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2026.10.08
ガバナンス
資本市場
コーポレート・ガバナンス
「社外取締役が議長」は何を変えるのか
~プライム市場で118社、大型企業で選任進む~
河谷 善夫
- 目次
1. 社外取締役の取締役会議長選任は緩やかに拡大
筆者は、昨年8月中旬時点でのプライム市場上場会社のうち、社外取締役を取締役会議長に選任している会社について分析したレポート(河谷、2025)を公表し、2022年7月上旬時点より、その数が増加していることを示した。本稿では、2026年9月末の時点でのプライム市場における社外取締役の取締役会議長選任の状況をフォローアップした上で、最後に社外取締役の取締役会議長選任の意味について考える。

資料1のとおり、2025年8月から2026年9月にかけて会社数は9社増加し、プライム市場での比率は6.7%から7.6%と0.9%ポイント上昇した。2022年以降、年平均で概ね1%ポイントの上昇ペースが続いている。このグラフだけでは見えないが、2025年8月から2026年9月にかけて継続してプライム市場に上場している会社では17社が社外取締役を新たに取締役会議長に選任しており(注1)、新規選任の動きは続いている。
また、118名中117名が独立社外取締役であり、社外取締役議長はほぼすべて独立社外取締役である(注2)。
2. 特定の機関設計に限らず普及、ただし社外取締役議長はなお少数
資料2は、会社の機関設計別の2022年、2025年、2026年のプライム市場での社外取締役の取締役会議長選任会社数と割合を示したものである。

2026年では、社外取締役を取締役会議長に選任している会社は、監査役設置会社で5.3%、監査等委員会設置会社で6.0%、指名委員会等設置会社で42.7%である。指名委員会等設置会社の割合は依然として高いが、2022年からの増加状況をみると、社外取締役を取締役会議長とする動きは、指名委員会等設置会社以外にも徐々に広まっており、昨年のレポートで確認した傾向は続いているといえる。
なお、これも資料で示していないが、取締役の過半を独立社外取締役とする会社でも、社外取締役を取締役会議長とする会社は約2割にとどまり、2025年8月から2026年9月にかけて大きな変化はなかった(注3)。
3. 社長を議長とする会社の減少と、大型企業で先行する社外取締役議長選任
資料3では、2022年、2025年、2026年のプライム市場での取締役会議長の属性の変化をグラフとして示した。

2022年からの変化をみると、社長を取締役会議長とする会社の割合は71.4%から65.6%へ5.8%ポイント低下する一方、社外取締役を議長とする会社の割合は、3.6%から7.6%へ4.0%ポイント上昇し、会長を議長とする会社の割合も1.5%ポイント上昇している。このような社長を取締役会議長とする会社の割合の低下、社外取締役を議長とする会社の割合の上昇は、取締役会議長と社長を分離するという、より大きな流れの一部とみることができるだろう。
次に、どのような会社で社外取締役の取締役会議長選任が進んでいるのかをみるため、2026年9月末時点のプライム市場上場会社について、時価総額ランク別の選任割合を示した(資料4)。

資料4からは、時価総額の大きい企業ほど、社外取締役の取締役会議長選任が進んでいるといえる。なお、社外取締役を取締役会議長に選任している会社の社数の割合は7.6%だが、時価総額では19%を占める。また、社外取締役が議長となっている会社の39%が時価総額1兆円以上の会社である。時価総額が大きい企業ほど選任率が高く、大型企業での社外取締役の取締役会議長選任が相対的に進んでいる。
4.最後に
ここまで、社外取締役の取締役会議長選任状況について確認してきた。このような社外取締役の取締役会議長選任はコーポレートガバナンス上、どのような意味を持つのか、最後に私見を述べたい。
とりわけ独立社外取締役が議長を務める場合には、独立した立場から取締役会の議論を促し、監督機能を含む取締役会の実効性向上につながることが期待される。そのためには、経営陣との適切な連絡・調整や十分な情報提供が重要となる。今回のコーポレートガバナンス・コード改訂でも、議長や独立社外取締役を支える取締役会事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化の重要性が示されている。社外取締役を議長に選任する企業には、選任によってどのような効果を目指すのかを明確にし、それに即した支援体制を整えることが重要であろう。
【注釈】
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2025年8月中旬のプライム市場上場会社(1,618社)のうち、社外取締役を取締役会議長に選任している会社数の異同については次のとおり。2026年9月末までの間にプライム市場から退出した会社(95社)で社外取締役を取締役会議長に選任していた7社と、継続上場会社(1,523社)で社外取締役以外を取締役会議長にした会社1社の計8社が減少。継続上場会社のうち17社が新規に社外取締役を取締役会議長に選任したので、差し引き9社の増加となった。新規にプライム市場に上場した会社(20社)には、社外取締役を取締役会議長に選任していた会社はなかった。
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なお、2026年9月末でプライム市場上場会社の全社外取締役数は、6,986名であり、そのうち6,793名(97.2%)が独立社外取締役である。ほとんどの社外取締役は独立社外取締役であるといってよい状況となっている。
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一方、取締役の過半数を独立社外取締役とする会社が着実に増加していることは、河谷(2026)で示したとおりである。
【参考文献】
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河谷善夫(2022)「社外取締役をどう活かすか(2)~社外取締役の取締役会議長選任について~」
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河谷善夫(2025)「社外取締役の取締役会議長選任の現状と展望 ~2025年8月と2022年7月の比較を踏まえて~」
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河谷善夫(2026)「プライム市場の独立社外取締役過半会社は3割を超えた~継続上場会社にみる増加の実態~」
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金融庁・東京証券取引所(2026)「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」
河谷 善夫
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。