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OPECプラス有志8ヶ国は8月も大幅増産、自主減産枠の約9割縮小へ

~先行きは過剰供給への懸念もくすぶるなか、国際原油価格は上値の重い展開が続く可能性も~

西濵 徹

要旨
  • 主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志8ヶ国は、5日のオンライン会合において、今年4月から進めている自主減産の段階的縮小を8月も加速することで合意した。元々は18ヶ月かけて日量220万バレルの自主減産枠を縮小する計画だったが、今回の決定によりそのスケジュールは一段と前倒しされることとなり、8月までの5ヶ月で約9割が縮小される見通しとなっている。
  • 決定の背景には、減産の長期化でOPECプラスの市場シェアの低下に対する警戒感がある。今回の決定を巡っては、安定した世界経済の情勢や低水準の在庫を根拠に挙げている。一方、米トランプ政権の関税政策や中東の地政学リスクを背景に、国際原油価格は一時上昇したが、イスラエルとイランの停戦合意により市場は落ち着きを取り戻している。しかし、先行きには依然として不透明感が残っており、減産縮小の前倒しによる過剰供給への懸念も重なり、国際原油価格は上値の重い展開が続く可能性がある。

主要産油国の枠組みであるOPECプラスの有志8ヶ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、アラブ首長国連邦、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、5日に開催したオンライン会合において、今年4月から実施している自主減産枠の段階的な縮小を8月もさらに進めることで合意した。なお、有志8ヶ国は今年4月から18ヶ月かけて自主減産枠(日量220万バレル)を段階的に縮小する方針を示したものの、過去3ヶ月はスケジュールを前倒しさせており、今月時点ではすでに6割強が縮小されている(注1)。今回の決定では、有志8ヶ国による8月の自主減産枠の縮小幅は54.8万バレルと7月(41.1万バレル)から一段と拡大しており、結果として5ヶ月で191.9万バレルと自主減産枠の9割弱が縮小されるなど大きく前倒しされることになる。

このところの世界経済や国際金融市場は、米トランプ政権の関税政策に翻弄される展開が続いている。さらに、先月にはイスラエルによるイランへの攻撃をきっかけに、双方が報復合戦の様相をみせるとともに、米国がイランの核施設への爆撃に動いたこともあり、中東情勢の緊迫化が懸念された。また、こうした事態を受けて、イランは『伝家の宝刀』であるホルムズ海峡封鎖の可能性に言及したことにより、世界的な原油の需給ひっ迫が意識された国際原油価格が大きく上振れする事態に発展した(注2)。しかし、その後は米国の提案とカタールの仲介により、イスラエルとイランが停戦に合意し、双方が勝利宣言を行うことで矛を収める様子が確認されたことで、事態は沈静化に向かっている様子がうかがえる。事態がこのまま収束に向かうか否かについては不透明なところが少なくないものの、国際原油価格の上振れの動きは一巡するなど落ち着きを取り戻している。

図表
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なお、有志8ヶ国が一転して自主減産縮小による事実上の増産に動いた背景には、協調減産や自主減産の長期化を受けて、世界の産油量に占めるOPECプラスの割合が低下するなど、存在感の低下が顕著になるなか、市場シェアの確保に重点をシフトさせていることがある。今回の増産ペースの加速決定について、有志8ヶ国は安定した世界経済の見通しに加え、原油在庫が低水準に留まるなど、健全な市場のファンダメンタルズを理由に挙げている。他方、先行きについては米トランプ政権の関税政策など世界貿易を取り巻く不透明感が根強く、その結果として原油需給が緩むことも懸念されるなかでの供給拡大により、供給過剰が引き起こされることも考えられる。よって、先行きの国際原油価格は引き続き上値の重い展開が続く可能性が高まっていると考えられる。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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