インドは中国を超えるのか インドは中国を超えるのか

南ア準備銀はリスクを警戒して慎重姿勢、ランド相場はどうなる

~SARBの慎重姿勢は下支えする可能性も、先行きも米ドル相場や金価格が左右する展開が続こう~

西濵 徹

要旨
  • 南アフリカ準備銀行(SARB)は20日の定例会合で4会合ぶりに政策金利を据え置いた。昨年以降のインフレは頭打ちの動きを強める一方、実体経済は力強さを欠く推移が続くなか、SARBは昨年9月にコロナ禍後初の利下げに動き、その後も3会合連続の利下げに動いてきた。こうした状況ながら、足下のランド相場は米ドル高一服や金価格の上昇を追い風に底堅い動きをみせている。他方、足下では米国との関係悪化など外部環境の悪化に加え、国内では来年度予算案が物価に与える影響も見通せない状況にある。こうしたなか、今回の決定では票割れが生じる一方で「国内外のリスクに対応すべく慎重な対応が必要」との認識を示した。SARBの慎重姿勢は短期的にランド相場を下支えする可能性はあるが、実体経済の自律回復が見通せないなか、先行きも米ドル相場の動向や金価格に左右される展開が続くと見込まれる。

南アフリカ準備銀行(SARB)は、20日に開催した定例の金融政策委員会において、政策金利(レポ金利)を4会合ぶりに7.50%に据え置く決定を行った。同国はここ数年、コロナ禍一巡による経済活動の正常化、商品高、国際金融市場における米ドル高を受けた通貨ランド安に伴う輸入物価の押し上げ、そして、慢性的な電力不足の影響も重なる形でインフレ高進に直面した。SARBは物価と為替の安定を目的に累計325bpの利上げに動き、商品高の動きも一巡したため、インフレは2022年半ばに一時13年ぶりの高水準を記録した後に頭打ちした。なお、インフレ率は一昨年以降SARBが定めるインフレ目標(3~6%)の範囲内で推移してきたほか、昨年以降は下限近傍に一段と低下する動きが確認された(図1)。さらに、米FRB(連邦準備制度理事会)の利下げを受けて米ドル高の動きが一巡したことも重なり、SARBは昨年9月にコロナ禍の影響一巡後初の利下げに舵を切り、1月の定例会合まで3会合連続の利下げに動くなど金融緩和を進めてきた(注1)。

図表
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SARBが金融緩和を進めてきた背景には、インフレ鈍化を受けて実質金利は歴史的高水準となるなど引き締め度合いが強まっている上、昨年の経済成長率は+0.6%に留まるなど足下の景気が力強さを欠く推移をみせていることがある(注2)。他方、このところの同国を巡っては、米トランプ政権が同国に対する資金援助をすべて停止する大統領令の発動に加え、追加関税による貿易戦争の懸念、駐米大使の追放を通告するなど強硬姿勢をみせるなか、幅広い経済活動に悪影響が出る事態に直面している(注3)。なお、このように実体経済は力強さを欠く推移が続いている上、米国との関係悪化など先行きに対する不透明要因は山積しているものの、足下の通貨ランドの対ドル相場は底入れする動きが確認されており(図2)、これは国際金融市場における米ドル高の動きが一服していることが影響している。さらに、足下のインフレは目標域の下限近傍で推移するなど一段の利下げ余地を模索しやすい環境にあると捉えられるものの、SARBは4会合ぶりに金利を据え置く慎重姿勢をみせた格好である。

図表
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会合後に公表した声明文では、足下の世界経済について「貿易摩擦や地政学リスクを巡る急変化を受けた不確実性に直面している」との見方を示した上で、足下の国際金融市場について「米ドル高圧力が後退するなかで他の国々の資産価格に底堅さがみられ、多くの通貨も対ドルで上昇している」としつつ、先行きは「様々なインフレリスクを勘案すれば長期的に金利が高止まりする可能性は高い」との認識を示している。一方、同国経済については「昨年10-12月は回復したが、家計部門を除いた多くの分野で期待外れの状況が続いている」との見方を示した上で、先行きについて「需給双方に脆弱性が残るとともに、下振れリスクを意識せざるを得ない状況にある」との認識を示している。また、物価動向について「足下では目標域の下限近傍で推移しており、先行きは上昇圧力が懸念されるがインフレ期待は目標の中央値近傍に抑えられている」との見通しを示している。こうした状況を勘案して、インフレ見通しを「今年は+3.6%、来年は+4.5%」とともに目標域に留まるとしつつ、「リスクは上下双方にあるものの、中期的なリスクバラスは上向きに傾いている」との認識を示すなど、インフレを警戒している様子がうかがえる。結果、今回の決定は「4(据え置き)対2(25bpの利下げ)」に割れており、「国内外にリスク要因が山積するなかで慎重な対応が求められる」とした上で、海外については「米国景気の動向と米トランプ政権の通商政策」を、国内については「公的債務を巡る問題や電力不足などネットワーク産業の動向」などをリスク要因に挙げている(図3)。さらに、来年度(2025-26年度)予算案を巡るこう着状態が幅広い経済活動に影響を与えるとともに、付加価値税(VAT)の税率引き上げなど物価にも影響を与える内容が盛り込まれるなか、現時点ではその影響を見定めたいとの思惑も判断に影響を与えたとみられる。

図表
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上述したように、足下のランド相場は米ドル高一服の動きを反映して底入れしているほか、金価格が上昇していることもランド相場を下支えしている可能性が考えられる。しかし、実体経済については国内外に不透明要因が山積している上、先行きも自律的な景気回復に向けた材料に乏しいことに鑑みれば、金価格以外の材料で上値を追う展開が続くことは見通しにくい。よって、SARBの慎重姿勢は短期的にランド相場を下支えする可能性は見込まれるものの、先行きについては引き続き米ドル相場や金価格といった外部要因に左右される展開が続くと予想される。

以 上

西濵 徹


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西濵 徹

にしはま とおる

経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析

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