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2026.08.27
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新NISA、全国で口座開設率上昇も地域差は縮まらず
~都道府県別・年齢層別データでみる半年間の変化~
谷口 智明
1.はじめに
2024年に制度拡充された新NISA(注1)は、着実に利用の裾野を広げている。金融庁が公表した「NISA口座の都道府県別利用状況調査」の2025年6月末と12月末のデータからNISA口座開設率を算出すると、半年間で47都道府県すべての口座開設率が上昇し、全国平均も24.7%から26.4%へ高まった(注2)。一方、都道府県間のばらつきはむしろ拡大している。
拙稿(谷口(2026a)「NISAの地域差はなぜ生まれるのか(実態編)」)では、2025年6月末時点のデータを基に、口座開設率の高い地域では若年層から高齢層まで総じて普及が進む一方、低い地域では各年代を通じて低水準にとどまる傾向を確認した。本稿では分析の視点を「水準」から「変化」へ移し、半年間の口座開設率の変化にどのような地域差が表れているのかを考察する。
2.全都道府県で上昇、それでも地域差は縮まらず
資料1は、2025年12月末の都道府県別NISA口座開設率(全年齢平均)が高い順に、同年6月末の水準とその後の上昇分を示す。12月末は東京都が33.8%で最も高く、神奈川県31.0%、奈良県30.4%と続く。一方、青森県は15.9%、岩手県16.3%、北海道17.9%と低い。京都府が24.0%から27.9%へ上昇するなど、目立った動きもみられるが、47都道府県全体でみると、低開設率地域が一様に高開設率地域へ追いついているとは言い難い。
地域差の動きをみると、口座開設率のばらつきを示す標準偏差は6月末の3.6ポイントから12月末には3.9ポイントへ拡大し、最高値と最低値の差も16.9%ポイントから18.0%ポイントへ広がった。なお、本文中の口座開設率は四捨五入して表示しているため、表示値から算出した差と端数処理前の差が一致しない場合がある。
さらに特徴的なのが、都道府県間の順位だ。6月末と12月末の順位について、順位相関係数(Spearman's ρ)は0.984と極めて高く、相対的な順位は概ね維持された。全国的に口座開設率は上昇した一方、都道府県間の序列は大きく変わらず、ばらつきも縮小していないといえる。
こうした地域差の動きをみるため、資料2に、2025年6月末の都道府県別NISA口座開設率と、その後半年間(6月末→12月末)の上昇幅との関係を示した。


両者の相関係数は0.444で、緩やかな正の相関を示し、6月末時点で口座開設率が高い地域ほど、その後の上昇幅も比較的大きい傾向がみられる。すなわち、「口座開設率が低い地域ほど伸びが大きい」という明確なキャッチアップは確認されなかった。個別には京都府や静岡県など目立った上昇もあるが、この間には都道府県別NISA口座数の把握状況も改善しており、上昇幅の一部にはその影響が含まれる可能性がある(注3)。この点を踏まえても、全国的な普及が地域差の縮小に直結しているわけではない。
3.口座開設率の上昇幅にも年代横断的な地域差
今回のデータから得られるもう一つの特徴は、NISA口座開設率の上昇幅に、年代をまたいで共通する地域差がみられることである。そこで、各都道府県の20歳代から80歳代以上の7年代について、2025年6月末から12月末までの口座開設率の上昇幅を算出し、それぞれの年代で全国平均の上昇幅以上となった年代数を都道府県ごとに集計した(資料3)。

資料3をみると、分布は両端に偏っている。7年代のいずれでも全国平均以上とならなかった地域は23道県、7年代すべてで全国平均以上となった地域は9府県であり、両者で47都道府県の約7割を占める。この基準でみる限り、全国平均を上回る口座開設率の上昇は特定の年代だけでなく、同じ地域の複数年代に共通して表れる傾向がうかがえる。逆に、全国平均を下回る地域についても、複数の年代で共通して上昇幅が相対的に小さいケースが多い。
拙稿で確認したのは、「口座開設率の高い地域では各年代とも比較的高い」という静的な地域性であった。今回の二時点比較では、それに加えて、口座開設率の上昇にも年代横断的な地域差がみられるということだ。年代によって所得、保有資産、ライフステージなどが異なるにもかかわらず、同じ地域の複数年代で相対的な上昇幅が共通して大きい、あるいは小さいという結果は、年代固有の事情だけでなく、複数の年代に共通する地域要因が関係している可能性を示唆する。ただし、今回の上昇幅には口座の把握状況改善による影響も含まれ得るため、本分析からその具体的な要因や因果関係を特定することはできない。
今後は、金融機関との接点、投資情報や相談へのアクセス、職場や地域社会を通じた金融行動の広がりなど、幅広い年代に共通して作用し得る地域環境との関連を検討する必要がある。今回の結果は、NISA口座開設率の地域差を考える際には、「誰が利用しているか」だけでなく、「どの地域で、なぜ利用が広がりやすいか」という視点も重要であることを示唆している。
4.おわりに~資産形成を支える利用環境の地域差に着目
NISA口座開設率の地域差への対応を、口座開設率の均一化という観点だけで捉えるべきではない。人口構成や資産状況、家計の選好が異なる以上、地域間に一定の差が生じること自体は自然である。重要なのは、資産形成を望む家計にとって、必要な情報や相談機会、利用手続きへのアクセスが、居住地域によって過度に左右されていないかという点である。
今回の分析では、NISA口座開設率の上昇幅についても、年代をまたいで共通してみられる地域差が確認された。前述のとおり、本稿の二時点比較から、その要因を特定することはできないが、金融機関との接点や情報・相談機会、デジタルサービスの利用環境など、家計を取り巻く地域の条件が、幅広い年代の行動に作用している可能性がある。
全国一律に制度が拡充されたなかで、なぜ都道府県間の普及に差が生じるのか。口座開設は資産形成の入口であり、その背後にある普及の経路や利用環境を比較し、地域間の差と関連する条件を明らかにすることが次の課題となる。そうした検証は、NISAの普及を口座数の拡大だけでなく、資産形成を支える利用環境という観点から捉えることにもつながろう。
【注釈】
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新NISA(少額投資非課税制度)では、対象年齢を18歳以上としたうえで、非課税保有期間が無期限化され、「つみたて投資枠」(年間120万円)と「成長投資枠」(同240万円)の併用が可能となった。非課税保有限度額は1,800万円である。
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本稿で用いる都道府県別データはNISA口座の開設状況を示すものであり、実際の買付額や運用状況を示すものではない。したがって、本稿における「普及」は、主として口座開設率の広がりを意味する。
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日本経済新聞電子版(2026年7月31日)によると、金融庁が集計する都道府県別NISA口座数の把握率は、2025年6月末の97.7%から同年12月末には99.9%へ上昇した。また、京都、静岡、岐阜、長野、愛知、群馬の6府県では前回調査からの口座数増加率が10%を超えており、把握率向上の影響が強く表れた可能性が指摘されている。
【参考文献】
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金融庁(2025)「NISA口座の都道府県別利用状況調査(2025年6月末時点)」
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金融庁(2026)「NISA口座の都道府県別利用状況調査(2025年12月末時点)」
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鄭美沙(2026)「2025年のNISA利用状況を読み解く(1)~NISAが普及してもなお残る『なぜ日本人は投資をしないのか?』という課題~」
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谷口智明(2026a)「NISAの地域差はなぜ生まれるのか(実態編)~都道府県別・年齢層別のNISA口座開設率からみた実態~」
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谷口智明(2026b)「NISAの地域差はなぜ生まれるのか(分析編)~金融知識だけでは説明できない、人口構造・資産の保有構造・行動特性~」
谷口 智明
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
- 谷口 智明
たにぐち ともあき
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政策調査部 フェロー
専⾨分野: 社会保障、資産形成・運用
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