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2025.08.19
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【最新分析】メタボ該当者の高止まり続く
~特定健診データから読み解く最新動向と4つのアプローチ~
谷口 智明
- 要旨
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- 2023年度特定健診の実施状況等のデータに基づき、メタボリックシンドローム(以下、メタボ)該当者・予備群の課題を考察し、今後の対策について4つの視点から私見を述べる。
- メタボ該当者の割合は高水準・横ばい傾向にある。男性は女性の3倍で、平均して4人に1人が該当する。男女ともに年齢上昇に伴い割合は高まり、男性の70~74歳では約35%に達する。保険者別では、市町村国保でメタボ該当者・予備群の割合が高く、退職等に伴い被用者保険からシニア層が移行してくることが背景の一つと考えられる。また、メタボ該当者・予備群のうち、高血圧や糖尿病等に係る複数の治療薬を服用する人の割合も増加傾向にある。
- 2023年度の特定健診実施率は59.9%に留まり、国の目標である70%には届いていない。約4割が未受診という状況の下、糖尿病のように自覚症状の乏しい疾患の早期発見には、健診が極めて重要といえる。
- これらの課題を踏まえ、メタボ該当者・予備群の割合を効果的に引き下げるための4つのアプローチを論じる。第1に、性・年齢に着目した対策の強化である。男性の飲酒や喫煙、女性の代謝・ホルモン変動といった性差を考慮し、メンタルヘルス支援も含む行動変容を促す介入が重要だ。
- 第2に、ライフステージに応じた保険者のシームレスな支援体制の構築である。退職等により健康管理の担い手が企業から地域へ移行する際にも支援が途切れないよう、健康データ連携など横断的なプラットフォームの構築が求められる。
- 第3に、薬剤服用者に対する生活習慣改善アプローチの強化である。多職種が連携し、薬物療法と生活習慣の両面から改善を促すとともに、教育プログラムやアプリ等を活用した支援が不可欠だ。
- 第4に、国の目標を大幅に下回る特定保健指導の実施率向上である。こうした取り組みを一体的に推進することは、わが国における「健康長寿・エイジレス社会」の実現と、社会全体の活力向上に資するものと期待される。
- 目次
1. メタボリックシンドロームとは
厚生労働省より「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況について」が公表された。「特定健康診査・特定保健指導」(以下、特定健診・特定保健指導)は、2008年4月から、40歳以上75歳未満の医療保険の加入者を対象に、予防・健康づくりに資する新たな仕組みとして導入された。メタボリックシンドローム(以下、メタボ)に着目した特定健診によって生活習慣病のリスクを早期に発見し、その結果を踏まえて特定保健指導を行う。これにより、運動習慣や食生活、喫煙といった生活習慣の見直しを促し、内臓脂肪の減少等を通じて生活習慣病の予防・改善につなげる。
なお、メタボ該当者・予備群は、資料1のとおり、特定健診において腹囲や追加リスク等の状況に応じて判定される。

筆者は、2024年5月に「わが国のメタボ人口の将来推計~2050年度までに400万人減の一方、メタボ該当割合引き下げが急務~」を執筆した。そこで、今回、2025年5月に公表された最新データ「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況」等も踏まえ、メタボ該当者・予備群の課題について考察するとともに、メタボ対策に向けた私見を述べる。
2. データからみるメタボ該当者・予備群の4つの課題
(1)男性・シニア層で高止まりするメタボ該当者の割合
男女を合わせた全受診者に占めるメタボ該当者の割合は16.6%で、特定健診が導入された2008年度の14.4%と比べて約2ポイント上昇している。そこで、まず2008年度からのメタボ該当者の割合の推移について、性・年齢階級別に確認する(資料2)。

2023年度のメタボ該当者割合の平均は男性24.7%、女性7.2%で、男女ともに前年度と比べて大きな変化はなかった。男性では依然として約4人に1人が該当し、高止まり傾向にある。
同じ年齢階級で比較すると、男性の該当者割合は概ね女性の3倍程度高く、男女ともに年齢が上がるにつれて割合も高まっている。特に70~74歳で該当者割合が最も高く、男性約35%、女性約13%にのぼる。特定健診対象者の中でも相対的に人口が多いシニア層の健康管理は、引き続き重要課題といえる。
(2)保険者の種類別にみた特定健診対象者数とメタボ該当者・予備群の割合
(1)では、全受診者を対象に、性・年齢階級別のメタボ該当者割合の推移を確認した。一方、特定健診の対象者が加入する保険者の種類によって年齢構成や職業、生活環境等は異なることから、健康状態や生活習慣病のリスクにも影響が及ぶと考えられる。そこで、主な保険者の種類別・年齢階級別に、2023年度の特定健診対象者数を確認する(資料3)。

市町村国保は、主に75歳未満の自営業者やフリーランス、パート・アルバイト、企業を退職したシニア層やその配偶者等が加入する。一方、被用者保険(協会けんぽ、健保組合、共済組合)は主に企業の従業員とその被扶養者が対象となる。
資料3をみると、市町村国保の特定健診対象者数は、65歳以降で顕著に増加している。これは、主に企業の退職に伴い被用者保険から居住地の市町村国保へ移行するためと考えられる。被用者保険の被扶養者についても同様の動きとなる。ちなみに、男女別にみても同様の傾向であった。
なお、2023年度の特定健診実施率(受診者/対象者)は、全体で59.9%のところ(注1)、保険者の種類別では、健保組合が82.9%と最も高く、次いで共済組合82.6%、協会けんぽ58.7%となっており、市町村国保は38.2%に留まる。
次に、保険者の種類別・性・年齢階級別でメタボ該当者・予備群の合計割合(2023年度)を確認する(資料4)。

資料4によると、男性では全ての年齢層で市町村国保の受診者が最も高く、女性でも概ね市町村国保が高かった。
この結果から、同じ年齢層でも加入する保険者の種類によってメタボ該当者・予備群の割合に差が生じていることがわかる。特に市町村国保では、同割合が高い傾向にある65歳以上の対象者が他保険者から移行してくることに加え、人数も最も多くなるという構造的な課題が浮き彫りになった。
(3)生活習慣病関連の治療薬を服用している人の割合
次に、メタボ該当者・予備群において、高血圧症・糖尿病・脂質異常症など生活習慣病の治療に係る薬剤を服用している人の割合をみてみよう(資料5)。

「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」のデータを遡ると、メタボ該当者割合の増加とともに、高血圧症・糖尿病・脂質異常症の治療に係る薬剤を1種類以上服用している人の割合も増加傾向にある。2023年度には、メタボ該当者・予備群のうち1種類以上の薬剤を服用している人の割合は54.5%に達し、約2人に1人が服薬治療を受けていることになる。疾患リスクが早期に発見され、適切な治療につながっている側面がある一方、2種類及び3種類の薬剤を服用している人の割合が右肩上がりとなっている。食事や運動などの生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合もあり、薬物療法を併用するケースが増えている状況を示しているとも考えられる。「薬を飲んでいるから大丈夫だろう」という安心感を持つこともあろうが、かえって生活習慣を見直そうとする意欲を弱めてしまうのではないかという懸念も否めない。
(4)主な傷病別にみた「自覚症状なし」での受診理由
前述の通り、2023年度の特定健診実施率は59.9%で、前年度(58.1%)より上昇したものの、国の目標である70%以上には届いていない。特定健診などの健診には、症状がない段階で体の異常や病気の兆候を見つける役割があるが、依然として特定健診対象者の約4割(約2,087万人)は受診していない(注1)。特に市町村国保で約6割、協会けんぽで約4割が未受診である。
ここでは、厚生労働省が公表する別データになるが、「令和5(2023)年受療行動調査」に基づき、主な傷病分類(傷病)別に、自覚症状がなかった人が受診した理由について確認しておく(資料6)。

受診理由のうち、「健康診断(人間ドックを含む)で指摘された」割合が高い傷病は、糖尿病等の「内分泌,栄養及び代謝疾患」や、前立腺や乳房の悪性新生物等の「新生物<腫瘍>」、高血圧性疾患等の「循環器系の疾患」といった、生活習慣病や悪性腫瘍等が並ぶ。こうした疾患では、早期発見・早期治療のために定期的な健診やがん検診を受けることが極めて重要といえよう。
3. メタボ該当者・予備群の割合の引き下げに向けた4つのアプローチ
最後に、ここまでの考察を踏まえ、メタボ該当者・予備群の割合を効果的に引き下げるためのアプローチについて、次の4つの視点から私見を述べる。
(1)性・年齢に着目した対策の強化
男性のメタボ該当者の割合は女性の約3倍に達しており、かつシニアになるほど割合も高まることから、性・年齢を考慮したアプローチが重要である(注2)。例えば男性の場合、飲酒や喫煙、食習慣や運動不足といった生活習慣に加え、内臓脂肪が蓄積しやすい体質的な特徴も関係しているとの見方がある。一方、女性は男性より該当者の割合は低いものの、女性特有の代謝やホルモンの変動等も考慮し、ライフサイクルに応じた介入も重要だ。また、男女を問わずストレス等の心理的側面も影響するだろう。こうした行動様式や健康意識等を踏まえた介入策に加え、メンタルヘルスも支援することで継続的な行動変容を促す必要がある。
(2)ライフステージに応じた保険者のシームレスな支援体制の構築
特定健診の対象者(40歳以上75歳未満)は、組織の中核を担う働き盛りの世代からセカンドライフを迎えるシニア世代まで多岐にわたる。特に65歳以上では、退職等により企業の健康管理の枠組みから外れる人が増加する。
こうしたライフステージの移行期には、主として健康管理の担い手が企業及び被用者保険から地域へ移るため、支援をシームレスにつなぐことが不可欠だ。例えば、医療DXを推進して保険者間で健診データを連携させたり、AI技術等を活用して健診データを分析し高リスク群を早期に可視化・フォローしたりできる、横断的な健康管理プラットフォームの構築が求められる。その結果、個別最適化されたきめ細かな健康支援も促進されるだろう。但し、その実現には健診データの標準化や個人情報保護といった課題もあり、個人の健康を生涯にわたって支援するためには、それらを乗り越えなければならない。また、自治体や地域社会が主体となり、保険者の垣根を越えて継続的に参加できる健康支援プログラム等を構築し、利用を促すことも重要である。
(3)薬剤服用者に向けた生活習慣改善アプローチ
前述のとおり、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られない場合もあり、薬物療法を継続的に併用することは必ずしも否定されることではない。一方で、生活習慣の改善が進まないまま薬物療法に依存し続ける可能性がある点にも留意が必要である。メタボ該当者の年間平均医療費は非該当者よりも約9万円高いという報告もあり(注3)、適切な治療と合わせて日々の生活習慣の改善を継続することで医療費の増加を抑え、生活の質(QOL)の低下を防ぐことが肝要だ。
例えば、医師・管理栄養士・理学療法士・保健師など多職種の連携により、薬物療法と生活習慣の両面から改善を促す。また、生活習慣を改善するスキルや知識を習得できる教育プログラム、高血圧等の治療用補助アプリの開発・活用を通じた支援も不可欠である(注4)。薬物療法と生活習慣の改善を両輪と位置づけ、最適な体質改善を目指す介入手法の確立が求められる。
(4)特定保健指導の実施率向上
特定保健指導とは、特定健診の結果に基づき、メタボや生活習慣病のリスクが高い人に対して行われる健康支援のことである(注5)。医師や保健師、管理栄養士といった専門スタッフが、運動習慣や食生活、喫煙等の生活習慣の改善に向けた個別指導を行う。
2023年度の実施率(特定保健指導終了者/同対象者)は27.6%(前年度26.5%)で、国の目標である45%には届かず、低い状況が続いている。社会的に「生活習慣病=自己責任」といったイメージが根強く残っており、積極的な受診行動につながりにくい一因になっているとの指摘もある。特定保健指導の実施率向上は、(1)や(2)の実効性を高める上でも重要であり改善が求められる。但し、本稿では、特定健診に基づくメタボ・予備群データ等の分析を中心に論じているため、同実施率改善に関する検討は別の機会に譲りたい。
国民の健康づくりの基本方針である「健康日本21(第三次)」は、目標の一つとして「メタボリックシンドローム該当者・予備群の減少」を掲げている(注6)。この対策は、個人の生活習慣病を予防するだけでなく、健康寿命を延伸し、社会全体の健康資本を維持・向上させる国家戦略の一翼を担うものである。まずは、私たちが特定健診を確実に受診することが肝要だ。その上で、企業、自治体、地域社会、個人が切れ目なく連携し、性、年齢、ライフステージなど多様な特性に応じた重層的な支援体制を構築することが求められる。こうした取り組みを一体的に推進することは、わが国における「健康長寿・エイジレス社会」の実現と社会全体の活力向上に資するものと期待される。
【注釈】
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厚生労働省「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況」によると、2023年度の特定健診対象者数は約5,210万人、受診者数は約3,123万人で、全体の受診率は59.9%。この差から未受診者数は約2,087万人となる。
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厚生労働省健康・生活衛生局「標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)」によると、高齢者への健診・特定保健指導では、メタボ対策に重点を置いた生活習慣病対策から、体重や筋肉量の減少、低栄養等によるロコモティブシンドロームやフレイル等の予防・改善に着目した対策に徐々に転換することも必要であると明示している。これは、単にメタボを指標にした対策では、筋力低下や身体機能の維持といった重要な側面が見落とされる恐れがあるためである。
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「平成26年版厚生労働白書」P87参照。
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民間企業が開発した「高血圧治療補助アプリ」が2022年9月に日本で初めて保険適用された。このアプリは「高血圧治療ガイドライン(日本高血圧学会)」が推奨する生活習慣の改善(減塩、減量、運動、節酒、睡眠、ストレス管理)を支援するもので、医師の治療を補助することを目的とした医療機器プログラムである。医療機関において医師から処方され、患者がスマートフォンにダウンロードして使用する。
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特定保健指導の対象者の選定基準は以下の通り。特定保健指導は加入する医療保険者により実施される。但し、糖尿病、高血圧または脂質異常症の治療に係る薬剤を服用している人は、特定保健指導の対象とならない。なお、本選定基準は資料1メタボリックシンドロームの判定基準とは異なる点に留意する必要がある。

- 「健康日本21」は、健康増進法に基づいて策定される「国民の健康増進の総合的な推進を図るための基本的方針」のことで、正式には「二十一世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」という。こうした健康づくり運動は、1978年度から累次にわたり取り組まれており、2000年度からスタートした「第3次国民健康づくり」以降、「健康日本21」と呼ばれている。2024年度からは2035年度までの12年間を計画期間とする「健康日本21(第三次)」がスタート。基本的方向は、①健康寿命の延伸・健康格差の縮小、②個人の行動と健康状態の改善、③社会環境の質の向上、④ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりの4つである。こうした方向に基づき、50項目程度の具体的目標を設定し、中間及び最終評価が行われることになっている。
【参考文献】
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厚生労働省(2025)「2023年度特定健康診査・特定保健指導の実施状況」
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谷口智明(2025)「「健診」放置してない?約3割は「自覚症状なし」で外来受診~無症状でも忍び寄る病、データが示す受診のカギはやはり「健診」~」」
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谷口智明(2024)「わが国のメタボ人口の将来推計~2050年度までに400万人減の一方、メタボ該当割合引き下げが急務~ 」
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谷口智明(2023)「【1分解説】健康日本21(第三次)とは?」
谷口 智明
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。