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2026.05.01
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USTRがベトナムを知的財産権の保護に関する「優先外国」に指定
~米国との通商、外交関係が指定に影響している可能性も~
西濵 徹
- 要旨
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米通商代表部(USTR)は4月30日、ベトナムを通商法スペシャル301条に基づく知的財産上の最大懸念国「優先外国」に指定した。同指定は2014年のウクライナ以来13年ぶりで、主な理由はオンライン上の著作権侵害への対応不足である。今後30日以内に301条調査の開始可否を判断し、追加関税などの対抗措置が発動される可能性がある。ベトナムは米中摩擦を背景に対米輸出を拡大させている。今回の指定は知的財産問題を名目としているものの、拡大する貿易不均衡への対応を迫る狙いがある可能性も考えられる。
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今回の報告書では「優先監視リスト」に中国、インド、インドネシア、ロシアを含む6か国を指定した。これらBRICS加盟国が並ぶ構成は、トランプ政権のBRICSへの強硬姿勢を反映しているとみられる。また「監視リスト」には19ヶ国・地域が指定され、EUは2006年以来の指定となった。トランプ政権との対立関係が各国の選定に影響した可能性があり、今後も米国との外交、通商関係が報告書の内容に影響を与える点に注意が必要である。
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【USTRがベトナムを知的財産に関する最大の懸念国に指定】
米通商代表部(USTR)は4月30日、知的財産権に関する年次報告書を公表し、ベトナムを知的財産に関する最大の懸念国である「優先外国」に指定したと明らかにした。USTRは、米通商法の「スペシャル301条(著作権、特許、商標など知的財産権に関する保護条項)」に基づいて毎年4月末に報告書を公表している。USTRが優先外国を指定するのは、2014年の報告書においてウクライナを指定して以来であり、13年ぶりとなる。これは、適切かつ効果的に知的財産権の保護を提供すべく、対象国が誠実な交渉を行っていない、ないし、交渉において著しい進展が見られないことを意味する。今回の指定についてUSTRは、知的財産権の保護などを巡る長年の課題にベトナムが対応できていないとしており、なかでもオンライン上の著作権侵害への対応を十分に実施していないことを理由に挙げている。今後は、USTRが米通商法301条に基づく調査を開始するか否かを30日以内に判断するとしており、その結果次第では追加関税などの対抗措置が取られる可能性もある。
ベトナムを巡ってはここ数年、米中摩擦が激化するなかで世界的なサプライチェーンの見直しの動きを追い風に対内直接投資の受け入れを活発化させるとともに、中国に代わる輸出拠点としての位置づけを強めてきた。さらに、中国による迂回貿易の動きも拡大し、対米輸出を大幅に増やしており、米中摩擦の「漁夫の利」を最も受けた国のひとつとされる。一方、同国は米国にとって巨額の貿易赤字相手国であることから、トランプ米政権は関税政策の標的とする動きが続いてきた。しかし、同国は2025年7月に英国に次ぐ形で米国との通商合意に至り、その後も対米輸出は活発化したため、2025年の対米貿易黒字額は1,339億ドルと前年(1,044億ドル)から拡大した(図1)。そのうえ、2月の米連邦最高裁判所による違憲判決を受けてトランプ関税は実質的に引き下げられており、同国にとって対米輸出のハードルは一段と低下している。今回の決定は知的財産権に関する問題を理由としているものの、ベトナムが対米貿易黒字を拡大させるなかで何らかの対応を求めている可能性が考えられる。

【トランプ米政権との関係が監視リストの選定などに影響している可能性】
今回の報告書では、優先外国に次ぐ「優先監視リスト」に6ヶ国(チリ、中国、インド、インドネシア、ロシア、ベネズエラ)を指定しており、今後1年間かけて各国と集中的に協議を行うとしている。優先監視リストには、いわゆる「新興国の雄」であるBRICSに加盟する中国、インド、インドネシア、ロシアが挙げられており、トランプ米政権がBRICSに対して強硬な姿勢を示してきたことと無関係ではないと考えられる。
2025年の報告書では、アルゼンチンとメキシコが優先監視リストに含まれていたものの、知的財産権に関する改善が見られたことを理由に今回は除外(監視リストに格下げ)された。「監視リスト」には19ヶ国・地域(アルジェリア、アルゼンチン、バルバドス、ベラルーシ、ボリビア、ブラジル、カナダ、コロンビア、エクアドル、エジプト、欧州連合(EU)、グアテマラ、メキシコ、パキスタン、パラグアイ、ペルー、タイ、トリニダード・トバゴ、トルコ)を指定している。EUが監視リストに加えられるのは2006年報告書以来であり、トランプ米政権による政策運営を巡って度々対立する動きが見られたことも影響している可能性がある。
トランプ米政権は通商政策のほか、外交政策面でも強硬姿勢を強める動きをみせているが、今後も米国との関係の在り方が影響を与える可能性には注意が必要と考えられる。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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