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2025.07.23
アジア経済
米中関係
フィリピン経済
トランプ関税
米国とフィリピンが通商合意、相互関税は19%、インドネシアと同水準
~軍事協力も協議されるなど対中けん制へ両国の思惑一致、政局を巡る動きにも要注目~
西濵 徹
- 要旨
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- トランプ米大統領は、訪米中のフィリピン・マルコス大統領との会談で両国間の貿易協定の締結を発表した。米国との通商合意は英国、ベトナム、インドネシアに次ぐ4ヶ国目となった。米国はフィリピンからの輸入品に19%の相互関税を課すが、これはインドネシアと同水準となり、今月書簡で通告された水準から引き下げられた。一方、フィリピンは米国製品への関税をゼロとする不平等な条件を受け入れた格好である。なお、協議が進んだ背景には、マルコス政権が外交政策の方針転換を図り、南シナ海問題を巡って対中強硬姿勢をみせるなかで米国との連携を強化していることも影響している。軍事協力も議題となるなど、対中けん制を巡る両国の思惑が一致した可能性がある。また、同国では5月の中間選挙でマルコス家とドゥテルテ家の対立が激化し、マルコス政権の弱体化が懸念された。しかし、米国との通商合意が政権の浮揚材料となる可能性もあり、今後の同国の政局の行方は南シナ海を巡る動きにも影響を与えるなど要注目である。
トランプ米大統領は22日、訪米しているフィリピンのマルコス大統領と会談を行い、両国による貿易協定を締結したことを発表した。また、会談直後には自身のSNSに貿易交渉で合意に達したことを明らかにしており、今回の通商合意は英国、ベトナム、インドネシアに次ぐ4ヶ国目となる。トランプ氏の発表に拠れば、米国は同国からのすべての輸入品に19%の相互関税を課すとしており、今月15日に明らかにされたインドネシアと同水準となる(注1)。なお、同国に対する相互関税を巡っては、4月に発表された際は17%とASEAN(東南アジア諸国連合)主要国のなかで最も低い水準とされた。他方、今月9日に米国が同国に送付した書簡では税率が20%と3pt引き上げられ、今月初めに米国と通商合意に至ったベトナムと同水準とされたため(注2)、この水準を基本に協議を進めることが予想された。しかし、上述したように合意では19%と1pt引き下げられており、米国との交渉を経て一定の譲歩を得ることに成功したと捉えられる。これは、米国の同国に対する貿易赤字額が▲48.8億ドル(2024年)と他のASEAN諸国と比較して小規模に留まることも影響している可能性がある。

その一方、フィリピンは米国からの輸入品に対する関税をゼロとするなど、ベトナムやインドネシアと同様に『不平等』な内容を受け入れざるを得なかったなど、一連の協議を通じて米国の優位性があらためて確認された格好である。ただし、ベトナムやインドネシアとの通商合意では、中国による『迂回輸出』を念頭に第三国から当該国を経由した輸出に高関税を課す旨が示されていたものの、フィリピンとの合意ではそうした内容は触れられていない。これは、同国においても近年は中国からの輸入が拡大する動きが確認されているものの、対米輸出との明確な相関が見出しにくく、中国から同国を経由した迂回輸出が確認されていないことが影響した可能性がある。さらに、同国ではマルコス現政権の下、ドゥテルテ前政権時代の外交政策からの『転換』に動いており、なかでも中国と対立する南シナ海問題を巡って強硬姿勢をみせるなかで米国との関係強化に動く方針を明確にしてきた。こうした事情も米国との通商協議を後押しした可能性があるほか、トランプ氏も首脳会談において両国の軍事的連携の強化を明らかにしている。なお、軍事的連携強化の内容について詳細は明らかにされていないものの、今回の合意を通じて米比両国は中国への『けん制』の動きを強めたいとの思惑が一致した可能性も考えられる。フィリピンに対する相互関税が元々低水準に設定されていたことを勘案すれば、協議そのもののハードルは決して高くなかったと捉えられるものの、今回の合意は他のアジア諸国との協議に影響を及ぼす可能性がある。また、5月に実施された中間選挙はマルコス家とドゥテルテ家の『代理戦争』の様相を呈したが、ドゥテルテ家が存在感を示すなどマルコス政権にとっては『死に体』と化すリスクが高まっている。しかし、米国との通商合意を通じて復調の兆しをみせる可能性があり、今後もフィリピン国内の政局の動向は南シナ海問題の行方にも影響を与えるなど注意を払う必要性は高い。

注1 7月16日付レポート「インドネシアが通商協議を加速、EUや米国と合意に至った模様」
注2 7月3日付レポート「ベトナムが米国との通商協議で合意」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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