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2025.01.31
新興国経済
新興国金融政策
南アフリカ経済
為替
南ア準備銀は3会合連続の利下げも「貿易戦争」の影響を警戒
~ランド相場を巡る環境変化が金融政策の手足を縛る、実体経済の不透明感が重石となる懸念は残る~
西濵 徹
- 要旨
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- 南ア準備銀行(SARB)は30日の定例会合で3会合連続の利下げにより、緩和姿勢を強める決定を行った。足下のインフレ率はSARBが定める目標域の下限近傍で推移するなど落ち着いている。他方、ここ数年経済活動の足かせとなった電力不足問題は最悪期を過ぎつつあるが、足下の景気はブレーキが掛かるとともに、不透明感がくすぶる状況が続く。これは利下げにも拘らず足下の実質金利は歴史的高水準にあることが影響している。こうした状況ながら、SARBが慎重な利下げを維持する背景にはランド相場を巡る変化がある。昨年末以降は米トランプ政権の誕生が米ドル高を促し、金価格も頭打ちに転じるなどランド相場を取り巻く環境も変化している。結果、今回会合では米トランプ政権の関税政策への懸念が共有され、緩やかな利下げに留めたとみられる。先行きも実体経済の不透明感がランド相場の重石となる懸念がくすぶる。
南アフリカ準備銀行(SARB)は、30日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利(レポ金利)を25bp引き下げて7.50%とする決定を行った。SARBによる利下げ実施は3会合連続となるとともに、政策金利も丸2年弱ぶりの水準となるなど緩和姿勢を強めている。ここ数年の同国においては、コロナ禍一巡を受けた経済活動の正常化が進むとともに、商品高、国際商品市場における米ドル高に伴う通貨ランド安による輸入物価の上昇、その一方、慢性的な電力不足が幅広い経済活動の制約要因となるなど物価上昇圧力が強まったことも重なり、インフレは大きく上振れした。結果、インフレ率は2022年半ばに一時13年ぶりの水準に高進したが、SARBが物価と為替の安定を目的に累計325bpの利上げに動くとともに、商品高が一巡したことも重なりその後のインフレは頭打ちしている。また、足下のインフレ率はSARBが定めるインフレ目標(3~6%)の下限近傍で推移するなど落ち着いた動きをみせている。なお、昨年のアフリカ地域はエルニーニョ現象を理由とする大干ばつに見舞われ、同国においても生鮮品をはじめとする食料品に物価上昇圧力が掛かる動きがみられるものの、前年のインフレが底打ちの動きを強めた反動もインフレ鈍化の動きを促している。他方、ここ数年の同国においては慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなってきたものの、昨年3月末以降は計画停電が回避されるなど電力需給を巡る最悪期は過ぎている。ただし、運輸インフラなどの機能不全状態が経済活動の足かせとなる状況は変わっておらず、世界経済を巡る不透明感の高まりが外需の足かせとなるなか、昨年7-9月の実質GDP成長率は前期比年率▲1.38%とマイナス成長に陥るなど景気にブレーキが掛かる事態となっている(注 )。さらに、足下の企業マインドは幅広い分野で頭打ちする動きが確認されており、インフレ鈍化や利下げにも拘らず景気を取り巻く環境は一段と厳しさを増している様子がうかがえる。こうしたこともSARBが断続利下げに動く一因になっているとみられる一方、足下の実質金利(政策金利-インフレ率)は歴史的な高水準に達するなど金融市場の引き締まり度合いは極めて強いことから、結果的に景気の足かせとなる展開が続いている。実質金利のプラス幅の大きさ勘案すればSARBには大幅利下げに動く余地が生じているものの、3会合連続で25bpの緩やかな利下げに留めている背景には、通貨ランド相場を取り巻く環境が変化していることに留意する必要がある。一昨年来の国際金融市場では米ドル高が意識されるなか、同国経済は他の新興国と比較して力強さを欠く推移が続くなど実体経済を巡る状況は見劣りする展開が続いたものの、金価格の上昇に連動する形でランド相場は底堅い動きをみせてきた。しかし、昨年末以降は米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米ドル高の動きが再燃するとともに、金価格が頭打ちするなかでランド相場も一転して調整しており、大幅利下げに動けばランド安が加速するリスクを孕んでいる。こうしたなか、会合後に公表した声明文では「米国の金融政策の見通しが変化している」とした上で、「米国以外の世界経済は総じて低調であり、米ドル高が進む」との見方を示している。他方、同国経済については「インフレ鈍化や年金制度改革も追い風に回復が見込まれる」、「潜在成長率は今後数年上昇して2027年には約2%に達する」との見通しを示している。また、物価動向について「今年前半のインフレ率は目標域の下半分に留まると予想される」とした上で、「このところのランド安による物価への影響は限定的」としつつ、「インフレ見通しのリスクは上向き」との認識を示している。結果、今回の決定について「4(25bpの利下げ)対2(据え置き)」で票が割れており、その理由に会合での議論を巡って「米トランプ政権が一律で10%の追加関税を課し、他国が報復措置に動いた場合の影響の検討に時間を費やした」としており、「仮にそうした事態に陥れば1ドル=21ランド近くまで調整し、インフレ率も5%に達する」との試算を公表している。よって、今後もSARBは漸進的な金融緩和を通じて緩やかに引き締め度合いを緩和する方針を維持すると見込まれ、実体経済を巡る不透明感がランド相場の重石となる展開が続く可能性に留意する必要がある。




注1 2024年12月5日付レポート「南ア景気にブレーキ、ランド相場を取り巻く環境はどうなる」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

