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強含みする豪ドル、追加利上げ観測が引き続き堅調さを促すか

~RBAの「タカ派」姿勢の後押し材料は多く、ワーホリ規制の動きが影響する可能性も~

西濵 徹

要旨
  • 豪ドル相場は、日本と米国による協調介入や米国のバイバック倍増表明を受けた米ドル安に加え、RBAの「タカ派」姿勢を背景に強含んでいる。RBAは8月会合で政策金利を2会合連続で据え置いたものの、ブロック総裁はインフレの上振れリスクを警戒し、必要に応じて追加利上げに動く可能性を示した。8月会合の議事要旨でも利上げの是非が議論され、一部委員が追加利上げの必要性に言及するなど、先行きの金融引き締め観測がくすぶる。
  • 7月のインフレ率は前年比+3.5%と鈍化したものの、13ヵ月連続でRBAの目標レンジ(2~3%)を上回った。コアインフレ率も同+3.6%と高止まりしており、前月比では上昇ペースが加速するなど、基調的なインフレ圧力の根強さが確認された。原油高によるエネルギー価格や食料品価格の上昇も重なり、生活必需品を中心に物価上昇圧力が続いている。
  • 先行きも、イラン情勢の長期化による原油高に加え、エルニーニョ現象による異常気象が農作物生産を下押しする可能性がある。さらに、ワーキングホリデービザを巡る制約強化による農業部門の労働需給ひっ迫も、物価上昇圧力を増幅させる懸念がある。このため、RBAによる追加利上げが意識されやすく、豪ドル相場は当面、堅調に推移する可能性が高い。

このところの金融市場では、豪ドルが強含みする展開が続いている。日本と米国による協調介入に加え、米国によるバイバック(長期国債の買い入れ消却)の倍増表明を受け、その後の米ドル指数が軟調な動きを強めたことも追い風に、足元の豪ドル相場は2ヵ月半ぶりの高値圏で推移している。日本円に対しても、協調介入を受けて大幅に調整する動きがみられたものの、足元では協調介入前の水準をうかがうまでに戻すなど、急速に持ち直す動きがみられる(図1)。背景には、RBA(オーストラリア準備銀行)が依然として「タカ派」姿勢を維持していることがある。RBAは8月会合で政策金利を2会合連続で据え置いたものの、会合後の記者会見において、ブロック総裁はインフレの上振れリスクを警戒し、必要に応じて追加利上げに動く可能性に言及した(注1)。さらに、RBAによる断続的な利上げ実施に加え、不動産価格抑制を目的とする政府の税制改革の影響も重なり、足元の不動産価格は下落基調に転じるなど変化の兆しがみられる。こうした状況について、ブロック氏は政策運営の主眼ではないうえ、金融安定に対するリスクとはならないと述べた。

図表
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その後の金融市場では、RBAによる追加利上げが意識されるとともに、豪ドル相場が強含みする動きをみせている。8月25日に公表された8月会合の議事要旨によれば、会合では利上げの是非が議論され、数人の委員がインフレの上振れリスクを勘案して追加利上げが必要になる可能性に言及した。一方で、他の委員は、過去の利上げが効果をあげており、経済動向を見極めるべく「ある程度の時間」を割く余裕があると判断した。そして、利上げの是非を協議した結果、全会一致で金利据え置きを決定する一方、インフレ率を妥当な期間のうちに目標レンジ(2~3%)に収束させることへの確信を強める追加情報が今後の判断に有用との認識で一致した。なお、2024年の中銀法改正により、RBAの金融政策は、物価安定と完全雇用の維持という「デュアルマンデート」に基づいて運営されている。このため、市場では物価統計と雇用統計の動きが注目される。7月の雇用統計は想定外に弱含む動きが確認されたものの(注2)、月次の雇用統計は変動が大きいうえ、今回も過去の数値が遡及改定されており、単月の結果には幅を持ってみる必要がある。

こうしたなか、7月のインフレ率は前年同月比+3.5%と前月(同+3.8%)から鈍化したものの、13ヵ月連続で目標レンジを上回る伸びで推移していることが確認された(図2)。前月比は+1.02%と前月(同▲0.06%)から3ヵ月ぶりの上昇に転じ、原油高の再燃によるエネルギー価格の上昇のほか、生鮮品をはじめとする食料品価格も上昇しており、生活必需品を中心にインフレ圧力が強まっている。コアインフレ率(トリム平均ベース)は前年同月比+3.6%と前月(同+3.6%)から2ヵ月連続の横ばいで、10ヵ月連続で目標レンジを上回る伸びで推移している。前月比も+0.49%と前月(同+0.28%)から上昇ペースが加速しており、財・サービスとも、さらに財価格も貿易財・非貿易財ともに上昇圧力がかかっている。なお、月次の物価統計のうちRBAが比較的注視してきた物価変動の大きい財と観光を除いたベースは前年同月比+3.8%と、前月(同+4.2%)から鈍化して7ヵ月ぶりの低い伸びとなった。ただし、前月比は+0.79%と前月(同+0.02%)から上昇ペースが加速しており、インフレ圧力の根強さがうかがえる。

図表
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コアインフレの高止まりが確認されたことを受けて、RBAが懸念するインフレリスクの高さが警戒される。さらに、足元ではイラン情勢の長期化による原油高が長引くなど、エネルギーインフレが続くことが懸念される。加えて、エルニーニョ現象の発生を受けて、東部・北部では高温・乾燥による少雨、南部では高温となる可能性が高く、主力作物である小麦・大麦・菜種などの生産に悪影響が出ることも考えられる。折しも、ワーキングホリデービザの発給を巡る制約が強まるなか、こうした労働力への依存度が高い農業部門では、労働需給のひっ迫が生産の制約要因となるほか、物価上昇圧力を増幅させる可能性もある。このため、先行きもRBAによる追加利上げが意識されやすく、豪ドル相場は堅調な動きをみせることが考えられる。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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