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2022.04.13
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中国はロシアの経済制裁の「抜け穴」になっている模様
~沿海部での行動制限は輸入の重石となるも、ロシアからの輸入はその影響を受けず堅調に推移~
西濵 徹
- 要旨
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- ロシアによるウクライナ侵攻を機に欧米諸国などはロシアへの経済制裁を強化しており、外資系企業がロシア事業の停止・撤退に動いたことは金融市場を大きく揺さぶった。しかし、その後は外国人投資家による取引縮小の背後で資本規制や金融引き締め、ルーブルの実需創出に向けた取り組みも追い風に影響は一巡しつつある。他方、巨額の戦費負担にも拘らずロシアは強硬姿勢を崩さず、ロシアの資源輸出が止まっていないことが事実上の「抜け穴」になったとみられた。こうしたなか、3月の中国の対ロ輸入額は前年比+26.4%と引き続き高い伸びが続き、輸入全体が減少したのと対照的な動きがみられた。沿海部での行動制限が貿易に悪影響を与える一方、関係強化の動きや影響が及びにくいことが中ロ間の貿易を押し上げているとみられる。貿易決済面でも「抜け穴」が見込まれるなか、中ロは今後も様々な面で結び付きを強めると見込まれる。
ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに、欧米諸国などはロシアに対する経済制裁を強化する動きをみせており、その後も事態が悪化の度合いを強めていることを受けて制裁対象を広げるなど世界経済からロシアを『締め出す』動きを強めている。なお、欧米諸国などによる経済制裁強化の動きに加え、ウクライナ情勢の悪化によりロシアに進出する外資系企業はレピュテーションリスク(評判リスク)を警戒してロシア事業の停止ないし撤退に動く流れが広がり、国際金融市場ではロシアの通貨ルーブル相場が一時最安値を更新したほか、主要株価指数も大きく調整する動きがみられた。しかし、足下のルーブル相場は侵攻前の水準を回復するなど底入れが進んでいるほか、1ヶ月に亘って取引停止状態に追い込まれた株式市場についても、先月末に取引が再開されて以降は株価が底入れするなど状況は改善している。こうした背景には、欧米諸国などによる経済制裁の影響で外国人投資家の取引が縮小する一方、ロシア政府は資本規制を実施するとともに、ロシア中銀も大幅利上げによる金融引き締めに動くなどの取り組みを進めたことが影響したと考えられる。さらに、ロシア政府は同国に経済制裁を科す「非友好国」に対する貿易決済をルーブル建で行うようルーブルに対する実需創出を目指す動きもみせており、こうしたこともルーブル相場を下支えする一因になっているとみられる。他方、ウクライナ侵攻を巡っては、ロシアにとって1日当たり巨額の戦費負担を生じさせており、その長期化により財政面の圧迫が進んでいるとみられるにも拘らず、プーチン政権は強硬姿勢を崩していない。この背景には、現時点において原油や天然ガスなどロシアのエネルギー資源に依存するEU(欧州連合)諸国がロシアからの輸入を停止していないほか、ロシアと関係を深める国々に対する輸出拡大の動きが事実上の『抜け穴』になることが指摘されてきた。なかでも中国は、今秋に開催予定の共産党大会で習近平指導部が3期目入りを目指すなど政治的に重要な時期を控えるにも拘らず、足下では習近平指導部が主導する『ゼロ・コロナ』戦略が経済活動の足かせとなるとともに、国際商品市況の上振れが企業部門を中心にインフレを招くなど景気に冷や水を浴びせる懸念が高まっている(注1)。よって、習近平指導部が目指す経済の安定実現の観点からは中国がロシアと接近することが見込まれたなか(注2)、先月末に開催された中ロ外相会談で両国は二国間関係の発展と協力強化に関して「一段と決意を固めた」と述べるとともに、欧米諸国などのロシアに対する経済制裁を批判するなど、強力深化に向けて前進する考えが示された。こうしたことから、ロシアにとってはEUや米国、日本などへの輸出を縮小させる一方、中国をはじめとする関係国への輸出拡大によりその影響を相殺することを狙っているとみられるなか、3月の中国の対ロ輸入額は前年同月比+26.4%と引き続き高い伸びとなるなど、輸入額全体(同▲0.1%)が予想外に弱含んでいる状況とは対照的な動きをみせていることが示された。なお、輸入全体に下押し圧力が掛かっている背景には、原油をはじめとする国際商品市況の上昇を受けて輸入量を抑える動きが広がったことに加え、中国国内では長江デルタ地域や珠江デルタ地域を中心に新型コロナウイルスの感染再拡大の動きが広がり、サプライチェーンに悪影響が出ていることも影響しているとみられる。長江デルタ地域や珠江デルタ地域は海外貿易の要であり、これらの地域におけるロックダウン(都市封鎖)による活動制限の長期化は今後も貿易活動に悪影響を与えることは必至と見込まれる。他方、ロシアとの貿易を巡っては鉄道をはじめとする陸路やパイプラインなどが活用されており、上海のロックダウンによる直接的な影響が及びにくいことも影響しているとみられる。中国景気の減速は近年中国経済におんぶに抱っこの状況にある世界経済にも影響を与えると見込まれる一方、ロシアとの貿易取引が円滑に進められれば、ロシアにとっては欧米諸国などによる経済制裁の『抜け穴』となる状況が続くと見込まれる。貿易決済を巡っては、中国人民銀行による人民元建国際銀行間決済システム(CIPS)による『抜け穴』も予想されるなど(注3)、中国が様々な面でロシアとの結び付きを強める可能性は高まっていると判断出来よう。

注1 4月11日付レポート「中国景気の行方もゼロ・コロナ戦略とウクライナ情勢に揺さぶられる」
注2 3月9日付レポート「中国当局が目指す「経済の安定」の観点からみたウクライナ問題」
注3 2月28日付レポート「「SWIFT排除」で一気に状況が怪しさを増すロシア」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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