お金と経済・お金のしくみ お金と経済・お金のしくみ

9月短観から見た26年度業績見通し

~引き続き生成AIブーム関連業種の収益計画上方修正~

永濱 利廣

要旨
  • 9月短観の調査結果から、10月下旬以降の7–9月期決算発表で今年度業績の上方修正が見込まれる主な業種と要因、および今後の注目点は以下の通り。

  • 全体感としては、売上高・経常利益ともに前回調査から改善し、26年度トータルで増収増益計画へと上振れる見通し。

  • 売上高の上方修正が目立つ業種として、電気機械 / 非鉄金属 / はん用機械は、 世界的な生成AI・データセンター需要の急拡大、半導体・DX関連投資の活発化、国際市況高や円安が押し上げ。情報サービス / 宿泊・飲食サービスについては、DX案件の活発化やインバウンド需要の好調に加え、価格転嫁の定着が寄与。

  • 経常利益の大幅上方修正が期待される業種として、電気機械、繊維、鉄鋼、造船・重機では、海外需要や円安の追い風に加え、高付加価値製品シフトや製品値上げによるスプレッド・採算性の改善が利益を牽引。一方、対事業所サービスでは、DX・人手不足対応の需要増に伴うサービス提供単価の上昇と価格転嫁が定着。

  • 今後の留意点として、大企業の想定為替レート(ドル円153.9円)に対し、「輸送用機械」などは152.2円と慎重(円高寄り)に設定している。今後、想定以上の急激な円高が進まなければ、これらの輸出関連業種を中心にさらなる業績の上方修正が期待できる。

目次

1. 売上高・利益計画とも上方修正

10月1~2日に公表された9月短観の大企業調査は、8月下旬~9月下旬にかけて資本金10億円以上の大企業約1600社に対して行った調査であり、先月公表された法人企業景気予測調査に続いて、7-9月期の決算における収益見通しの先行指標として注目される。

そこで本稿では、同調査を用いて、10月下旬から本格化する7-9月期決算発表で今年度計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。

資料1は、9月短観の調査対象大企業(全産業、除く金融)が計画する半期別売上高・経常利益前年比の推移を見たものである。まず売上高を見ると、26年度は前回調査よりも上期・下期とも増収率が拡大している(資料1)。

一方、経常利益を見ると、26年度は特に上期で大幅な増益に転じている。このことから、各企業は決算発表で26年度の企業業績見通しの上方修正が期待される。

そして、26年度をトータルで見れば、売上高の伸び率は前年比で増収率が拡大する一方、経常利益については今年度増益計画に転じる姿となっている。

図表
図表

2. 増収率上方修正が目立つ「電気機械」「非鉄金属」「はん用機械」

続いて、9月短観の売上高計画を基に、増収率の大幅上方修正が見込まれる業種を選定してみたい。資料2は26年度の業種別売上高計画の前年比と6月調査からの修正率をまとめたものである。

結果を見ると、26年度も多くの業種で増収率が上方修正となる中で、最大の上方修正率となっているのが「電気機械」であり、それに続くのが「非鉄金属」「はん用機械」「情報サービス」「宿泊・飲食サービス」となる。

まず「電気機械」は、世界的なAI関連需要の急拡大が考えられる。特に、生成AIの普及に伴うデータセンター向け投資や高性能半導体・関連部材・サーバー機器などの需給が、世界的に非常に堅調なことが考えられる。また、期初想定並みに円安水準が維持されたことで、外需を中心とした売上高が押し上げられたことも考えられる

「非鉄金属」については、半導体・電子部品向け素材の伸長が考えられる。特に、電気機械やAI関連投資の拡大に連動し、銅線や高機能金属材料、半導体製造装置用部材などの需要が力強く推移していることが推察される。また、銅をはじめとする主要非鉄金属の国際市況が好調に推移し、販売単価の上昇が売上高の増額につながったことも考えられる。

「はん用機械」については、省力化・自動化投資の需要回復が考えられる。特に、人手不足を背景とした国内企業の設備投資が堅調である。また、半導体製造装置の周辺機器や、インフラ・プラント向けの設備需要が底堅く推移していることもある。

「情報サービス」については、DX投資の本格化が考えられる。特に、業種を問わず、ITインフラの刷新、クラウド移行、生成AI活用を目的としたシステム構築案件が活発化している。また、IT人材不足による単価の上昇分を、サービス提供価格へ適切に転嫁できたことが売上増に寄与したことも考えられる。

「宿泊・飲食サービス」については、インバウンド消費の好調が考えられる。特に、訪日客数の高水準推移と、1人あたり消費額の増加が続いている。また、客室単価の値上げやメニュー価格の改定が進み、需要の堅調さと相まって売上高の押し上げ要因となったことが推察される。

以上より、7-9月期の決算においては、これらの業種に関連する企業について売上高計画が注目されよう。

図表
図表

3. 利益率大幅上方修正は「電気機械」「繊維」「鉄鋼」

続いて、9月短観の経常利益計画から大幅上方修が期待される業種を見通してみよう(資料3)。結果を見ると、上方修正率が最も大きいのは、売上高計画でも大幅上方修正となった「電気機械」、「繊維」「鉄鋼」「造船・重機、その他輸送用機械」「対事業所サービス」と続く。

まず「電気機械」については、AI・データセンター向け需要の高収益化があげられる。特に、生成AIの急拡大に伴い、高性能半導体、パワー半導体、データセンター向けサーバー・電源機器など、粗利益率の高い高付加価値製品の出荷比率が大幅に高まっている。また、期初想定並みに円安水準で推移したことで、外需比率の高い電機各社の海外利益の円換算額および為替差益が大きく押し上げられたことが推察される。

図表
図表

「繊維」については、高機能・産業用繊維製品の採算改善が考えられる。特に、自動車・航空機・産業資材向けの高機能化学繊維や環境配慮型素材の需要が堅調に推移している。また、原材料費や物流費の高騰に対し、販売価格への転嫁が進んだことや、ブランド衣料・海外市場での高価格帯商品の好調が採算性を改善させたことも考えられる。

「鉄鋼」については、製品値上げの浸透が考えられる。特に、鉄鉱石や石炭などの原材料価格やエネルギーコストの上昇に対し、自動車や造船、製造業向け大口顧客との価格交渉で値上げが大きく進み、スプレッドが改善している。また、AI向け機器や脱炭素関連設備、高級自動車向けの電磁鋼板など、利益率の高い高機能鋼材の構成比の上振れも推察される。

「造船・重機、その他輸送用機械」については、新造船相場の高止まりと高水準な受注残が考えられる。特に、海運業界の脱炭素化に伴うLNG燃料船や省エネ船への更新需要が旺盛で、過去高値圏で受注した案件の工事進行が進み、利益率が劇的に回復している。また、重機メーカーを中心に、防衛予算拡充に伴う受注や、エネルギー安全保障関連の大型プラント案件が好採算で寄与していることが推察される。

「対事業所サービス」については、DX・IT投資需要に伴う単価上昇が考えられる。特に、企業のデジタル化やセキュリティ強化、人材不足に対応するための業務アウトソーシング需要が旺盛であり、サービス提供単価が上昇している。また、人件費の上昇をサービス価格や委託費に適切に反映する動きが業界全体で定着し、売上の伸びを上回るペースで利益率が上向いていることも推察される。

このように、製造業では「海外需要+円安」に加えて「高付加価値化や値上げ浸透による採算改善」が利益を大きく押し上げた一方、非製造業では、人手不足やDX需要を背景とした「サービス価格の値上げ」が直接的に収益性を高める構造となっていることが推察される。

4. 為替レートの変動で業績が修正される可能性も

なお、9月短観の収益計画では、企業の想定為替レートも公表されることから、業種別の想定為替レートも今後の業績見通しの修正の可能性を読み解く手がかりとして注目したい。

そこで、資料4にて大企業における事業計画の前提となる今年度の想定為替レートを確認すると、ドル円で153.9円/㌦、ユーロ円で177.9円/€となっていることがわかる。

図表
図表

ただ、足元のドル円レートよりも特に円高で今年度の為替レートを想定しているのが「輸送用機械」や「はん用・生産用機械」といった輸出関連の製造業が中心となっている。

そうした中、特に円安の恩恵を最も受けやすい輸送用機械関連産業が152.2円/㌦と円高気味の想定をしていることに注目すべきだろう。というのも、足元では議長が交代したFRBの利上げ観測の強まり等に伴うドル高が進んでいるが、これら業種では為替レートの水準が円高方向に進むことを警戒していることが推察される。

ただ、そこまで大きく円高に振れなければ、こうした今年度の為替レートを円高気味に想定している業種に属する企業を中心に、今期業績が上方修正される可能性があることには注目すべきだろう。

永濱 利廣


本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一ライフ資産運用経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

永濱 利廣

ながはま としひろ

経済調査部 首席エコノミスト
担当: 内外経済市場長期予測、経済統計、マクロ経済分析

執筆者の最近のレポート

関連テーマのレポート

関連テーマ