2026年6月の定時株主総会における株主提案の特徴

~提案者・提案内容の分析と株主総会制度を巡る新たな動き~

河谷 善夫

要旨
  • 2026年6月の定時株主総会では、株主提案を受けた東証上場会社が100社を超え、株主提案の活発化が続いた。これまでは、個別企業の事例紹介は多いものの、提案全体の傾向を整理した分析は限られている。そこで本稿では、2026年の株主提案について、提案者、対象企業の業種、提案内容等から整理し、その特徴を分析した。
  • 今年は103社に対し347件の議案が提出された。提案は製造業を中心に行われ、提案者別にみると、アクティビストによるものが半数近くを占めた。一方、個人株主による提案では、電力会社に対する事業関連の提案が依然として多いことが特徴であった。その他、株主還元についての提案も一定程度なされている。
  • 提案内容ではガバナンス関連が最も多く、電力会社への提案を除いてもその傾向は変わらない。ガバナンス関連では、取締役選任・解任や報酬制度の見直しが多く、取締役選任議案では50%を超える支持を得て、可決された事例もあった。
  • 今年の特徴として、議決権基準日の変更を通じて株主総会の開催時期の後ろ倒しを可能とする定款変更提案が複数の会社に提出されたことが挙げられる。これは有価証券報告書の総会前開示を意識した提案と考えられる。会社側は、配当基準日との不整合、実務負担、市場制度との不整合性等を理由に反対しており、制度的課題を浮き彫りにした。
  • 2026年の株主提案では、株主還元よりも、ガバナンス改革を通じた企業価値の向上を志向する提案が多くみられた。また、個別企業の経営にとどまらず、株主総会制度そのものに関わる提案もみられた。今後は、制度改正の議論や株主提案の動向を継続的に注視する必要がある。
目次

1. はじめに

2026年6月の定時株主総会では、株主提案を受けた東証上場会社が100社を超え、近年の株主提案の活発化が引き続きみられた。特に、2社において株主提案による取締役選任の議案が可決されたことも報じられ、注目を集めた。

株主提案数は近年急速に増加しており、企業と株主との対話のあり方を考えるうえで重要な指標となっている。一方、個々の事例紹介は多いものの、株主提案全体を俯瞰し、その特徴を整理した分析は必ずしも多くない。そこで、本稿では、東証上場会社に対する2026年の株主提案を提案者、対象企業の業種、提案内容等の観点から整理し、その特徴について分析する。特に、ガバナンス関連提案の動向と、新たにみられた株主総会日程の見直しを求める議案に着目する。

2.  今年の株主提案はどのような状況だったか

(1)提案を受けた会社数と提案議案数

2026年6月の定時株主総会では、東証上場会社のうち、103社が株主提案を受けた(総会前に提案が取り下げられたり、提案自体が提出期限を過ぎていることを理由に当初から不受理とされたケースも含む)。また、複数の者から提案を受けた会社もあるため、提案者別に集計すると延べ107社に株主提案が行われた。近年みられる株主提案の活発化(資料1)は、今年も継続したといえる。

図表
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業種別では、製造業、電力業、金融業に対する提案の割合が高かった(資料2左)。これら延べ107社に対する株主提案の議案数は、合計347件に上った。業種別の割合は、会社数とほぼ同じであるが、電力会社への提案議案数の割合が高い(資料2右)。電力会社に対しては、1社あたりの提案議案数が相対的に多かったことになる。

図表
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(2)市場別の提案状況

提案者の種類別に、東証のプライム、スタンダード、グロース市場において提案を受けた会社の割合を示したのが資料3である。なお、会社数としては、提案者別に集計しているため、延べ107社となる。

図表
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市場別では、企業規模が大きく、市場での注目度も高いプライム市場上場会社への提案が多い。アクティビスト・個人ともプライム市場上場会社が7割以上を占めている。一方、グロース市場への株主提案は非常に限定的である。法人等による提案は、件数自体が多くはないものの、スタンダード市場への提案の割合が大きくなっている。

(3)提案者の状況

提案者別の提案対象会社数および提案議案数を示したものが、資料4である。

図表
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この資料では、ダルトン等が複数のファンドを通じて株主提案をしている場合、ファンドの性格に応じて、同一系列の提案者をまとめて整理している。機関投資家(いわゆる「アクティビスト」)による提案は、提案会社数でみると約半数を占め、議案数で4割超となっている。アクティビストの1社あたり提案議案数は、2~3件の場合が多く、一つのアクティビストが多数の議案を提出している傾向は確認できない。むしろ、個人株主による1社当たりの平均提案議案数の方が多くなっている。

(4)提案者の種類別・業種別の提案状況

提案者の種類別に対象企業の業種別の提案状況を示したものが資料5である。

上場会社数自体の多い製造業への株主提案割合が、最も多くなっている。特にアクティビストは製造業の会社に対する提案議案数の割合が高い。個人株主からは、従来、電力会社の事業に関する提案が多数提出されており、この傾向は今年も続いている。個人株主の議案数の割合が大きくなっているのは、このことが背景となっている。

図表
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3.  今年はどのような提案が多かったのか

(1)議案内容のタイプ別構成

資料6は、2026年6月の株主提案において、どのような種類の提案が多かったのかを、提案内容に応じて、ガバナンス関連、株主還元関連、事業関連等に区分し、全体及び提案者の種類別に確認したものである。なお、前述したように個人株主では、電力会社に対する事業関連の提案が多い。そこで、電力会社に対する全ての提案を除外して、同様の確認も行った。

図表
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提案は全体としてはガバナンスに関するものが多かった。特にアクティビストによる提案ではガバナンス関連議案の割合が高い。また、電力会社に対する提案を除くと、個人株主による提案でもガバナンス関連議案の割合が相当高い。一方、株主還元関連については、アクティビスト・法人等による提案の中で、相応の割合を占めている。増配、自己株式取得の実施、あるいは剰余金配当の決定機関を株主総会に変更する定款変更を求める議案等である。

電力会社に対して多くなされる個人株主を中心とした事業関係の提案は、定款変更の議案として提案されているが、会社側は、会社の事業に関する事項については取締役会で機動的に決定すべきものであり、定款に固定的に規定するのはなじまないとして反対している例が多い。

総じていえば、2026年6月の株主提案は、アクティビストを中心に資本政策のみならず、ガバナンス改革を通じた企業価値向上を重視する点に特徴があったといえる。

(2)ガバナンス関連の提案内容について

ガバナンス関連の提案内容について、さらにその内容を確認するため、ガバナンスに関する提案内容を分類して示したものが資料7である。この資料では、議案に対する賛成率の平均値と、最小値および最大値も示した。但し、本数値の表示は10件以上の株主提案があった類型に限って表示し、5~9件の株主提案については参考値として括弧内に示している。5件未満の類型については、サンプルが少ないことを考慮し、示していない。

図表
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ガバナンス関連議案のうち、最も件数が多いのは、取締役選任であり、次いで取締役解任が続く。そして、取締役選任議案については最大値が50%を超えている例があり、これらが、冒頭で紹介した2社における可決例である。この結果、当該会社は、自らの取締役候補を変更して対応した。次いで、取締役報酬関連の議案が多い(注1)。

ガバナンス関連の提案で注目されるのは、株主総会の開催時期を7月以降に後ろ倒しできるよう、議決権行使基準日を変更する定款変更を求める議案が、主としてダルトン系のアクティビストファンドから提案されていることである。これについては、次章で詳細に説明する。

4. 総会制度の見直しを求める提案と会社側の意見

前章で触れたように、今年の株主提案では、定時株主総会の後ろ倒しを可能とする議決権行使の基準日の変更を求める提案がダルトン系アクティビストファンドから相次いで提出された。

内容としては、いずれも議決権の基準日を3月末から5月15日に変更し、基準日から3か月後の8月中旬まで、定時株主総会を後ろ倒しできるようにすることを求めるものである。これは、河谷(2026)で紹介した、2026年7月に定時株主総会を開催したプライム市場上場会社と同様の内容の定款変更であり、当該会社の定款変更が参考とされた可能性が高い。同稿で解説しているように、有価証券報告書の総会前開示を求める要請に対応する動きとみられる。

この提案に対する会社側の反対意見を整理して示したものが資料8である。

図表
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企業の反対理由は、「単なる実務負担への抵抗」だけでなく、株主に提供される情報の充実と、権利関係・企業実務の安定性との調整を要する問題としてとらえていることがうかがえる。この問題を検討課題として認識し、現在の法制審議会会社法制(株式・株主総会等関係)部会での制度議論を注視している会社も少なくない(注2)。

なお、定款で定時株主総会を6月に開催する旨を定めている会社もある。したがって資料7の4、5番目に示したとおり、議決権基準日だけずらしても実現できない場合もあり、会社側がそのような反論をしている議案の賛成率はかなり低くなっていた。また、これらの議案は、いずれも否決されているが、賛成率は2%から25%までと幅があった。

この種の提案は、会社の経営ではなく制度設計を対象とした株主提案である点で特徴的であるといえる。

5. おわりに

本稿では、今年の東証上場会社に対する株主提案の状況を確認してきた。分析からは、今年の株主提案はガバナンス関連の議案が中心となってきていることが確認された。これは、東証による「資本コスト・株価を意識した経営」の要請やコーポレートガバナンス改革の進展を背景として、本稿の分析対象においては、株主提案の中心が、従来の還元要求から、ガバナンス改革を通じた企業価値向上を志向するものへ比重が移りつつあると考えられる。

今後、この傾向が定着するのか、一時的なものにとどまるのかは、来年以降の株主提案の動向を見極める必要がある。来年は会社法改正に向けた議論や今般のコーポレートガバナンス・コード改訂を受けた各社の対応が進む中、株主提案の内容自体が変化する可能性がある。

特に、法制審議会での株主総会関連制度の議論において一定の結論を迎えるとみられる来年度(注3)には、株主総会の後ろ倒しの議案がどの程度提案され、どの程度一般株主に支持されるかについて、注視したい。

以 上

【注釈】

  1. 役員等の報酬関連議案としては、譲渡制限付株式報酬制度において株主総会で報酬額の上限額を決めるとする提案がダルトン系ファンドから多く出された。その他、役員報酬の個別開示、報酬の削減、報酬制度の見直し等を求めるものがあった。

  2. 2026年4月から5月にパブリックコメント手続に付された「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」では、「株主総会用の事業報告等と有価証券報告書の開示の合理化」が盛り込まれており、有価証券報告書を開示すれば株主総会用の事業報告は不要とするいわゆる有価証券報告書と事業報告書の一本化も議論されている。この議論の結論は、今後の定時株主総会開催日程に大きな影響を与えることになると考えられる。

  3. 法制審議会での会社法改正の議論は、2026年度中に結論を得て、結論を得次第速やかに必要な法案を国会に上程するとされている。今年度中には、本件についても何らかの結論が出されると見込まれる。

【参考文献】

河谷 善夫


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。