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2026.10.14
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イノベーション
サイバー攻撃による経済損失をどう考えるか
~一企業の被害から、マクロ的な経済損失となるリスク~
前田 和馬
情報漏洩を中心にサイバー攻撃による被害が国内外で目立っている。相次ぐサイバー攻撃にはAIが悪用された可能性が指摘されており、今後もこうした被害は拡大する懸念がある。サイバー攻撃による経済的な影響は主に3つ考えられる。
まず、被害による直接的な金銭損失であり、仮想通貨等の資産の流出、身代金の支払い、被害者への補償金支払いなどが挙げられる。FBIが被害申告ベースでまとめた「Annual Internet Crime Report 2025」によると、米国を中心としたサイバー犯罪の被害総額(個人被害も含む)は209億ドルと近年飛躍的に拡大している。なお、こうした被害は基本的に所得移転であり、生産活動を捕捉する国内総生産(GDP)に直接的な影響を与えるわけではない。
次に、サイバー攻撃を通じた企業活動への損害だ。例えばCSISとMcAfeeによる2020年の調査では、サイバー攻撃を受けた場合に業務は平均18時間中断したと指摘する。サイバー攻撃は既存顧客へのサービス提供や新たな顧客獲得活動などを抑制する懸念がある。これに加えて、企業のブランド価値を毀損し、顧客は該当サービスの利用を当面ためらうかもしれない。
サイバー攻撃による経済活動への被害が一企業に留まるのであれば、競合他社が代替的にサービスを提供する、或いはシステム復旧後に挽回生産などが生じることで、マクロ的な影響は限定される。しかし、こうした被害が「交通インフラなど代替が難しい企業」、或いは「産業内の広範な企業」に及ぶ場合、サイバー攻撃で損なわれた供給能力を補うことが難しく、マクロ経済全体の損失へと波及する。AIを通じたサイバー攻撃の頻発は、従来のミクロ的な「一企業の被害」から、マクロ的な「産業や経済全体の被害」に転じるリスクを高めている可能性がある。
最後に、サイバーセキュリティ対策の強化によるIT関連支出の増加であり、これはGDPを押し上げる可能性が高い。例えば、2000年問題(西暦が2000年になるとコンピュータが誤作動を起こすとの懸念)の際のIT対策費用は全世界で3,000~6,000億ドルと、1999年における世界GDPの0.9~1.8%に達したとみられている。一方、攻撃をうける企業の防御対策よりも、AI脅威論による開発抑制の動きが強まる場合、データセンター投資や株式市場の調整を通じて景気減速へと繋がる懸念がある。なお、米国ではトランプ政権が対中競争力の観点からAI規制に消極的であるほか、連邦議会におけるFrontier ActなどのAI規制法案も成立に至るかは不透明だ。

前田 和馬
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

