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2025.03.06
新興国経済
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南アフリカ経済
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トランプ政権
南アフリカ24年成長率は+0.6%止まり、脆弱な景気動向が続くか
~足下の景気は底打ちもその内容に脆弱さ、今年も経済成長率も+1%程度に留まると予想~
西濵 徹
- 要旨
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ここ数年の南アフリカ経済は慢性的な電力不足が足かせとなる展開が続いてきたが、昨年半ば以降は最悪期を過ぎつつある様子がうかがえる。さらに、商品高やランド安などを理由とするインフレも頭打ちの動きを強めるとともに、SARBも断続利下げに動いており、景気の足かせとなってきた物価高と金利高の共存状態は緩やかに解消しつつある。ただし、実質金利は依然歴史的高水準にあるなど金融政策は引き締まった状態が続いているが、これはSARBが米トランプ政権の通商政策を警戒していることに加え、米トランプ政権が資金援助を停止するなど同国を「標的」にした動きをみせていることも影響していると捉えられる。
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同国経済には好悪双方の材料が混在するなか、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+2.32%と2四半期ぶりのプラス成長に転じている。外需に駆け込みの動きが出るとともに、インフレ鈍化や利下げを追い風に個人消費が活発化する動きがみられる。他方、企業部門の設備投資意欲は弱いほか、脆弱な財政が重石となる形で政府消費は低迷している。こうした状況は分野ごとの生産動向にも現れており、大半の分野で生産が低迷する動きが確認されるなど、足下の景気底打ちの動きは極めて脆弱と捉えられる。
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昨年の経済成長率は+0.6%と主要新興国のなかでも極めて力強さの乏しい推移をみせる。インフレ鈍化や利下げが個人消費を押し上げる期待はある一方、外需を取り巻く環境の不透明感や気象条件に左右される厳しい展開が続くと見込まれるなか、当研究所は今年の成長率も+1%程度に留まると予想する。ランド相場を巡っても引き続き外部環境に左右される展開が続くものと予想される。
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ここ数年の南アフリカ経済を巡っては、慢性的な電力不足が幅広い経済活動の足かせとなる展開が続いてきたものの、この半年以上については計画停電が回避されるとともに、計画外停電も減少する動きが確認されるなど、電力供給を取り巻く環境が改善している様子がうかがえる。
他方、ここ数年はコロナ禍の影響一巡を受けた経済活動の正常化に商品高、国際金融市場における米ドル高に伴う通貨ランド安による輸入物価の押し上げも重なり、インフレは上振れしてSARB(中銀)の定める目標を上回る水準に高進する事態に直面した。SARBは物価や為替の安定を目的に累計325bpの利上げに動くなど金融引き締めに舵を切った結果、物価高と金利高の共存も相俟って景気の足かせとなる展開が続いた。インフレは2022年半ばに一時13年ぶりの水準となるも、SARBの金融引き締めに加えて商品高の一巡も重なり、その後は頭打ちの動きを強めており、足下では目標の下限近傍で推移するなど落ち着きを取り戻している(図1)。

なお、上述のようにインフレは頭打ちの動きを強めるも、国際金融市場における米ドル高がランド安を招くことを警戒してSARBは利下げに及び腰の対応をみせる展開が続いたものの、昨年9月にコロナ禍の影響一巡後初の利下げに動いている。さらに、その後もインフレが頭打ちの動きを強めたこともあり、SARBは1月の定例会合においても3会合連続の利下げなど一転して金融緩和に舵を切る動きを強めており(注1)、景気の足かせとなってきた物価高と金利高の共存という状況は徐々に解消されつつある。ただし、インフレは落ち着いた動きをみせるなかで実質金利(政策金利-インフレ)は歴史的高水準となるなど、金融政策の引き締め度合いは極めて高まっているにも拘らず(図2)、SARBは米トランプ政権の通商政策の行方を警戒して漸進的な利下げに留めるなど難しい対応が続いている。

こうした背景には、同国と米国の間で再び緊張関係が高まっていることも影響していると捉えられる。というのも、米トランプ政権と同国を巡っては、第1次政権の2018年にラマポーザ政権が無補償での土地収用を進めることを目的とした憲法改正に言及したことをきっかけに実態調査を行うよう指示するなど、外交上の『標的』となる懸念が高まったことがある(注2)。その後に具体的な調査が行われたか否かは不透明なほか、バイデン前政権の下では関係が悪化する事態は回避されてきたものの、トランプ氏が昨年の大統領選で返り咲きを果たしたことを受け、両国関係にどのような影響が出るかが懸念された。こうしたなか、トランプ氏は先月初めに突如、自身のSNSを通じて同国の土地政策を巡る懸念を理由に同国に対するすべての資金援助を停止する考えを明らかにするなど、再び関係悪化に繋がる動きが顕在化している(注3)。トランプ第2次政権には、同国生まれのイーロン・マスク氏が政府効率化省(DOGE)の委員長として参画するなか、マスク氏は過去に同国内における過激な政治運動を巡って異議を呈する動きをみせたこともトランプ氏の動きに影響を与えている可能性がある。さらに、マスク氏の下でトランプ政権はUSAID(国際開発庁)の閉鎖に動いており、同国をはじめとする海外支援が停止される事態となっていることも経済活動の足かせとなる懸念が高まっている。
このように、足下の同国経済を取り巻く状況には好悪双方の材料が混在する展開が続いているなか、昨年10-12月の実質GDP成長率は前期比年率+2.32%と前期(同▲0.58%)から2四半期ぶりのプラス成長に転じるなど底打ちしているほか(図3)、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも+0.9%と前期(同+0.4%)から伸びが加速するなど底打ちが確認されている。需要項目別では、昨年末にかけての中国景気の底入れに加え、米トランプ政権の発足を前にした『駆け込み』の動きも重なる形で輸出は4四半期ぶりのプラスに転じるなど外需が底入れの動きを促す一助となっている。さらに、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げに加え、利下げの動きも重なるなかで個人消費は底入れを強める動きが確認される一方、企業部門による設備投資意欲は依然として力強さを欠く推移が続いている上、商品市況の低迷が財政の足かせとなるなかで政府消費や公共投資の進捗も低迷して固定資本投資も下振れする展開が続くなど、個人消費以外の内需は総じて厳しい状況にある。また、在庫投資の成長率寄与度は前期比年率ベースで+0.76ptと2四半期ぶりのプラスとなるなど、在庫積み上がりの動きが成長率の押し上げ要因となっていることにも注意する必要がある。

分野ごとの生産動向を巡っても、調査対象の10業種のうちプラス成長となっているのは3業種であり、足下の景気は底打ちが確認されているものの、その内容については極めて脆弱なものと捉えられる(図4)。個人消費の底入れなど旺盛な動きに加え、国際金融市場における取引が活発化していることを反映してサービス業の生産は拡大の動きを強めているほか、前期まで2四半期連続で異常気象の影響で減少基調が続いた農林漁業の生産が3四半期ぶりにプラスに転じたことも足下の景気底入れを促している。その一方、商品市況の調整に加え、電力不足を巡る問題は最悪期を過ぎるも依然として制約要因となる展開が続くなかで鉱業部門の生産は下振れしているほか、上述のように外需に駆け込みの動きが出ているにも拘らず製造業の生産も頭打ちの動きを強めている。さらに、企業部門の設備投資意欲の弱さや公共投資の進捗低迷を受けて建設業の生産も下振れする展開が続いている。農林漁業関連における生産拡大の動きは食料インフレ懸念の後退を促すことが期待される一方、気象状況に景気が大きく左右される展開が続いていることを意味しており、先行きの景気の見通しが立ちにくい一因となることが懸念される。

この結果、昨年通年の経済成長率は+0.6%と前年(+0.7%)からわずかに鈍化するとともに、2年連続で1%を下回る伸びに留まるなど、主要新興国のなかでも突出して勢いの乏しい状況が続いていると捉えられる。さらに、昨年の経済成長率のゲタは+0.2ptと前年(▲0.3pt)からプラスに転じていたと試算されることを勘案すれば、電力供給を巡る最悪期は過ぎているなど経済活動を取り巻く環境は改善しているにも拘らず、そうした条件を生かすことができていないことを意味する。なお、今年の経済成長率のゲタは+0.4ptと昨年からわずかにプラス幅が拡大しているものの、足下の企業マインドは幅広く力強さを欠く推移をみせている上(図5)、足下の景気が気象状況など外部環境に脆弱であるほか、米中摩擦の激化や世界貿易の動向も見通しが立ちにくいなど外需の不透明感が景気の足かせとなる展開が見込まれる。よって、当研究所は今年の経済成長率も+1%程度の力強さを欠く展開が続くと予想する。ランド相場についても実体経済の行方以上に外部環境や金価格など外部環境に左右される展開が続いているものの(図6)、先行きについても同様の展開が続いていくものと予想される。


注1 1月31日付レポート「南ア準備銀は3会合連続の利下げも「貿易戦争」の影響を警戒」
注2 2018年8月24日付レポート「米トランプ大統領、次の「標的」は南ア!?」
注3 2月4日付レポート「「トランプ2.0」でも南アフリカの土地政策にふたたび関心か」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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