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ブラジル・ルラ大統領の再選に「黄信号」か、不支持率が急上昇

~次期大統領選挙まで残り1年半、内政・外交両面で難しい舵取りを迫られる局面が続く~

西濵 徹

要旨
  • ブラジルでは来年10月に次期大統領選が予定されており、現職のルラ氏は再選を目指している。しかし、最新の世論調査で支持率は一段と低下し、不支持率は過去最高を更新している。昨年の同国経済は+3.4%と3年ぶりの高成長となったが、財政悪化やレアル安に加え、インフレも再燃している。政権は所得税減税などに動いたが、物価高でその効果が薄れるなかで支持率低下に歯止めが掛からない状況が続く。

  • ブラジルは米中摩擦の背後で中国向け輸出が急拡大するなど、中国景気の影響を受けやすい。一方、鉄鋼やアルミなどの大宗は米国向けであり、米トランプ政権の相互関税の動向が注目された。相互関税率は10%に留まり、経済への影響は軽微と予想されるが、対抗措置を辞さない姿勢を示す。中国やBRICSとの連携強化が見込まれるが、大統領選へ1年半となるなかで内政・外交両面で難しい舵取りが迫られよう。

ブラジルでは、来年10月4日に次期大統領選挙(第1回投票)が予定されており、残すところ1年半となっている。現職のルラ大統領は次期大統領選での再選を目指しており、仮に当選を果たせば歴代最長となる4期目の大統領任期を迎える。しかし、このところはその雲行きが急速に怪しさを増している。2日に公表された最新の世論調査において、ルラ政権の不支持率は56%と1月の前回調査時点(49%)から+7pt上昇し、ルラ政権下で最も高い水準となっている。支持率も41%と前回(47%)から▲6pt低下して最低水準を更新している。さらに、次期大統領選を巡る世論調査においても、決選投票に持ち込まれるとともに、決選投票では僅差の勝利、ないし敗北となる可能性が示されるなど、厳しい選挙戦となることは必至の情勢である。

昨年のブラジルの経済成長率は+3.4%と3年ぶりの水準に加速した(注1)。しかし、ばらまき志向を強めるルラ政権下での財政悪化を理由に通貨レアル安が進行し、年後半にかけてインフレが再燃した。結果、中銀は物価と為替の安定を目的に再度の利上げを余儀なくされた。年明け以降は米ドル高の動きに一服感が出てレアル相場は落ち着きを取り戻しているものの、インフレ高進が続いており、中銀は先月の定例会合において5会合連続の利上げ、かつ大幅利上げに動いている(注2)。結果、足元においては物価高と金利高が再び共存するなど、経済成長のけん引役となってきた個人消費をはじめとする内需を取り巻く環境は厳しさを増している。

図表
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ルラ政権は『史上最大の所得改革』として、大統領選挙で公約に掲げた所得税の課税最低限の大幅引き上げによる所得税減税のほか(注3)、その後も食料インフレ対策を目的とする輸入減税など、次期大統領選挙を念頭にした動きを活発化させている。こうした対応にもかかわらず、足元の物価は上昇基調が続いている上、物価高によって所得税減税の効果が減じられるなかで政権支持率の浮揚に繋がっていない。さらに、所得税減税の公表直後にレアルの対ドル相場が最安値を更新するなど、金融市場ではルラ政権下で悪化している財政状況が一段と厳しい状況に追い込まれることが警戒された。足元では米ドル高の動きに一服感が出ていることも追い風に、レアル相場は底打ちに転じるなど状況は変化している。しかし、中銀の断続利上げも影響して長期金利は高止まりしており、幅広い経済活動の足かせとなる懸念はくすぶる。そして、政権支持率の低下はルラ氏の強力な支持基盤である同国北東部においても顕著になっており、その点でも政権に対する風向きは急速に悪化している様子がうかがえる。

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近年のブラジル経済を巡っては、米中摩擦の激化を追い風に対中輸出が急拡大しており、中国が最大の輸出相手となるなど中国の景気動向の影響を受けやすい特徴を有する。一方、同国は鉄鋼やアルミの大宗を米国に輸出しており、米トランプ政権による相互関税が同国の対米輸出に如何なる影響を与えるかが注目された。トランプ政権は米国にとって数少ない貿易黒字である同国に対して、非関税障壁を加味したベースの平均関税率は10%とWTOベース(11.2%)より低いと評価し、すべての国に一律で課す税率(10%)に留めている。結果、相互関税による直接的な影響は名目GDP比0.2%弱に留まり、アジアをはじめとする多くの新興国が高関税に直面して一部に深刻な悪影響が懸念されるなか、相対的に影響は軽微に留まると見込まれる。よって、年明け以降の米ドル高一服を受けて底入れしたレアル相場は足元においても底堅い動きを続ける一因になっているとみられる。一方、ルラ政権はWTOへの提訴を含む対抗措置に動く方針をみせており、今後も中国との関係深化が一段と進むほか、今年同国が議長国を務めるBRICSの求心力向上に向けた取り組みを強化していくことも予想される。ルラ氏、及びルラ政権にとっては次期大統領選まで残り1年半を切るなか、内政、外交両面で難しい政権運営の舵取りを迫られる展開が続くであろう。

図表
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以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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