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2022.02.03
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ブラジル中銀は大幅利上げを維持も、3月会合では利上げ幅縮小か?
~財政悪化による物価上振れリスクはくすぶり、3月以降も追加利上げに追い込まれるリスクは残る~
西濵 徹
- 要旨
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- ブラジルは度々新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われたが、昨年後半以降はワクチン接種も追い風に感染動向は改善してきた。しかし、年明け以降はオミクロン株による感染再拡大の動きが強まり、足下では過去の「波」を上回っている。感染動向の改善を受けて昨年末にかけて人の移動は底入れするなど景気回復が期待されたが、年明け以降は一転して頭打ちしている。昨年来のブラジル経済は物価高と金利高の共存が景気の足かせとなる状況が続くなか、スタグフレーションに陥る懸念が一段と強まっていると判断出来る。
- 昨年来のインフレ率は中銀の定める目標を上回る推移が続くなか、中銀は断続的に大幅利上げを実施するなどタカ派姿勢を強めてきた。足下のインフレ率は依然高止まりするなか、中銀は2日の定例会合で8会合連続の利上げを決定し、利上げ幅も3会合連続で150bpとしている。先行きの政策運営については、ディスインフレが定着するまでタカ派姿勢を維持するとしつつ、次回会合における利上げ幅の縮小を示唆した。ただし、財政状況の悪化によりインフレの上方リスクが意識されやすい状況のなか、最終的に3月以降も追加利上げに追い込まれる可能性も残る。ブラジル経済を巡る状況は一段と厳しい展開が続くと予想される。
ブラジルでは、昨年半ばにかけて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新規陽性者数が再び拡大傾向を強める動きがみられたものの、ワクチン調達を巡る様々な疑惑にも拘らず(注1)、ワクチン接種率は新興国のなかでは比較的高水準である上、昨年10月からは追加接種(ブースター接種)も開始されるなど着実に前進する動きもみられる。さらに、季節的に冬から夏に移行していることも追い風に、新規陽性者数は昨年6月末を境に頭打ちしたほか、昨年末には人口100万人当たりの新規陽性者数(7日間移動平均)10人程度となるなどピーク(369人:昨年6月22日)から大きく減少するとともに、医療インフラへの圧力後退を受けて死亡者数の拡大ペースも鈍化してきた。しかし、昨年末に南アフリカで確認された新たな変異株(オミクロン株)はその後に全世界的に感染拡大の動きが広がりをみせており、世界経済にとって新たなリスク要因となることが懸念されている。なお、オミクロン株についてはワクチン接種済の人が感染するブレークスルー感染が多数確認されるなど、感染力は他の変異株に比べて極めて高いとみられる一方、陽性者の大宗は無症状者や軽症者が占めるなど重症化率は低いとみられている。よって、欧米など主要国においてはワクチン接種を前提に経済活動の正常化を維持する『ウィズ・コロナ』戦略が採られており、ブラジルでは元々新型コロナウイルス及びワクチンに懐疑的なボルソナロ大統領の下で連邦政府は経済活動を優先する対応を採ってきたため、感染動向の改善を受けて景気の底入れが進むと期待された。しかし、年明け以降はブラジル国内においてもオミクロン株による感染再拡大の動きが広がりをみせており(注2)、足下においては人口100万人当たりの新規陽性者数(7日間移動平均)は900人近くに達するなど昨年までの『波』を大きく上回り、新規陽性者数の急拡大を受けて医療インフラに対する圧力が強まったことで死亡者数の拡大ペースも再び加速感を増している。オミクロン株の感染拡大に見舞われている国々においては比較的早期にピークアウトを迎える動きがみられるなか、ブラジルについてもピークアウトの兆しがうかがえるなど今後は感染動向が改善に向かう可能性はある。他方、感染動向の急激な悪化を受けて、昨年末にかけて底入れの動きをみせてきた人の移動に年明け以降は一転して下押し圧力が掛かっているほか、こうした動きを反映して製造業の企業マインドも一段と悪化するなど、景気を取り巻く状況が一変する兆しもみられる。昨年来のブラジル経済を巡っては、一昨年来の『100年に一度』とも称される大干ばつが幅広い経済活動の足かせになり、物価高を招いてきたほか、中銀による『タカ派』姿勢を受けた金利高の共存も影響して景気に下押し圧力が掛かる動きが続いており、スタグフレーションに陥る懸念が一段と強まりつつある。


ブラジルは電力エネルギーの大宗を水力発電に依存しているが、一昨年来の大干ばつの影響で火力発電の稼働を余儀なくされており、国際原油価格の上昇を受けてエネルギー価格が大きく押し上げられるなか、国際金融市場での通貨レアル安による輸入物価の押し上げも重なり、インフレ率は中銀の定めるインフレ目標を大きく上回る推移が続いている。こうしたことを受けて、昨年以降中銀は断続的な利上げ実施に動くとともに、大幅な利上げを繰り返すなど『タカ派』姿勢を強める展開をみせてきた。なお、直近12月のインフレ率は前年比+10.1%とピークアウトする兆しがうかがえる一方、コアインフレ率は同+7.6%と一段と加速感を強める動きをみせており、ともにインフレ目標を上回る推移が続いている。こうしたなか、中銀は2日に開催した定例の金融政策委員会において8会合連続の利上げを決定し、利上げ幅も10月及び12月の定例会合と同じ150bpの大幅利上げを維持した。これにより政策金利は10.75%と2017年7月以来の二桁となる。会合後に公表された声明文では、今回の決定も「全会一致」でなされた一方、世界経済について「依然として厳しい環境にある」との認識を示すとともに、同国経済について「昨年10-12月は見通しをやや上回った模様」としつつ、物価動向について「引き続きネガティブな状況が続いている」とし、物価見通しは「今年は+5.4%、来年は+3.2%になる」とした上で、政策金利の見通しは「今年前半のうちに12.00%まで上昇した後に年末時点は11.75%、来年末時点は8.00%に低下する」との見方を示した。なお、政策金利の上限を12.00%としていることは、次回会合以降における利上げ幅を125bp以下に縮小することを示唆していると捉えられる。他方、物価動向を巡るリスクについては上下双方存在するとし、「国際商品市況の調整が進めば下向きになる」としつつ、「追加的な財政出動やそれに伴う財政悪化はリスクプレミアムを増大させる」ほか「財政状況に関する不確実性はインフレ期待の不安定化を招き、リスクバランスを上方シフトさせる」として、上方リスクが大きいとの認識を示した。その上で、先行きの政策運営について「ディスインフレが定着してインフレ率が目標近傍で固定するまで足下の戦略を維持する」とした上で、「次回会合については現状金利の引き上げペースの縮小が最適とみられる」と利上げ幅の縮小を示唆する動きをみせている。こうした背景には、ボルソナロ大統領が今年10月に実施される次期大統領選での再選を目指しており、昨年末からルラ元政権下で実施された低所得者層向け現金給付制度(ボルサ・ファミリア)に代わって給付額を増大させた新制度(アウリシオ・ブラジル)を開始させているほか、インフレ対策を理由に燃料税の引き下げを提案するなど財政状況の急速な悪化が懸念されていることがある。足下の国際金融市場においては、米FRB(連邦準備制度理事会)の『タカ派』傾斜による米ドル高が意識される環境ではあるものの、国際原油価格の上昇を追い風に通貨レアル相場は底堅い動きをみせているほか、主要株価指数(ボベスパ指数)も底入れするなど資金流入の動きが続いているとみられる。こうした動きも次回以降における利上げペースの縮小を後押ししているとみられる一方、状況如何では3月の次回会合以降も追加利上げに追い込まれる可能性はくすぶる。ブラジル経済を巡る状況は厳しい展開が続くと予想される。


注1 2021年10月21日付レポート「ブラジル、大統領の新型コロナ禍対応の「過失」追及の動きが強まる」
注2 1月20日付レポート「ブラジルも感染動向急変、スタグフレーションが一段と深刻化するか」
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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