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2025.03.12
新興国経済
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ブラジル24年成長率は+3.4%に加速も、足下の景気にブレーキ
~先行きは「トランプ2.0」の脅威に内需にも不透明要因山積、今年の成長率は+1.9%に留まると予想~
西濵 徹
- 要旨
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- ここ数年のブラジル経済を巡っては、物価高と金利高の共存が内需の重石になり、中国の景気減速が外需の足かせとなるなかで景気は力強さを欠く推移が続いた。しかし、一昨年以降は高止まりしたインフレが鈍化するとともに、中銀も利下げに動くなど内需を巡る環境改善が期待された。結果、個人消費は底入れするとともに、企業部門の設備投資も拡大するなど内需をけん引役に景気は底入れの動きを強める様子が確認された。他方、ルラ政権下で財政状況は悪化し、経常赤字も拡大するなど経済のファンダメンタルズの脆弱さが増すなか、レアル相場は調整に転じ、インフレも加速するなか、中銀は再び利上げに舵を切っている。
- 昨年前半はインフレ鈍化や利下げが内需の追い風となる動きがみられたが、年後半にかけてこうした環境は一変し、10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+0.69%と内・外需双方で鈍化が確認されている。さらに、生産動向もすべての分野で力強さを欠くなど厳しい状況に直面している。昨年の経済成長率は+3.4%と3年ぶりの高水準に加速したが、年末にかけての景気にブレーキが掛かっている。また、米トランプ政権の通商政策を巡る不透明感がレアル相場の重石となるなど、先行きの外需は一層困難に直面する可能性もある。インフレと中銀のタカ派姿勢も内需の足かせとなる展開が続くと見込まれることから、当研究所は今年の経済成長率が+1.9%に鈍化すると予想する。
ブラジル経済を巡っては、ここ数年は物価高と金利高の共存が個人消費をはじめとする内需の重石になるとともに、近年関係を深化させてきた中国経済に不透明感が高まるなかで商品市況が調整の動きを強めていることも重なる形で外需も勢いを欠く展開が続いてきた。結果、ここ数年のブラジルの経済成長率はアジアをはじめとする他の新興国と比較して見劣り感が否めない展開をみせてきた。
しかし、物価高を招いた商品高の動きが一巡したため、2022年半ばにインフレは一時20年ぶりの水準となった後頭打ちに転じる動きをみせるも、インフレは中銀目標を大きく上回る推移が続いたため、中銀はその後も引き締め姿勢を堅持した。他方、実質金利(政策金利-インフレ)のプラス幅が拡大するなど投資妙味が向上したことで資金流入が活発化したため(図1)、国際金融市場において米ドル高圧力が高まるなかでも通貨レアル相場は堅調な推移をみせた。よって、その後もインフレは中銀目標に収束する動きをみせたため、中銀は一昨年後半から断続利下げに動くなど景気下支えにかじを切った。なお、中銀が断続利下げに動いた背景には、一昨年初めに就任したルラ大統領が早期の景気回復を目指し中銀に利下げを要求するなど『圧力』を強めたことも影響している(注1)。

その結果、昨年の同国においてはインフレ鈍化による実質購買力の押し上げや雇用改善に加え、中銀による断続利下げも追い風に個人消費が活発化する動きが確認されるとともに、企業部門による設備投資の動きも活発化して固定資本投資も拡大ペースを強めるなど、内需をけん引役とする景気底入れの動きが確認された。他方、右派・ボルソナロ前政権下の2022年にはプライマリーバランスが黒字化するなどコロナ禍を経て悪化した財政状況は改善するも、左派・ルラ政権のバラ撒き志向の強い財政運営を受けて再び赤字基調に転じるとともに、商品市況の低迷による輸出鈍化も相俟って経常赤字も拡大するなど『双子の赤字』の動きが強まった。こうしたことから、実質金利は比較的高水準で推移するも、国際金融市場での米ドル高を受けてレアル相場は一転して調整したほか(注2)、上述のように内需をけん引役にした景気底入れの動きも重なり昨年後半のインフレは加速するとともに、足下では中銀目標を上回る水準で推移している(図2)。よって、中銀は昨年9月に利上げに舵を切るとともに、今年1月の定例会合でも4会合連続の利上げに加え、2会合連続で100bpの大幅利上げに動くなど『タカ派』姿勢を強めている(注3)。

このように、昨年前半はインフレ鈍化や利下げという景気下支えに繋がる動きがみられたものの、年後半にかけてはインフレ再燃に加え、中銀も断続利上げに動くなど景気に逆風が吹く事態に直面している。こうした状況を反映して、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+0.69%とプラス成長で推移するも、前期(同+3.02%)から鈍化して5四半期ぶりの低い伸びに留まるとともに(図3)、中期的な基調を示す前年同期比ベースの伸びも+3.6%と前期(同+4.0%)から鈍化するなど頭打ちしている様子がうかがえる。昨年末にかけての多くの新興国では、中国による景気下支えや米トランプ政権の発足を前にした駆け込みが輸出を押し上げる動きがみられたものの、ブラジルの輸出は減少傾向で推移しており、左派政権の同国と米国との関係悪化に対する懸念が引き続き外需の足を引っ張っている。また、インフレ高進による実質購買力の下押しや利上げに伴う債務負担の増大も重なる形で個人消費も減少するとともに、企業部門による設備投資も鈍化するなど、昨年前半の景気をけん引した内需が幅広く鈍化していることが景気の足を引っ張っている。さらに、在庫投資と不突合による成長率寄与度がプラスに転じるなど在庫が積み上がる動きが確認されていることに鑑みれば、景気の実態は数字以上に厳しい状況にあると捉えることができる。

さらに、分野ごとの生産動向についても、大雨による大洪水など異常気象の影響が尾を引く形で農林漁業関連の生産は減少傾向が続いているほか、外需の低迷が続くとともに、内需も頭打ちの様相を強めるなかで製造業や鉱業部門の生産も鈍化している上、サービス業の生産も頭打ちの動きを強めるなど、幅広い分野で生産が低迷する動きが確認されている。昨年後半以降のインフレを巡っては、農林漁業関連の生産減に伴う供給低迷を受けて食料など生活必需品を中心に物価上昇圧力が強まっていることも影響しているが、足下においてもそうした影響が長引いている様子がうかがえるなど、先行きについてもこうした動きが続く可能性に留意する必要がある。他方、昨年末にかけての米ドル高の再燃を受けてレアル相場は一段と調整の動きを強めるも、年明け以降のレアル相場は米ドル高の一服を受けて底打ちする動きがみられたものの、足下においては米トランプ政権の通商政策を巡る不透明感の高まりを理由にそうした流れに変化の兆しがうかがえる(図4)。ブラジルは米国にとって数少ない貿易黒字国ではあるものの、「トランプ2.0」においては『例外なし』の対応をみせるとともに、相互関税の賦課も辞さない考えをみせるなかで、ブラジルは平均関税率が比較的高いことを理由に『標的』とされるとともに、外需の足かせとなる可能性も考えられる。

結果、昨年通年の経済成長率は+3.4%と前年(+3.2%)から加速して、コロナ禍の影響一巡直後の2021年(+4.8%)以来3年ぶりの高い伸びとなっているものの、昨年末にかけてはそのけん引役となってきた内需が総じて頭打ちするなど景気にブレーキが掛かる動きが確認されている。さらに、先行きについても米トランプ政権の通商政策の行方に加え、近年関係が深化する中国経済にも不透明感がくすぶるなかで外需を頼みにした景気拡大への期待は乏しい状況が見込まれる。また、内需についても粘着性の高いインフレが続くとともに、中銀もタカ派姿勢を続ける可能性が高まっていることに鑑みれば、力強さを欠く推移をみせることが懸念される。なお、今年の経済成長率のゲタは+0.8ptと昨年(+0.5pt)からわずかにプラス幅が拡大していると試算されるものの(図5)、上述したように内・外需双方に懸念要因が山積していることに鑑みれば、力強さを欠く推移となることは避けられない。こうした事情を反映して、当研究所は今年の経済成長率は+1.9%に留まると予想する。

注1 2023年2月9日付レポート「ブラジル・ルラ大統領はいよいよ「エルドアン化」するか!?」
注2 2024年4月3日付レポート「ブラジル中銀がルラ政権下で初の為替介入、レアル相場の潮目は変わったか」
注3 1月30日付レポート「ブラジル中銀、ガリポロ体制下の初会合も大幅利上げで「タカ派」堅持」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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