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- Well-being『2025年に相続セミナー講師の思うこと』
近年、金融リテラシーブームであるが、NISAの改訂などもあり話題の中心は「資産形成」となりがちだ。しかし、最近両親の相続を立て続けに経験した筆者は、団塊の世代が全員後期高齢者入りした2025年にこそ改めて相続知識の啓蒙の必要性を感じる。
まずは、以下の3問の正誤・選択問題を見ていただきたい。いずれも筆者が相続セミナー、あるいは研修時に実施して正答率の低いQである。
Q.相続が発生した場合、遺産分割の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内である。
A.× 遺産分割に期限はない(民法)。10か月の期限があるのは相続税の申告納税期限(相続税法)。
これは筆者が相続セミナー開催時の冒頭にウォーミングアップで実施する定番問題である。
相続問題は、遺産分割という「民法」上の議論と相続税という「税法」上の議論が入り合っておりどちらの土俵の話なのかを峻別しなければ正確な理解ができない。実務上は税法ルールに寄せて申告期限迄に分割している場合が多いだろうが、相続が大きく2つの法律に立脚していることを知るのは非常に重要だ。
Q.契約者・被保険者=父、死亡保険金受取人=子の生命保険契約で父が死亡した場合、子は相続放棄すると死亡保険金も受取ることはできない。
A.× 「本来相続財産(民法が規定する)」ならば民法が規定する「相続放棄」や「遺留分」の影響を受けるが、当事例の死亡保険金は税法による「みなし相続財産」なので相続放棄とは無関係に受け取ることができる。
次も確認しておきたい。なお、表中の「生命保険金の非課税限度枠」とはいわゆる「500万円×法定相続人数」の式のことである。

ここでは、「相続人=法定相続人-相続放棄者」を理解しなくてはならない。2問目で放棄しても受け取れる事例を見たが、受け取った子は非課税枠の恩典は享受できない。つまり相続放棄者は非課税枠の計算上の頭数には駆り出されるが、当人はその恩典に与れないこととなる。この受取人部分は「相続に強いFP」と自称する方々のホームページなどでも「法定相続人」とした間違いが散見される。
相続は実際経験すると奥が深い。筆者も親から土地を相続した際に、「相続した土地には不動産取得税はかからない」ということでラッキーと思ったものだが、いざその土地を売却してみると、譲渡所得の計算で困ったことがあった。当初その土地の親の取得費がわからなかったのだ。税法では「取得費が分からない場合には、売った金額の5パーセント相当額を取得費とすることができる」という、有難い制度と誤解しそうな書きぶりだが、裏を返せば95%が課税対象となってしまうため(手数料を除く。長期譲渡所得ならさらに半額となるが)、実はあまり有難くないと思う人も多い。ありきたりな結論だが平素から親子間・相続人間の意思疎通は重要だ。
自戒の意味でもあるが、「争族」でない「円満相続」の道筋をつけておくのは、亡くなっていく者の責任だと痛感する。一人でも多くの方にその想いをお届けできたらと思っている。
井上 温
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。