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2025.08.21
SDGs・ESG
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社外取締役の取締役会議長選任の現状と展望
~2025年8月と2022年7月の比較を踏まえて~
河谷 善夫
- 目次
1. 2025年8月中旬時点での社外取締役の取締役会議長選任状況を分析
コーポレートガバナンス改革の進展に伴い、取締役会の監督機能強化が重視されるなか、取締役会議長に社外取締役を選任する企業が増えている。取締役会議長をCEOから分離し、独立した視点で議事を主導することで、企業統治の透明性と実効性を高めることが期待されているためだ。
筆者は2022年7月にプライム市場での社外取締役の取締役会議長選任状況を調べ、2022年10月にレポートを公表した(河谷、2022)。本稿では、プライム市場の2025年8月中旬時点の集計を基に、3年前との比較を通じて、この3年間の変化と背景、そして今後の見通しを示す。
2. 社外取締役の取締役会議長選任は着実に拡大
資料1は、プライム市場で2025年8月と2022年7月の取締役会議長となっている者の属性を比べたものである。2025年8月時点で社外取締役を取締役会議長に選任する企業は109社(6.7%)となり、3年間で約1.8倍に増加した(注1)。依然として少数派だが増加傾向は着実である。
取締役会議長の属性にも変化が見られる。社長が議長を務める割合は71.4%(2022年)から66.1%へ低下し、同じく会長は22.7%から24.5%へ微増している。一方、社外取締役の議長は3.6%から6.7%へと拡大し、CEOと議長を兼ねない体制が徐々に浸透していることがうかがえる。

3. 社外取締役の取締役会議長選任会社の機関設計は分散化傾向
資料2は社外取締役を取締役会議長に選任している企業を、企業の機関設計別に集計したものだ。2022年の調査結果も併せて示した。

2022年には社外取締役を取締役会議長とする企業の37.3%が指名委員会等設置会社で、監査等委員会設置会社は20.9%にとどまっていた。2025年には、指名委員会等設置会社は29.4%に減少した一方、監査等委員会設置会社は34.9%に拡大している。企業数でみても、監査等委員会設置会社は24社と増加数が最も多い。監査役設置会社も11社増加しており、指名委員会等設置会社の増加数(7社)より多い。
もともと指名委員会等設置会社はモニタリング機能特化型の取締役会運営を志向し、社外取締役の取締役会議長への選任が進みやすかったが、近年は他の機関設計でも監督機能強化の一環として採用が広がっている。
4. 独立社外取締役の比率が高く、人数も多い企業で社外取締役の議長選任が進む
ここで、社外取締役または社長を取締役会議長に選任している企業について、独立取締役(注2)の比率ランク別、同人数別に、その企業数の割合を示す(資料3、4)。いずれも2022年の状況を参考として併記している。


資料3から、2025年では社外取締役を議長とする企業の69.7%が独立社外取締役比率2分の1超を確保している(2022年では53.7%)。一方、社長が議長を務める企業では独立社外取締役比率3分の1以上、2分の1以下の層が75.6%と最多となっており、独立社外取締役比率の面で、両者の差は依然として大きい。
資料4の独立社外取締役の人数に関しても、社外取締役が議長を務める企業は過半が独立社外取締役を4人以上選任しており、社長を議長とする会社とやはり差が確認できる。
5. 社外取締役の取締役会議長選任に向けた検討の必要性が高まる
この3年間の増加には複数の要因が考えられる。第一に、金融庁の定めた「投資家と企業の対話ガイドライン」(注3)で社外取締役の取締役会議長選任が、監督の実効性確保の観点から例示されたことが影響していると考えられる。また、独立社外取締役選任の拡大が継続していることも挙げられる(注4)。
英国など欧州主要国ではCEOと議長の分離が定着し、議長は原則として独立社外取締役が務める。これに比べ、プライム市場における社外取締役の取締役会議長選任は拡大が認められるものの、選任率6.7%はなお高いとはいえない。日本でも、社外取締役の比率・人数の増加や人材層の拡大、投資家要請の高まりに加え、将来的にコーポレートガバナンス・コード改訂で原則化が行われれば、普及は一段と加速する可能性がある。
2022年から2025年の実績からは、緩やかではあるが着実な増加傾向が確認でき、今後5年以内に10%を突破するシナリオも現実味を帯びてきたといえる。企業は監督機能強化の手段として、社外取締役を取締役会議長に選任することを検討する時期に差し掛かっているのではないだろうか。
【注釈】
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2022年7月から2025年8月の間に、この67社の内、7社がプライム市場から退出した。この内1社は合併し社名を変えて再上場したので、実質6社が退出したことになる。別途、社外取締役の取締役会議長選任をこの期間で止めた企業は2社である。そして、50社が新規に社外取締役を取締役会議長に選任した。結果として2025年8月で109社が社外取締役を取締役会議長に選任する企業となった。
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独立社外取締役とは、当該企業と利害関係のない独立した社外取締役として企業から選任されている社外取締役。コーポレートガバナンス・コードでは独立社外取締役を対象とした原則が定められている。社外取締役は会社法により定義され、現在及び過去に当該企業に所属していない外部の取締役を指す。ここでは、東証公表のデータから取得できる独立社外取締役数を用いている。
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「投資家と企業の対話のガイドライン」は2018年に制定され、2021年に改訂された。スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードの付属文書としての位置づけ。2021年の改訂で、独立社外取締役を取締役会議長に選任することが取締役会の監督の実効性確保に資する形態の例示として取り上げられた。
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例えば、次の資料のとおり、プライム市場上場企業において取締役数の過半を独立社外取締役とする企業割合は増加を続けており、企業において独立社外取締役の活用が進んでいることがわかる。

【参考文献】
- 河谷善夫(2022)「社外取締役をどう活かすか(2)~社外取締役の取締役会議長選任について~」
河谷 善夫
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。

