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- 内外経済ウォッチ『アジア・新興国~結束に腐心するOPECプラス有志7カ国~』(2026年6月号)
6月は7ヵ国で日量18.8万バレルの増産合意
主要産油国の枠組みであるOPECプラスの7カ国(サウジアラビア、ロシア、イラク、クウェート、カザフスタン、アルジェリア、オマーン)は、5月3日にオンラインで閣僚会合を開催した。今回の有志国会合は、5月1日付でUAE(アラブ首長国連合)がOPEC(石油輸出国機構)から脱退したことを受け、初めて同国を除く7カ国体制で開催された。
中東情勢の緊迫化をきっかけに原油価格が急上昇したことを受けて、有志国は4月、5月と2ヶ月連続で日量20.6万バレルの増産で合意した。しかし、UAEのOPEC脱退により、OPECプラスの世界産油量に占める割合は45%程度に低下している。そのうえ、OPECプラス全体としての余剰生産能力も約2割低下しており、需給調整能力の低下が懸念された。
こうしたなか、6月の生産量について、過去2ヶ月のUAEを除いた分に相当する日量18.8万バレルの増産で合意した。今回の決定は協調体制の継続を確認した形であり、世界の原油需要の0.2%程度に当たる小幅増産を容認する一方、枠内の盟主であるサウジが主導する生産調整を通じて価格形成面で影響力を維持したい思惑がうかがえる。
OPECプラスが価格形成で主導権を握る思惑も
今回の合意はホルムズ海峡の通行再開に備えて増産に動く用意に加え、UAEが離脱した後もOPECプラス全体として従来通りのアプローチを維持する考えを改めて示したと捉えられる。一方、表向きは小幅増産姿勢を維持した格好ながら、ホルムズ海峡の事実上の封鎖という供給制約要因を勘案すれば、物理的な供給拡大は限定的であり、あくまでOPECプラスが主導権を握っていることを対外的に誇示することが目的との見方もできる。一方、対内的には枠組みの維持に腐心することにより結束を演出することが重視された可能性がある。
先行きはOPECプラス内で増産競争のリスクも
しかし、UAEが増産に舵を切ったことで、枠内においてほころびが表面化するリスクは残る。さらに、中東情勢が安定化してホルムズ海峡の通行が再開されれば、湾岸産油国をはじめとする枠内の国々は一転して増産に動き、増産競争に発展していく可能性は高まっている。
背景には、枠内の国々のなかで過去に増産に向けた動きが活発化していたことがある。2023年末にアフリカ2位の産油国であるアンゴラがOPECを脱退した背景にも、OPECプラスが定める生産枠と自国の目標生産量との乖離が影響したとされる。したがって、今後UAEが大幅増産に動いて石油収入を増やすことに成功すれば、枠内の国々のなかで生産枠に対する不満が再び高まることは充分に考えられる。
原油価格の動向は引き続き中東情勢次第の展開
今回の決定にもかかわらず、湾岸産油国にとってはホルムズ海峡の事実上の封鎖という供給制約を理由に事実上の減産を余儀なくされる状況は変わらない。有志国は4月以降に段階的な増産に動いたものの、湾岸産油国はすでに貯蔵施設が不足しているうえ、イランによる関連設備への攻撃により実際の生産量は低迷している。なかでもサウジアラビアは、今回の決定で6月の生産枠は日量1029.1万バレルに引き上げられたものの、3月の生産量は報告ベースで同776万バレルにとどまる。中東情勢の見通しが立たないなかでは、今回の決定も「絵に描いた餅」となる可能性は極めて高い。こうしたことから、原油価格の動向は引き続きイラン情勢次第の展開が続くとみられる。
西濵 徹
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 西濵 徹
にしはま とおる
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経済調査部 主席エコノミスト
担当: アジア、中東、アフリカ、ロシア、中南米など新興国のマクロ経済・政治分析
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西濵 徹

