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2024.06.05
新興国経済
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ブラジル経済
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ブラジル景気は底打ちも、レアル相場や株価には不安要因山積
~洪水被害や政策運営、原油をはじめとする商品市況など金融市場には不透明要因がくすぶる~
西濵 徹
- 要旨
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- ここ数年のブラジルでは物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる状況が続いたが、インフレは頭打ちに転じるとともに、中銀も利下げに動くなど環境変化の兆しが出ている。1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+3.14%と2四半期ぶりのプラス成長に、前年比ベースでも+2.5%に加速するなど景気底入れが確認されている。インフレ鈍化や金利低下、堅調な雇用が家計消費など内需を押し上げて景気底入れを促す一方、供給面では農林漁業の生産拡大がけん引役となるなどバランスを欠く動きがみられる。先行きは南部での洪水被害が景気、物価の両面で悪影響を与える懸念がある上、政策運営を巡る不透明感や原油など商品市況の調整の動きもレアル相場や株価の重石となっている。当面のブラジル金融市場においては実体経済を巡る動きに加え、政策運営や商品市況の動向が不透明要因となる懸念はくすぶっている。
ここ数年のブラジル経済は、異常気象による歴史的干ばつが相次ぐとともに、商品高や米ドル高に伴う通貨レアル安による輸入インフレの動き、コロナ禍一巡による経済活動の正常化も重なりインフレが昂進する一方、中銀は物価と為替の安定を目的とする大幅利上げを迫られたため、物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる展開が続いてきた。なお、その後は商品高や米ドル高の一巡を受けてインフレが頭打ちに転じたため、中銀は昨年後半以降に一転して利下げに動くなど景気下支えに舵を切る動きをみせたものの、実質金利(政策金利-インフレ率)は大幅プラスで推移するなど投資妙味の高さがレアル相場を下支えしてインフレ鈍化を促す好循環が続いてきた。結果、昨年半ば以降のインフレ率は中銀目標の域内で推移しているほか、年明け以降は頭打ちの動きを強めるなど実質購買力の押し上げに繋がるとともに、中銀による断続利下げの動きも景気を下支えすることが期待されてきた。こうした動きも追い風に1-3月の実質GDP成長率は前期比年率+3.14%と前期(同▲0.21%)から2四半期ぶりのプラス成長に転じるなど底打ちしているほか、中期的な基調を示す前年同期比ベースでも+2.5%と前期(同+2.1%)から加速するなど底入れの動きが確認されている。世界経済を巡る不透明感は輸出の足かせとなる展開が続く一方、インフレ鈍化による実質購買力の押し上げや金利低下に加え、堅調な雇用環境を追い風に家計消費は拡大の動きを強めるとともに、不動産投資の活発化や企業部門による設備投資需要も底入れしており、民需を中心とする内需の堅調さが景気底入れを促している。なお、内需の堅調さを反映して輸入が押し上げられたことを反映して純輸出(輸出-輸入)の成長率寄与度は前期比年率ベースで▲3.08ptと景気の足かせとなっているほか、在庫投資による成長率寄与度も同▲0.86ptと在庫調整が進んでいる様子がうかがえるなど、足下の景気実態は数字以上に力強いと捉えることができる。ただし、分野ごとの生産動向は内需の堅調さを反映してサービス業の生産が拡大しているほか、異常気象の頻発を理由に過去3四半期に亘って減少が続いた農林漁業の生産が拡大に転じたことが景気を押し上げている一方、製造業や鉱業部門の生産は力強さを欠いており、バランスの悪さが懸念される。足下では底入れの動きが確認されてきた製造業の企業マインドが頭打ちに転じているほか、先月に同国最南端のリオグランデドスル州を直撃した暴風雨と洪水被害を巡っては依然として復旧が進んでおらず、サプライチェーンの寸断が製造業のほか、農林漁業関連の生産に悪影響を与えることが懸念される状況が続いている。上述したリオグランデドスル州における洪水被害を巡っても異常気象による影響が指摘されており、今後も干ばつや洪水被害などが幅広く経済活動に悪影響を与える可能性に留意する必要性が高まっている。さらに、年明け以降のインフレは頭打ちの動きを強めてきたものの、昨年は実質金利のプラス幅の大きさという投資妙味の大きさを理由に強含みする動きがみられたレアル相場は一転して頭打ちの動きを強めており、中銀は4月にルラ政権の下で初めてレアル安阻止に向けた為替介入を実施している(注1)。その後も中銀は先月の定例会合においてレアル安に配慮して利下げ幅を縮小させるなど難しい対応に直面しており(注2)、上述した洪水被害が食料品などの供給懸念を理由とする物価上昇を招くことを警戒するなど、景気下支えに向けて一段の利下げを求めるルラ政権との間で摩擦が再燃する懸念も高まっている。また、先月には国営石油公社(ペトロブラス)のCEO(最高経営責任者)が事実上更迭されるなど政治介入が懸念される動きが顕在化しており(注3)、政策運営に対する不透明感の高まりがレアル相場や株価の重石となる動きがみられた。このところの国際金融市場では、中国経済の底打ちによる需要回復期待の一方で米国経済の勢いに陰りが出ているほか、世界最大の産油国である米国での原油増産の動きや中東情勢に対する見方も影響して国際原油価格は頭打ちしてきたが、今月2日のOPECプラスの閣僚会合では協調減産を1年延長する一方で有志国8ヶ国による自主減産を10月以降縮小することで合意しており(注4)、先行きの供給拡大が意識される形で国際原油価格は調整の動きを強めている。結果、足下においてレアル相場は一段と調整の動きを強めるとともに、主要株価指数(ボベスパ指数)も同様に上値が抑えられるなど物価上昇や景気の足かせとなり得る動きがみられる。洪水被害の影響が実体経済の足かせとなる懸念も含め、当面のブラジル市場を取り巻く環境には不透明要因がくすぶる展開が続くと見込まれる。



注1 4月3日付レポート「ブラジル中銀がルラ政権下で初の為替介入、レアル相場の潮目は変わったか」
注2 5月9日付レポート「ブラジル中銀は為替に配慮、政策運営で政府と再び軋轢の懸念も」
注3 5月16日付レポート「ブラジル石油公社CEO、現政権でも政治介入により事実上更迭」
注4 6月3日付レポート「OPECプラス、協調減産を2025年末まで1年延長で合意」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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