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2026.08.27
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ウォン高を後押しする韓国中銀のタカ派傾斜、2会合連続の利上げ決定
~ドットプロットは追加1回利上げが最多、当面は様子見も、物価・為替の安定へタカ派維持か~
西濵 徹
- 要旨
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韓国銀行(中銀)は8月27日の定例会合で、政策金利を25bp引き上げて3.00%とし、2会合連続の利上げを決定した。背景には、イラン情勢を受けた原油高やウォン安の影響でインフレ圧力が根強いことに加え、ソウルを中心とする住宅価格の上昇や家計債務の拡大など金融安定上のリスクが高まっていることがある。4月に就任した申鉉松総裁の下で中銀はタカ派姿勢を強めており、7月に3年半ぶりの利上げに転じた後、追加利上げ観測がウォン相場を押し上げてきた。米ドル安も追い風となり、足元のウォン相場は対米ドルで11ヵ月ぶり、対日本円では2年1ヵ月ぶりの高値圏にある。
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今回の利上げは6対1で決まり、中銀は力強い輸出や内需回復を背景に景気が想定を上回る一方、インフレ率が相当期間にわたり目標を上回るとして、先制的な引き締めが必要と判断した。2026年の成長率見通しを+3.3%、2027年を+2.9%へ大幅に上方修正した。またインフレ率はそれぞれ+2.7%、+2.3%と据え置く一方、コアインフレ見通しは上方修正した。住宅価格や家計債務の増加にも警戒を示し、今後もインフレ、景気、金融安定の状況を見極めながら追加利上げのタイミングとペースを判断する方針を示した。
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最新のドットプロットでは、2027年2月時点で3.25%を予想する回答が最多となり、追加1回の利上げが中心シナリオとなっている。申総裁も、インフレ圧力が続くなかで今回の連続利上げは先手を打った対応だったと説明した一方、利上げ効果を検証するため当面休止する可能性にも言及した。また、ウォン高が輸入物価の抑制につながるとして、さらなるウォン上昇余地にも期待を示している。中銀は短期的には様子見姿勢に転じる可能性があるものの、物価と為替、金融安定を重視する観点から、タカ派姿勢を維持する公算が大きい。
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- 目次
【ウォン高を後押しする韓国中銀、8月会合も2会合連続で利上げ決定】
このところの金融市場では、韓国の通貨ウォンが強含みする展開が続いている。背景には、4月に韓国銀行(中銀)の総裁に申鉉松(シン・ヒョンソン)氏が就任したことがある。申氏は、過剰レバレッジに関する論文を多数執筆しており、過去には世界金融危機の発端となったリーマン・ブラザーズの破綻を予測したことで知られる。同国ではここ数年、首都ソウルを中心とする不動産価格の急騰が社会問題化している(図1)。その背後では、家計債務のGDP比がアジア太平洋諸国のなかでも高水準にあり、過剰債務が金融リスクを招く懸念も高まっている。加えて、イラン情勢の悪化を受けた原油高をきっかけにインフレ圧力も強まっている。

申氏の総裁就任後初の定例会合(5月会合)では、政策金利を据え置いたものの、同時に公表したドットチャートでは、政策委員が利上げを志向するなど「タカ派」に傾斜している様子が確認された。そして、7月会合で3年半ぶりの利上げに舵を切るとともに、会合後の記者会見で申氏は、景気の堅調さを踏まえて追加利上げに動く可能性を示唆した。その結果、ウォン相場は追加利上げ観測を反映して持ち直しの動きを強めた。さらに、日本と米国による協調介入に加え、米国によるバイバック(長期国債の買い入れ消却)の倍増表明を受け、その後の米ドル指数が軟調な動きを強めたことも追い風に、足元のウォン相場は11ヵ月ぶりの高値圏で推移している。日本円に対しても、金融政策の方向感の違いを理由に2年1ヵ月ぶりの高値となっている(図2)。

原油高を受けてインフレ率は一時目標(2%)を上回る伸びに加速し、7月は原油高の一服も追い風に鈍化したものの、前年比+2.79%と目標を上回る推移が続く(図3)。コアインフレ率も前年比+2.6%と加速して2023年12月以来の高い伸びとなるなど、価格転嫁の動きに加え、6月まで進行したウォン安による輸入インフレの影響が広がっている。さらに、8月21日付で政策委員のうち最も「タカ派」と目された柳相大(ユ・サンデ)氏に代わり、上級副総裁に権民秀(クォン・ミンス)氏が就任し、政策委員のスタンスがどのようになるかも注目された(注1)。こうしたなか、中銀は8月27日に開催した定例会合において、政策金利を25bp引き上げ、3.00%とすることを決定した。中銀の利上げは2会合連続であるうえ、政策金利の水準も2025年1月以来の水準となる。

【票割れも2会合連続の利上げ決定、追加利上げに含みを持たせる姿勢も】
会合後に公表した声明文では、今回の決定は「6(25bpの利上げ)対1(据え置き)」で票が割れ、外部委員の黄建日(ファン・グニル)氏が反対票を投じたことが明らかになった。そのうえで、今回の決定について「力強い輸出や内需の回復を追い風に景気は想定を上回る推移をみせるなか、物価はかなりの期間にわたって目標を上回る見通しである」、「先制的な行動を通じてインフレ圧力が広がることを防ぐことが重要であり、金融安定上のリスクを注視する必要がある」として、「利上げ実施が適切と判断した」とした。
世界経済について「イラン情勢の緊迫化にもかかわらず、堅調なAI(人工知能)・半導体関連投資をけん引役に緩やかな成長が見込まれ、エネルギー価格の上昇によるインフレの高止まりが続く」との見通しを示した。国際金融市場について「主要国の財政健全性への懸念が高まり、長期金利が上昇し、米ドル指数は調整した」、「FRB(米連邦準備制度理事会)の政策運営やイラン情勢を巡る不透明感に揺さぶられている」との認識を示した。そして、先行きは「イラン情勢やAI・半導体関連投資の行方、主要国の金融・財政政策や貿易環境の影響を受ける」との見通しを示した。
一方で、同国経済は「輸出と投資をけん引役に力強い景気が続いている」ほか、先行きも「半導体関連の輸出と投資の力強い動きが高成長を後押しするとともに、内需を下支えすることで堅調な成長が続くと予想される」とした。そして、「2026年の経済成長率は+3.3%、2027年は+2.9%になる」と5月時点の予想(2026年は+2.6%、2027年は+2.1%)を大きく上回るとした。ただし、その行方については「半導体セクターの動向や内需への波及の行方、イラン情勢、貿易環境の変化など不確実性が存在する」との見方を示した。
物価については「足元では原油や食料品の上昇一服を受けて伸びが鈍化している」ものの、「コアインフレは加速している」とした。先行きは「コスト上昇圧力の継続に加え、所得環境の改善による需要インフレの高まりが予想され、かなりの期間にわたって目標レンジを上回ると見込まれる」とした。インフレ見通しは「2026年は+2.7%、2027年は+2.3%」と5月会合時点の見通しを据え置く一方、コアインフレ見通しは「2026年は+2.5%、2027年も+2.5%」と5月会合時点の見通し(2026年は+2.4%、2027年は+2.3%)をともに上回るとした。そして、その行方は「原油価格やウォン相場、内需の回復動向、賃金上昇の行方など高い不確実性に左右される」とした。
金融市場について「ボラティリティの高い状況が続いている」としつつ、「外国人投資家による資金流出圧力の後退と米ドル安を追い風にウォン相場は大幅に持ち直している」とした。一方で、「長期金利は、景気の堅調さや米国の長期金利の上昇、世界的な原油価格の動向を理由に大きく変動している」(図4)、「株価は半導体セクターに左右される展開が続いている」とした。そして、「ソウルやその周辺を中心とする住宅価格は引き続き上昇基調が続いており、家計債務も大幅に増加している」とした。

先行きの政策運営について「金融の安定に留意しつつ、中期的にインフレ率を目標水準に安定させるべく政策を継続する」、「持続的な輸出と投資の力強さ、消費の回復も追い風に堅調な景気が続く」と景気を楽観視している様子がうかがえる。一方で、物価動向については「蓄積されたコスト上昇圧力の物価への波及、需要インフレ圧力の高まりも重なり、かなりの期間にわたって目標レンジを上回る推移が見込まれる」と繰り返し述べている。そのうえで、金融の安定について「首都ソウルを中心とする住宅価格の動向、家計債務の動向を注視する必要がある」との考えを示し、ウォン安への懸念が後退している様子もうかがえる。そして、「インフレ動向、景気回復の行方、金融の安定を評価しつつ、タイミングとペースを決定する」と追加利上げに含みを持たせる考えを示した。
【ドットプロットは追加1回利上げが最多、物価・為替の安定へタカ派姿勢維持か】
今回の会合では、最新のフォワードガイダンスが示された。FRBの「ドットチャート」に倣い、7人の政策委員が向こう6ヶ月の金利経路に関する予測を各々3つ提示し、計21個のドット(点)を「ドットプロット」として示している。5月時点では、おおむねすべての政策委員が利上げを志向するなど「タカ派」に傾斜していることが示された。最新のドットプロットでは、2027年2月時点について、据え置き(3%)が5個、利上げ1回(3.25%)が10個、利上げ2回(3.50%)が6個となり、追加で1回利上げを行う見通しが有力な水準とされた。
会合後に記者会見に臨んだ申総裁は、今回の決定について「インフレ圧力が今後も続く見通し」としたうえで、「先手を打って対応すべく連続利上げが必要であった」、「インフレ圧力が一段と高まる前に利上げに踏み切る必要があった」とした。一方で、利上げ実施に関連して「借入コストの上昇による困難に直面する家計支援について政府と協議する」、「中小企業は中銀が提供する特別融資プログラムを利用可能になる」とした。そして、ウォン相場について「外為市場への先制的な対応は市場の安定性を維持する観点からコスト抑制に資する」としたうえで、足元の水準について「幾分安定した」、「足元のウォン高は輸入コストの軽減につながる」としつつ「依然安すぎる」、「さらなる上昇が続く」との見方を示した。
一方で、「金融政策だけでは不動産価格を安定させることはできない」と指摘した。そして、「金融安定性を巡るリスクを注視している」、「ソウル周辺の住宅価格は二けたの伸びをみせている」としたうえで、「中銀が試算する金融安定リスクに対する脆弱性指数は足元で上昇しており、借入コストの上昇はリスク低減につながる」との考えを示した。そして、「段階的な利上げが見込まれる」としつつ、「利上げの影響を検証する必要がある」と当面は利上げを休止する可能性に言及した。「外為市場が幾分落ち着きをみせたことで、ウォン相場は一段と上昇してインフレ緩和に寄与する可能性がある」としたほか、「外為市場の予見可能性は安定した」、「ウォン相場はさらに上昇する余地があり、その実現に取り組む」との考えをみせた。そして、需給ギャップについて「想定より早くプラスに転じると見込まれる」として、インフレ圧力の根強さを示唆した。今回2会合連続の利上げに動いたため、中銀は当面様子見姿勢に転じると見込まれるものの、物価と為替の安定を重視する観点からタカ派姿勢を維持する可能性は高いと予想される。
注1 8月24日付レポート「円と対照的な値動きをみせるウォンの行方を左右する韓国中銀人事」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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