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2026.06.01
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コロンビア大統領選、決選投票は極右と左派の一騎打ちに
~左翼ゲリラどうしの抗争が情勢を一変、選挙結果は日本の原油調達戦略にも影響するか~
西濵 徹
- 要旨
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5月31日に実施されたコロンビア大統領選の第1回投票では、事前の世論調査で優勢とされていた左派のセペダ氏を抑え、極右のデラエスプリエジャ氏が得票率44.51%でトップとなった。選挙直前に左翼ゲリラ間の抗争が激化し、治安問題が争点化したことが強硬路線を掲げる同氏への支持拡大につながったとみられる。両候補とも過半数に届かなかったため、今月21日に決選投票が実施される。世論調査ではなおセペダ氏優勢とされているが、第1回投票の結果が事前予測と大きく乖離したことから、勝敗の見通しは立ちにくい状況である。
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議会での勢力を見ると、いずれの候補が勝利しても少数与党となるため、政権運営は容易でない。決選投票の行方を左右する鍵として、議会で一定の議席を持つ右派・民主中道党の動向が注目される。日本にとっては、コロンビアが原油調達の分散化候補のひとつであるだけに、選挙結果は無関係ではない。ペトロ路線を継承する左派政権が誕生した場合、同国の脱化石燃料政策が加速し、原油調達先としての活用が難しくなる可能性に注意が必要である。
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【コロンビア大統領選では、最終盤にかけて左翼ゲリラ対策が争点に】
南米コロンビアでは、5月31日に大統領選挙(第1回投票)が実施された。大統領選には計13人が立候補したが、事前の世論調査では、ペトロ現政権を支える与党・左派連合(パクト・ヒストリコ)から出馬したイバン・セペダ上院議員の優勢が伝えられてきた。さらに、仮に決選投票に持ち込まれた場合でも同氏が勝利するとの見方が示されていた。
しかしながら、選挙の直前に南部グアビアレ州において、麻薬の流通や支配地域を巡る左翼ゲリラどうしによる抗争が激化した結果、現地報道では少なくとも40人の戦闘員が死亡する事態に発展した。同国では2016年、政府と左翼ゲリラであるコロンビア革命軍(FARC)が和平合意を締結したものの、その後もFARCの分派が活動を続けており、選挙直前には分派どうしによる抗争が激化していた。さらに、左翼ゲリラは麻薬の製造や流通にも関与しており、取り締まりを強化する軍や警察などを狙ったテロも各地で発生している。したがって、大統領選の終盤にかけては治安対策やゲリラとの和平交渉が主要な争点となった。
なお、セペダ氏は政府と左翼ゲリラによる和平交渉に仲介役として携わった経験があり、ペトロ現政権の方針を継承する考えを示してきた。また、「ドンロー主義」を標榜して麻薬対策を名目に中南米への介入を強めるトランプ米大統領に対して批判的な立場を示した。その一方、無所属で極右政党(国民救済運動)による支援を受けた弁護士のアベラルド・デラエスプリエジャ氏は、左翼ゲリラに対して爆撃による掃討を掲げるとともに、コカインの原料となるコカの栽培地への除草剤の散布など、現政権の対話重視路線から強硬路線への転換を主張した。この背景には、デラエスプリエジャ氏がトランプ氏への支持を公言するとともに、ペトロ政権下で悪化した対米関係の改善を目指していることが挙げられる。また、同氏は大規模刑務所の建設のほか、教育・医療・住宅の改善を通じた貧困削減を公約に掲げた。
こうしたなか、選挙戦の最終盤にかけてはデラエスプリエジャ氏がセペダ氏を猛追する動きをみせるなど、選挙戦は激化する様相を強めた。しかし、前述のように仮に決選投票に持ち込まれた場合においても、世論調査においてはセペダ氏の優勢が伝えられてきた。したがって、金融市場では左派政権の継続が見込まれていたことを背景に、中東情勢の緊迫化による原油高にもかかわらず、通貨ペソ相場は上値の重い展開が続いてきた。(図1)。

【決選投票は極右と左派の戦いに、結果は日本の原油調達戦略にも影響か】
しかし、即日開票が行われた結果、第1回投票ではデラエスプリエジャ氏の得票率が44.51%でトップとなるなど、選挙戦の最終盤にかけて左翼ゲリラ間の抗争が激化したことが、同氏への支持拡大を後押しする格好となった。しかし、いずれの候補も得票率は50%に満たなかったため、次点候補となったセペダ氏(得票率41.62%)との間で今月21日に実施される決選投票が行われることとなった。なお、前述したようにデラエスプリエジャ氏とセペダ氏による決選投票に関する世論調査では、セペダ氏が優勢と伝えられているものの、第1回投票の結果が事前の世論調査と大きく異なったことを踏まえれば、現時点でどちらの候補が勝利するかは見通しが立ちにくい。
他方、大統領選に先立つ形で3月8日に実施された議会上下院選では、ペトロ政権を支える左派連合(パクト・ヒストリコ)は議会上院で25議席(総議席数108)、下院で42議席(総議席数188)の獲得にとどまっている。したがって、仮にセペダ氏が決選投票に勝利した場合においても、政権運営は困難な状況が続くことは避けられない。
その一方、大統領選でデラエスプリエジャ氏を支援した極右政党(国民救済運動)の獲得議席数は、上院で4議席、下院で1議席にとどまり、仮に決選投票で勝利したとしてもセペダ氏以上に政権運営は厳しいものとなることが予想される。決選投票に向けては、ドゥケ元政権下の与党で3位に着けたパロマ・バレンシア上院議員が所属する右派・民主中道党(上院17議席、下院30議席)の動向が注視される。同党はFARCとの和平合意に一貫して反対姿勢を示してきたことを勘案すれば、デラエスプリエジャ氏に比較的近い立場と考えられる。とはいえ、その対応の行方は左翼ゲリラの反発を招くなど、治安情勢のさらなる悪化に繋がるリスクにも注意が必要である。
コロンビアの産油量はここ数年日量74~78万バレル程度で推移するなど安定している。日本は中東に代わる原油の調達先として様々な国、地域との交渉を積極化させており、同国もそうした国のひとつであることは間違いない。しかし、同国の原油や天然ガスの可採年数はともに10年以内であるなど短く、ペトロ政権は脱化石燃料に舵を切る動きをみせており、4月24日に脱化石燃料を目指す初の国際会議をオランダとともに主催している。次期政権が「ペトロ路線」を継承すれば、原油調達先として同国を依存することは困難になることも予想される。大統領選の行方は、日本の原油調達先の分散化戦略にも影響する可能性にも留意する必要がある。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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