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トランプ大統領が選挙勝利で5000ドル給付を主張

~過去にも同様の主張がみられたが、未だ実現せず~

前田 和馬

9月9日の共和党党大会において、トランプ大統領は11月の中間選挙にて共和党が勝利する場合、成人の全国民に5,000ドル(約77万円)を支給すると主張した。また、9月10日公表のホワイトハウス資料では「これはトランプ大統領と共和党議会でしか起こりえない」と述べ、民主党が増税を行い、労働者層の生活を苦しめると指摘している。加えて、同日に公表された別の資料では、過剰請求とみられるオバマケア関連の保険料を巡り、10月以降に約100万人へ500ドルを還付すると明らかにした。

トランプ大統領は5,000ドル支給の具体的な財源を示していない。一方、バンス副大統領は関税収入の活用や富裕層を対象から除外する可能性に言及している。仮に全成人の約2.7億人を対象とすれば、その総額は1.35兆ドル(GDP比4.2%)に達する。11月中間選挙は少なくとも下院は民主党が勝利するとの見方が圧倒的に優勢であるほか、仮に共和党が上下院を制する場合においても、一部の共和党議員は巨額の財政赤字への懸念を示すと見込まれる。このため、公約実現の条件である共和党が勝利すること、及び共和党の一部議員が慎重姿勢を示す可能性を含めて、現時点における5,000ドル支給の実現性は低い。

トランプ大統領はこうした現金給付策に度々言及している。2025年2月、同氏は政府効率化によって削減した歳出の20%を国民還元に充てることを検討していた(DOGE dividend)。また、25年11月には関税収入を還付するとし、高所得者を除く全国民に2,000ドルを給付する案を示した。ただ、こうした巨額給付には議会による法案の成立が必要であり、何れの案も実現の道筋はたっていない。ちなみに、トランプ政権は25年12月に「戦士配当金」として1,776ドルを支給したものの、その対象は米軍兵士の約145万人に留まった。

中間選挙の情勢を巡り、全議席が改選される下院では民主党が優勢であるほか、改選議席(全体の約3分の1)に保守系州が多い上院においても、共和党は苦戦を強いられている(図表1~2)。ガソリンを中心とした物価高に対する不満が根強いなか、トランプ政権及び与党共和党への逆風は強い。トランプ大統領の現金給付案は形勢逆転への一手とみられるが、その実現性が不透明ななか、この公約による選挙戦への効果は限定的に留まるだろう。一方、共和党は民主党に対して資金力で優位に立っており、今後選挙戦への資金投入が本格化する場合、情勢が変化するのかが注目される。

ベッセント財務長官は政権就任前に財政赤字をGDP比3%へ削減する目標を掲げたものの、2025年7月に成立した減税法案や26年2月のIEEPA関税の違憲判決を背景に、足下の財政赤字はGDP比6%前後と横ばい圏で推移している(図表3)。特にここ数か月は関税還付金が関税収入を大幅に超過しているほか、トランプ政権は2027会計年度において約1.5兆ドルの国防関連予算を要求するなど、財政悪化への懸念が続いている(図表4)。

図表
図表

以 上

前田 和馬


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前田 和馬

まえだ かずま

経済調査部 主席エコノミスト
担当: 米国経済、世界経済、経済構造分析

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