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2024.10.28
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ロシア中銀は引き締め強化も、地政学リスクを巡る動きに要注意
~中銀はインフレ期待の高止まりを警戒、ロシアのウクライナ戦争や中東情勢を巡る動きはどうなる~
西濵 徹
- 要旨
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- ロシア中銀は25日の定例会合で3会合連続の利上げ、利上げ幅も200bpに拡大させるなどタカ派姿勢を強める決定を行った。ロシアは戦時経済が長期化しているが、新興国との関係深化が欧米などの制裁の抜け穴となる形で景気は底入れの動きを強めている。他方、労働力不足に加え、貿易決済の複雑化などを理由に足下のインフレは高止まりしており、中銀は先行きもさらなる引き締めが必要との認識を示す。来年度予算での軍事費増大がインフレ圧力を招く懸念もくすぶる上、人民元の流動性ひっ迫がルーブル安圧力を招く動きも確認されるなか、先行きも中銀は難しい政策の舵取りを迫られる局面が続くであろう。
- ウクライナ戦争を巡っては、北朝鮮兵士の参戦が懸念されている。他方、ロシアが議長国のBRICS首脳会議では中東情勢の安定化を目指すとの認識が共有されたが、中東情勢の緊迫化は世界的にウクライナ戦争に対する関心低下を招くことを勘案すれば、ロシアの本心は静観の構えの可能性がある。中東情勢を巡る不透明感に加え、北朝鮮の動きは朝鮮半島情勢をはじめとする東アジアにも影響を与えるなど地政学リスクが伝播する可能性がある。ウクライナ戦争を含め、ロシアの出方に注意を払う必要性が高まっている
ロシア中銀は、25日に開催した定例の金融政策委員会において政策金利を200bp引き上げて21.00%とする決定を行った。同行による利上げ実施は3会合連続であるとともに、利上げ幅も過去2回は100bpであったものの、今回は200bpに引き上げるなど『タカ派』姿勢を強めている。ロシア経済を巡っては、2022年に始まったウクライナ戦争に収束の見通しが立たない状況にあるなど『戦時経済』が2年半以上に亘って続いている。開戦直後には、欧米などによる経済制裁の強化を受けて幅広い経済活動に悪影響が出るとともに、景気に大きく下押し圧力が掛かる事態に直面した。しかし、その後は世界経済が分断の動きを強める流れも相俟って、中国やインドをはじめとする新興国との貿易を拡大させており、欧米など向けの輸出減を補って余りある状況にある。また、欧米などの経済制裁にも拘らず、足下では中央アジアやコーカサス、トルコなどを経由した迂回貿易や並行貿易により欧米などの財・サービスはロシアに流入している模様であり、結果的に経済制裁の『抜け穴』となっている。さらに、戦争が長期化するなかで軍事関連産業はGDPの1割弱に達するなど一大産業となっていることもあり、軍備拡大に向けた動きが景気を押し上げる動きもみられる。よって、上述のように開戦直後こそ景気は大きく下振れしたものの、その後は一転して底入れの動きを強めており、欧米などの経済制裁強化の影響を克服している様子がうかがえる。他方、戦時経済の長期化や動員による労働力不足を受けて労働需給はひっ迫しており、折からの人口減少のほか、テロを警戒した入国管理の厳格化を受けた移民流入減も重なり、賃金上昇圧力が強まる動きがみられる。また、米国がロシアと取引する第三国の金融機関を対象とする経済制裁を模索したことを受けて貿易決済は複雑化しており、輸入コストが押し上げられていることも物価上昇圧力に繋がっている。そして、戦争長期化に加え、開戦直後に中銀が大幅利上げに動いた余波で国民生活に悪影響が出たことを受けて、プーチン政権は国民の不満を抑えるべく様々なバラ撒き政策に動いているものの、そうした動きも結果的にインフレ圧力を増幅させている。インフレ率は昨年の同時期に加速した反動で頭打ちしやすい環境にあるなか、足下では7月をピークに頭打ちに転じているものの、9月も前年比+8.6%、コアインフレ率も同+8.3%とともに中銀目標(4%)を大きく上回る推移が続いている。こうしたなか、中銀は物価抑制を目的とする断続利上げに加え、利上げ幅を拡大させるなどタカ派姿勢を強めており、会合後に公表した声明文でも「インフレを目標に戻すとともに、インフレ期待を低下させるためにはさらなる金融引き締めが必要」との考えを示している。また、インフレ見通しについて「来年は+4.5~5.0%」と目標への収束は難しいとの見方を示すとともに、インフレを巡るリスクについて「依然として大幅な上昇傾向にある」との認識を示している。会合後に記者会見に臨んだ同行のナビウリナ総裁も、足下の物価動向について「減速していない」との認識を示した上で、今回の決定について「100bp、200bp、それ以上の利上げも検討した」上で「来年も大幅な引き締めが必要になる」、「大幅な財政出動がすでに物価に影響を与えている」との考えを示している。先月末に公表された来年度(2025年度)予算案においては、軍事費を一段と拡大させるなど戦争が産業化している様子がうかがえるほか、そのことがインフレ圧力を増幅させることも懸念される(注1)。なお、ロシア国内では産業界を中心に中銀に利上げサイクルの停止を求めるなど圧力を強める動きがみられたものの、中銀が大幅利上げを決定したことは政治的な支持を集めている証左と捉えることができる。ナビウリナ総裁は人民元の流動性について「安定化している」との認識を示したものの、足下のルーブル相場は人民元に対して調整の動きを強めるなどひっ迫を示唆している様子がうかがえるほか、インフレ圧力に繋がっている可能性がある。よって、中銀にとっては今後も難しい政策の舵取りを迫られる局面が続くであろう。


ウクライナ戦争を巡っては、上述のようにロシアが来年も軍事費を大幅に増大させるなど自発的に休戦に動く可能性は低いと見込まれるほか、一部報道において北朝鮮の兵士がロシアの軍事施設で訓練を受けるとともに、その後に前線に派兵されるなど実質的なロシア軍の支援に動く可能性も指摘されており、事態が一段とエスカレートする懸念が高まっている。ロシアが議長国となる形で開催されたBRICS首脳会議においては(注2)、混迷の度合いを強めている中東情勢を巡って「全面戦争の瀬戸際にある」との認識が共有されるとともに、早期の緊張緩和に向けた取り組みを通じて政治的な解決に道を開く必要があるとの考えが示された模様である。こうした背景には、首脳会議に今年からのBRICSの加盟国拡大を受けて中東情勢の当事国であるイランのペゼシュキアン大統領が参加するとともに、パレスチナ自治政府のアッバス議長も出席したことも影響したと考えられる。ただし、ロシアは軍事面でイランの後ろ盾となっている一方、中東情勢を巡って一段と緊迫化することは世界の視線がウクライナ戦争からの分散化をもたらすことを期待している可能性があり、結果的に中東情勢の行方に対して静観する構えを強めることも考えられる。他方、イスラエルによる行動を巡っては、来月に実施される米大統領選の動向にも影響を与えるとともに、イスラエルがイランに対する報復攻撃に動いたことを受けてイランがどのような対抗措置に動くかに加え、事態がどのように展開するかも見通せない状況にある。北朝鮮によるウクライナ戦争への参戦の動きは、朝鮮半島をはじめとする東アジアの安全保障環境にも影響を与えることで、わが国の周辺環境を巡るパワーバランスにも様々な形で伝播することも予想されるなど、幅広い地域で地政学リスクを高める可能性も考えられる。ウクライナ戦争を含めて、今後のロシアの出方に注意を払う必要性が高まっていると捉えられる。
注1 10月2日付レポート「ロシアは経済を維持する観点から戦争を止められないのかも」
注2 10月25日付レポート「「ロシアによる」BRICS首脳会議は同床異夢の様相を強める」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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