ばいとなった。
今回のドットチャートでは、議長を除く参加者の過半数(9人)が年内の利上げを支持する形となり、急進的なタカ派シフトが裏付けられた。ただし、会見でも強調された通り、このドットチャートは委員会の確実な「決定事項や固定された計画」ではなく、今後のデータ次第で柔軟に変更されるという原則は維持されている。



桂畑 誠治
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 桂畑 誠治
かつらはた せいじ
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経済調査部 主任エコノミスト
担当: 米国経済
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