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2024.11.21
アジア経済
アジア金融政策
インド経済
インド株に新たな受難、「シン・アダニ問題」噴出でどうなる?
~地合いが悪化するなかでの新たな疑惑噴出は外国人投資家からの見方をさらに悪化させるか~
西濵 徹
- 要旨
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- 昨年のインド株式市場はアダニ問題に揺さぶられる事態に直面した。アダニ問題を巡っては、司法が事実上の「シロ判断」を下すも、規制当局は不透明な動きをみせたほか、その背後に利益相反が疑われるなど新たな問題が噴出してきた。アダニ問題は個社の問題と捉えられる一方、足下のインド株は外部環境の変化なども影響して頭打ちの動きを強めるなど、市場を取り巻く状況は厳しさを増している。こうしたなか、米検察当局がアダニ・グループのアダニ会長などを贈賄や巨額詐欺の容疑で起訴するなど、新たな疑惑が噴出している。アダニ氏はモディ首相と近く、米大統領選でのトランプ氏勝利を受けて米国での巨額投資計画を明らかにする動きをみせたが、今回の起訴で事業見直しは必至とみられる。また、地合いが悪化するなかでの新たな疑惑の噴出は外国人投資家のインド株に対する見方を一段と悪化させる可能性もある。
昨年(2023年)のインド株式市場では、新興財閥のアダニ・グループを巡る疑惑(いわゆる『アダニ問題』)を受けて同社の株価が大きく下落するとともに、主要株価指数(ムンバイSENSEX)も大幅に調整する事態に発展した。これは、アダニ・グループが過去数十年に亘って子会社によるタックスヘイブン(租税回避地)を介した送金を通じて株価操縦や不正会計を行ってきた、と米国の投資調査会社(ヒンデンブルグ・リサーチ)が調査報告書で公表したことに端を発する。直後に証券規制当局(SEBI:インド証券取引委員会)が独自に同社に対する実態調査を行うことを明らかにしたものの、株式市場の混乱を受けて、裁判所にSEBIによる調査と別に詳細調査を求める公益訴訟が提起された。ただし、公益訴訟については最高裁が今年1月、一連の疑惑を対象とする特別調査の必要はないと判断するとともに、SEBIによる調査結果の早期公表を求めるなど、アダニ・グループが主張した内容のほぼ沿った形で事実上の『シロ判定』を下した(注1)。その上で、最高裁はSEBIに対して、ヒンデンブルグ・リサーチが調査報告書の公表前に株式の空売りを行ったことに関連して、一連の取引によるインド国内の投資家が被った損失が法律に抵触するか否かの調査を求めるなど、アダニ側に寄った判断を下した。なお、最高裁はSEBIに対して3ヶ月以内にアダニ問題に関する調査結果の公表を求めるも、その公表は遅れる展開が続いている一方、ヒンデンブルグに対しては法律違反に該当する疑いがある旨の通知を行うなど、バランスを欠く判断をみせてきた(注2)。こうしたなか、今年8月にはヒンデンブルグが新たな調査報告書を公表し、そのなかではSEBIのブチ委員長とアダニとの関係を理由に、アダニとSEBIの間に利益相反が生じるとの問題を指摘した(注3)。このようにアダニに関連しては様々な疑惑が噴出する動きがみられるものの、一連の問題はあくまで個社の問題と捉えられる形で消化されてきたとみられる。しかし、足下のインド株を巡っては、9月末以降の中国株が急上昇するなど外部環境が変化していることに加え、金融市場において期待された中銀(インド準備銀行)による利下げ期待が後退していることも重なり、頭打ちの動きを強めるなど上昇してきた流れが一変する状況に見舞われている(注4)。こうしたなか、20日に米国の検察当局がアダニ・グループのゴーダム・アダニ会長やグループ会社の幹部などを贈賄や巨額詐欺に関与した疑いで起訴したことを明らかにするなど、新たな疑惑が噴出している。起訴状に拠れば、アダニ氏などが2020年から今年にかけて、太陽光エネルギー事業の契約獲得を目的にインド政府高官に対して約2.65億ドルの贈賄を行ったほか、その間に虚偽や誤解を招く内容を含む説明資料を基に30億ドルを上回る融資や債券発行による資金調達を行ったとしている。また、今回の起訴に付随する形で、米証券取引委員会(SEC)はアダニ氏らに対する民事訴訟を起こしている。アダニ氏を巡っては、米大統領選でのトランプ氏の勝利を受けて米国のエネルギー安全保障に関連したインフラ投資計画に総額100億ドルの投資を実施する計画を明らかにするなど、モディ首相との関係の近さも追い風に事業拡大を目指す姿勢をみせてきた。しかし、今回の起訴によってそうした計画がとん挫、ないし後退を余儀なくされる可能性も予想されるなど、事業の行方に大きく影響を与えることも見込まれる。また、上述のように足下のインド株を取り巻く環境は厳しさを増しており、アダニを巡る問題はインド企業の在り様に影響を与えるほか、外国人投資家を中心にインド株に対する見方に影響を与える可能性にも留意する必要がある。

注1 1月4日付レポート「インド株式市場を揺さぶった「アダニ問題」は終息へ」
注2 7月5日付レポート「インド株式市場を揺さぶったアダニ問題はいよいよ「場外戦」へ」
注3 8月13日付レポート「インド株を揺さぶった「アダニ問題」は新たな展開に」
注4 11月14日付レポート「インド株の「受難」、インフレ再燃に中国株の急上昇など逆風に直面」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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