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2022.10.11
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7中全会開幕、習近平政権2期目を如何に総括するか
~3期目入りを前に習氏の個人崇拝に繋がる動きが一段と前進する可能性に要留意~
西濵 徹
- 要旨
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- 中国では今月16日に開幕する共産党大会で習近平指導部は異例の3期目入りを果たすとみられる。党大会を前に9日から政権2期目を総括する7中全会が開幕し、党規約の改正案などが討議される。昨年の6中全会での採択された歴史決議で盛り込まれた「二つの擁護」と「二つの確立」が盛り込まれるなど、習近平氏への忠誠義務が進むとみられる。他方、政治的に重要な時期ながらコロナ禍対応が経済の足かせとなる状況が続いているが、異論が挟めない状況にあることを勘案すれば、好転が見込める状況にはない。
- 他方、台湾問題では前のめりの姿勢が強まる可能性が高まっている。また、前回の共産党大会で党規約に盛り込まれた「習近平の中国の特色ある社会主義思想」が「習近平思想」と改称され、習氏が名実ともに毛沢東氏と並ぶ可能性も高まる。党主席ポストの復活については党内でも長老を中心に個人崇拝を警戒して根強い反対論があるなか、仮に復活すれば経済、政治両面で鄧小平理論の希釈化が進む。中国経済及び政治の異質性は世界経済の最大のリスク要因となる上、中国経済自身の重石となる可能性に要注意である。
中国では、今月16日に開幕する5年に一度の共産党大会(中国共産党第20回全国代表大会)において習近平指導部は異例の3期目入りが確実視されるなど、政治的に重要な時期を迎えている。さらに、共産党は9日に習近平政権2期目の間に行われる最後の全体会議である7中全会(第19期中央委員会第7回全体会議)を開催し、共産党大会を前にこの5年間の経済及び政治に関する基本方針が報告されるとともに、共産党の最高規則である党規約の改正案などが討議される。なお、全体会議を巡っては、昨年11月に開催された6中全会(第19期中央委員会第6回全体会議)において共産党結党100年を総括する『歴史決議』が採択され、このなかで習近平氏の全党の核心としての地位を断固として擁護し、党中央の権威と集中的・統一的指導を断固として擁護するという『二つの擁護』と、習近平氏の全党の核心としての地位の確立とその政治思想の指導的地位の確立という『二つの確立』が明記され、党及び国家のかじ取りをすべて習氏に託すスローガンとされた(注1)。さらに、今年9月に開催された党政治局会議においては、党規約に「重大な理論の観点と戦略的思想」を盛り込むことが決定されており、上述の『二つの擁護』と『二つの確立』の内容が党規約に盛り込まれることにより、党内では習近平氏に対する忠誠が義務化されることに繋がるとみられる。党規約の改正を巡っては、5年前に開かれた前回の共産党大会(中国共産党第19回全国代表大会)において「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」という習近平氏の名を冠した思想体系を行動指針に盛り込むことが決定されており、現職の指導者として自らの名を冠する思想体系を盛り込むのは毛沢東氏以来となるなど、習氏の党内における権威付けが図られてきた(注2)。そして、人事面で共産党の最高指導部である党中央政治局員を巡っては『七上八下(67歳以下は留任、68歳以上は退任)』という慣例が続いてきたものの、2018年の全人代(第13期全国人民代表大会第1回全体会議)で採択された憲法改正により国家主席及び副主席の任期に関する規定が撤廃されており、政権3期目に向けた『前裁き』が図られた(注3)。こうした動きに呼応するように、憲法改正に併せて2035年を目途とする「基本的に現代化された社会主義国」の構築や2050年を目途とする「現代化された社会主義強国」の実現を目指すなど、中長期的な目標を発表したほか、昨年の全人代(第13期全国人民代表大会第4回全体会議)においても2035年までの長期目標が討議されるなど、習政権指導部の任期延長や終身化を前提にした政策運営が行われてきた(注4)。他方、今年の全人代(第13期全国人民代表大会第5回全体会議)では全体的な政策運営の流れは従来からの『習近平路線』が強調される一方、コロナ禍やウクライナ情勢の悪化などが経済の不透明要因となるなかで慎重な政策運営が志向されるという難しい対応が迫られた(注5)。ただし、現実には共産党大会直前という極めて政治的に重要な時期が到来しているにも拘らず、足下の景気は世界的なインフレを受けた主要国中銀のタカ派傾斜による世界経済の減速懸念に加え、当局による『ゼロ・コロナ』戦略への拘泥が足かせとなる形で頭打ちの様相を強めている(注6)。今月1日の国慶節に伴う連休を巡っても、期間中の旅行者数は前年比▲18.2%とコロナ禍前の6割程度に留まったほか、住宅販売(面積ベース)も前年を4割程度下回るなど当局の行動制限が足かせとなったことが明らかとなるなど、同国経済を取り巻く状況は極めて厳しい。しかし、上述のように異論が差しはさめない状況にあることは、コロナ禍対応を巡る路線変更が行われる可能性が極めて低いことを意味しており、当面好転は見込めないであろう。
他方、習近平政権の3期目入りを巡っては、ウクライナ情勢の悪化を受けて喧しさが増している台湾問題に注目が集まっており、党規約において「祖国統一を完成する」としている台湾統一に関する文言を一段と表現を強める可能性も取り沙汰されている。なお、今年の全人代では台湾問題について「『九二共識』を堅持し、独立運動や外部勢力の干渉に断固反対する」とした従来からの姿勢が改めて強調されたが、8月のペロシ米連邦議会下院議長による訪台に対しては(注7)、その後に人民解放軍が台湾海峡や台湾周辺において軍事演習を活発化させたほか、台湾からの輸入品や台湾企業に対する経済制裁を課すなど様々な形で圧力を強める動きをみせている。仮に党規約において表現が強められれば、ここ数年人民解放軍が東シナ海や南シナ海において軍事的威嚇を強める動きがみられるが、習近平指導部3期目においては台湾統一を前提にこうした動きが加速度的に広がりをみせるとともに、アジア太平洋地域などでの存在感向上に向けた動きが進むなど地域全体の新たな火種となる可能性も高まる。また、党規約の改訂を巡っては、前回の共産党大会において盛り込まれた「習近平の中国の新時代の特色ある社会主義思想」という習近平氏の名前を冠した政治思想について『習近平思想』に改められる可能性も取り沙汰されている。なお、党規約に名前のみを記した政治思想が組み入れられているのは毛沢東思想、鄧小平理論のみであるが、鄧小平理論はあくまで経済、政治、軍、文化に関する理論として規定されていることを勘案すれば、習近平思想への名称変更は名実ともに習近平氏が『建国の父』である毛沢東氏と並ぶ最高指導者となることを意味している。さらに、習近平指導部の3期目入りを前に議論が喧しさを増していることのひとつに最高指導者の『地位』を巡る問題がある。中国共産党においては党主席という最高指導者の地位が規定されており、任期に関する規定がないほか、人民解放軍や人民武装警察部隊の統帥権を有するなど絶大な権限を有し、過去には毛沢東氏のほか、華国鋒氏と胡耀邦氏が就任した経緯があるものの、現実には毛沢東氏を象徴する形での最高ポストとされてきた。他方、こうした絶大な権限を背景に毛沢東氏への権力集中や個人崇拝が後押しされた結果、文化大革命に至ったとの反省から鄧小平氏の下で党主席ポストは廃止され、その後においては集団指導体制に移行された経緯がある。鄧小平氏の下では経済面でも改革開放路線を推し進めることにより2000年代以降における同国経済の高い経済成長を実現する礎となってきたものの、習近平指導部はここ数年『共同富裕』のスローガンの下に軌道修正を進めるなど(注8)、鄧小平理論の色合いを薄める取り組みが進んでいる。さらに、仮に習近平氏が党主席ポストの復活に動けば、鄧小平氏が政治面で進めた集団指導体制への改革が大きく改められることとなり、政治面でも鄧小平理論の色合いが一段と薄まることに繋がる。なお、現時点において習近平氏は共産党総書記、国家主席、中央軍事委員会主席を兼ねている上、上述のように党の核心として歴代の最高指導者を上回る権力を掌握しているほか、憲法改正により国家主席として事実上の終身化も可能となっている。他方、党主席に就任すれば、習近平氏は政治思想面のみならず、地位の面でも名実ともに毛沢東氏に並ぶことを意味しており、過去の歴代最高指導者を圧倒する存在となることとなる。ただし、党内においては長老を中心に習近平氏への個人崇拝が進むことを警戒する向きも根強いとされるなか、残り少ない時間でこの問題をクリアするのは容易ではないとみられる。また、習近平指導部が推進する共同富裕の背後では、市場経済の後退を懸念して『人民経済』という言葉に注目が集まっており、財産の共有制や企業に対して社会全体の発展を追求させるなど計画経済に繋がる内容は同国経済を大きく『逆行』させる可能性も考えられる。上述のように、2000年代以降の中国経済の高い経済成長を巡っては改革開放路線に基づく市場経済への移行と世界経済との結び付きの強化にあったと考えられるが、仮に習近平指導部が3期目入りする背後で市場経済の後退が進むことになれば、分断の動きが世界経済の足かせとなり得るほか、人口減少局面入りが近い中国経済の重石となることは避けられない。その意味では、先行きの世界経済にとって中国の経済及び政治の『異質性』は最大のリスク要因となり得ることに注意する必要があろう。
注1 2021年11月8日付レポート「中国・6中全会開幕、習近平指導部が採択する「歴史決議」とは」
注2 2017年10月25日付レポート「習政権2期目は「側近政治」の色合い強める」
注3 2018年3月20日付レポート「全人代閉幕、習政権は長期的野望に向けて前進」
注4 2021年3月5日付レポート「中国2021年全人代、成長率目標(6%以上)は数値より質向上の証か」
注5 2022年3月7日付レポート「2022年全人代開幕、中国政府はなによりも「経済の安定」を重視」
注6 9月30日付レポート「中国景況感はゼロ・コロナに伴うサービス業の悪化が深刻に」
注7 8月3日付レポート「ペロシ米下院議長の台湾訪問、米中関係や東アジア情勢への影響は」
注8 2021年8月31日付レポート「習近平指導部が盛んに訴える「共同富裕」の向かう先とは」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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阿原 健一郎

